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第9話 駆けつけるJ

週末は色々と予定がありすぎて、更新する事ができませんでした・・・



 

「ねえ!あっちの方に、何かもの凄い魔力を感じるよ!」


 魔力を感じ取ったマイが、驚いて声を上げた。


「うわっ、なんだこの魔力!?」

「ちょっとぉ!これって、私達が相手していた魔物と比較にならないじゃん!」


 彼女達の感覚は正しい。


 俺が最初に魔力を感じ取った時の感想も、マジかよ!!だったのだ。

 距離はおよそ数百m。


「お、おかしいです!こんな距離で、私でも感じ取れるほどの魔力。こんな魔物がこの森にいるはずが・・・」


 そう、そうなのだ。

 マリアが言うように、この森にいる魔物のレベルを遙かに上回っているのだ。


 俺もジュリーがいる事で安心し、そこまで気を配っていなかったとは言え、俺の広範囲にわたる魔力感知をくぐり抜けてきた。


 それは、その魔物は知性が非常に高く、ある程度は魔力を自分で操れる事を意味する。


 ジュリーも、その魔物とは少し離れた場所の生徒達の近くにいるようだから、彼女もそれ程警戒していなかったのだろう。


 とは言え俺もジュリーも、魔物があと少し近くまで来ていれば、いくら魔力を抑えていた所ですぐにわかったものの・・・


 まあ、反省は後でするとして・・・


 さすがに、この魔力はやばい!


 というのも、この場にいる生徒全員で掛かった所で勝ち目は無い。


 それ所か、引率の教師ですら歯が立たないレベルだ。


 更に言えば、今の勇者4人で挑んでも敗北は間違いないだろう・・・

 せめて、勇者達が自分の力を完全に使いこなせるようになっていれば、勇者の内で誰か1人いれば問題なかったはずだ。


 まあ、無い物ねだりをしても仕方が無いし、今は一刻を争う。


 なぜならば、魔物が抑えていた魔力を解放したと言う事は、敵を認識したからに他ならない。


 もちろん、その敵というのは生徒の内の誰かである。


 いや、もう誰かはわかっている。


 しかもそいつは、敵の力量もわからないのか、無謀にも挑もうとしているのを感じ取り、俺は心の中で叫んだ。


(あんの、バカ野郎が!!)


 と。


「ねえ・・・その魔物の近くに感じる魔力って、田中くんじゃない?」


 そのバカ野郎は、マイが言う通りリョウタで間違い無い。


「本当だ、亮太の魔力を感じる・・・」

「あれはちょっと・・・さすがにやばくない・・・?」

「た、助けにいかないと!!」


 マサキとユウコが呟きながら呆然としている中、マイがリョウタを助けに行くと言い出した。


「ダメだ!!!」


 そんなマイを、俺は一喝して止める。

 そのあまりにも大きな声と迫力に、4人ともビクッとする。


「ど、どうして・・・!?あのままじゃ・・・田中くんが危険なんだよ!?」


 俺の声に若干竦みながらも、マイは何とか食い下がり助けに行こうとする。


「ああ、わかっている!だからこそだ!」

「えっ・・?」


 俺の言葉に、4人は困惑の色を浮かべる。

 それは、彼に危険が及んでいるからこそ見捨てる、と言われたと思ったのだろう。


「いいか!?時間が無いから手短に言うが、今のあいつじゃ絶対に勝てない魔物だ。あいつが魔物に攻撃を仕掛けたら最後。間違い無く殺される!更に言えば、お前達全員が行った所で結果は同じで、無駄に死体が増えるだけだ!」

「「「「・・・・・」」」」


 俺がはっきり、行けばお前達は全員死ぬ!と告げると、さすがに死の恐怖を感じたのか顔を青くさせていた。


「いずれはお前達でも勝てると思うが、それは今じゃ無い!今お前達がやるべき事は、さっさと他の生徒達と合流して、一刻も速く森から抜け出して街に戻る事だ!!」


 俺が早口に大声でまくし立てると、悔しいけど納得するしかないという表情をしていた。


「・・・わかったよ。でも、ジョークくんはどうする気なの?」

「俺は実力の差もわからない。あのバカを説教しに行ってくる!」


「え?でも、ジョークくんまで危険な目に・・・」

「俺の心配はいい!俺はお前達と戦闘の経験値が違う。あいつを逃がした後、俺1人だけだったら逃げるだけならどうにでもなる」


 俺1人という部分を強調し、絶対に付いてくるなと念を押す。


「ん・・・わかったよ。その代わり約束して!絶対に戻ってくるって!」

「私も・・・私も街に戻り次第、すぐに軍に掛け合いますので・・・それまでは、どうかご無事を・・・」


 俺を心配したマイは無事に帰る事を約束して欲しいと頼み、マリアは自分も助けを呼ぶから無事でいて欲しいと祈る。


 俺は「ああ、わかった」と一言だけ告げた。


 そして。


「そろそろまずい!あのバカが攻撃を仕掛けそうだ!俺は行くぞ!・・・いいか。お前達も急いで行動しろ!!」


 俺がそう言った後は、彼らの方を見る事もなく急いで魔物が居る場所へと向けて走り出す。


 そして、勇者達の視界から外れた瞬間に、俺はさらに加速し数百mの距離をあっという間に縮める。


 俺が魔物のすぐ近くまで来た瞬間、ちょうどリョウタが今放てる最大限の威力の魔法を放ってしまった。


(くそっ!間に合わなかったか!・・・しかし、このバカが!!何を考えてやがる!!)


 魔物に向けて魔法を放つ事自体もそうだが、リョウタが放ったのは火魔法である。


(よりによって、森の中で火魔法を使うとか、頭がいかれてやがる!森を消失させる上、更には自殺願望でもあるのか!?)


 リョウタの目の前には、広範囲にわたる巨大な火柱が立ち上っていた。


 普通なら森の中で火魔法を使う事はしない。

 森で火魔法を使うと言う事は、森の資源を失わせるのと同時に、自分達も危険な目に遭うからだ。


 現にその熱を受け、リョウタの後ろにいる同じグループだったと思われる3人が、必死に熱さから身体を守ろうとしていた。


 そんな中、リョウタだけは熱さに耐えながらも、魔物を倒してやったぞといわんばかりの、ドヤ顔を炎の中に向けていた。


 魔力感知の出来ない者が仲間にいると、これほどやっかいなのかと嘆く他なかった。


「このバカ野郎が!!なに勝ち誇った顔をしてやがる!!いいから、さっさとこの場から立ち去れ!!」


 急に現れた俺に驚いた顔をしたリョウタだが、すぐにキッと睨み返してきて反論してくる。


「バカだと?それは俺の事か!?さっさと立ち去るも何も、もう魔物は倒したんだから、この火を消せば慌てる必要はないだろ」


 こいつの頭の中は、お花畑で埋まってんのか?


「だから、バカだと言ってんだ!相手の力量もわからねえのか!?魔物はまだ倒しちゃいねえよ!!・・・・・おい、お前達!ボーッとしてないで、向こうの方角に全力で走れ!今すぐだ!!」


 聞く耳もたないリョウタを無視して、後ろにいる3人には俺が指で示した方向へ逃げるように告げる。


「えっ?で、でも・・・」

「いいから速く行け!!死にたいのか!?」


 同じグループであるリョウタを置いて行く事に、少し抵抗があったのだろう。


 しかし、俺の鬼気迫る物言いに一瞬たじろぎながらも、3人は急いで走り出した。


「おいおい、何勝手な真似してんだよ。しかも魔物を倒してないだって?笑わせるなよ。この炎の中で生きられる奴なんていないだろが」


 本当にこんなやつは、一度痛い目を見た方がいい。

 だが、それは今ではない。


 流石に相手が悪すぎる。


 現に魔物の魔力は衰えるどころか、むしろ高まりを見せている。


 これを意味する所は、つまり・・・


「バカ野郎!!ぼけっとしてないで、避けろ!!」


 俺が避けるように指示しても、「あん?」と言いながら避けるそぶりを見せない。


 このままではまずいので、俺は一目散にリョウタへ向けて駆け出す。


 そして、リョウタを右手で思いっきり突き飛ばす。


 その瞬間、リョウタが居たはずの場所に、人間1人は軽く飲み込むほどに大きな一筋の光線の様なものが通り抜けていった。


「ぐあっ!!」


 そして、光線の斜線上に残っていた俺の左腕が、プスプスと焼けただれる。


 俺に突き飛ばされたリョウタは、数m先の木に打ち付けられた後、その光景を見て何が起ったのかわからないと、目を白黒させていた。


「お、おい、大丈夫なのか?」


 何とか頭を回転させ、俺が庇ったと言う事を理解し、俺の焼けただれた腕を見たリョウタが、心配するように近寄って声をかけてきた。


「あ、ああ、大丈夫だ」


 とはいえ、この状態のままだと、左腕は使い物にならない。


「それよりも、この場から早く立ち去れ!」


 俺がそう言うのと同時くらいに、魔物ごと森を焼いていた炎が収束し始める。


 そして完全に炎が消えると、魔物の姿をはっきりと確認する事が出来た。


 この魔物は、地獄の番人と呼ばれるケルベロスだ。

 しかも、本来なら3つ首であるはずが、頭は一つしか無い変異種(ユニーク)である。


 頭が3つから1つになったのであれば、ケルベロスの劣等種なのではと思うかもしれないが、そうではない。


 むしろ逆なのである。


 本来なら3つの頭で補い合っていたはずが、その必要がなくなったという事。

 それが意味する所は、頭1つだけで本来のケルベロスの力を越えているという事に他ならない。


 超絶進化を遂げてしいるのだ。


 更に言えば、頭の先から尻尾の先まで約10mと、本来のケルベロスよりも2周りほど大きくなっている。


 それに元々ケルベロスは、厚い皮膚と毛皮により魔法耐性と物理攻撃耐性がかなり高い。


 それすらも強化されていると考えた方がいいだろう。

 自分で魔力を操れる事を考えると、魔力を自分に纏わせてさらなる強化も出来そうだ。


 そんな魔物を相手に、生半可な魔法や武器攻撃では歯が立たない。

 だからこそ、リョウタの垂れ流し魔法が効くはずなかったのだ。


 そして、ケルベロスが放った先程の光線の様なもの。

 あれはおそらく、口に魔力を集めて圧縮し咆哮に乗せて放ったのだろう。


 その斜線上では、ケルベロスが放った咆哮と同じ大きさで木々が消滅している。

 普通の者があの直撃を受ければ、跡形もなく消え去るだろう。


 俺の腕も本来(・・)なら消えているはずだ。



 俺がリョウタに、構わずに行けと言ったにも関わらず、「あ、いや、しかし・・・」と言って、この場を動こうとしない。


 その間にケルベロスが近づいてきて、鋭い爪を持った前足を俺達に向けて思い切り振る。


 俺はリョウタを庇うように前に立ち右腕でガードするが、ケルベロスの力によってリョウタもろとも吹っ飛ばされ木に激突する。


 更に俺には爪による、裂き傷も受けてしまっていた。


「ぐっ!」

「ぐはっ!」


 俺は腹から声が漏れ、俺の後ろにいたリョウタも背中を打ち付けて声が漏れる。


 そこで俺は、再びリョウタに言い聞かせる。


「あの魔物の力がわかっただろう!?お前では倒せない!わかったら、早く行け!お前を庇いながら逃げるには限界があるんだよ!」

「ごほっ、ごほっ・・・だが、しかし・・・」


 ああ、もう面倒くさい!!


 俺はいい加減にイラッとして、リョウタの背後へ一瞬で移動すると、その首筋に手刀を振り下ろして気絶させたのだった。




お読み頂きありがとうございます。


今回の話を1話に収めようとすると、1万文字近くなりそうだったので、

ここで一端区切ります。


更新は週2回を目処にする予定です。


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