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獣耳男子と恋人契約  作者: 花宵
第3章 悪の女帝の迫り来る罠
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1、嵌められた罠

「結城、すまんが今から職員室まで来てくれないか? 時間はそうかからないから」


 帰りのHRが終わった後、コハクは担任に呼ばれて職員室へ向かった。

 それを見計らっていたかのように、桃井が極上の笑みを浮かべて話しかけてきた。


「一条さん、ちょっといいかしら? いつも結城君と一緒だから、たまには皆で遊んで帰りましょう?」


 桃井の言葉を聞いて、彼女と行動を共にする女子、坂梨さん、柑凪さん、栗木さんの三人も集まってくる。


「いいねー最近駅前に出来たカラオケ行ってみない?」

「それはいい考えね。一条さん、よかったら一緒に行きましょうよ。私達、今までの事をきちんと謝りたいの」


 伏し目がちに潤んだ瞳でこちらを見てくる桃井。胡散臭いことこの上ないけど、最近は彼女達から嫌がらせはされていない。むしろ、何かと話しかけてきては世話をやいてくれる。

 あまり好きではないのは確かだが、無下に断るのも悪い気がした。


「少し、だけなら……」

「ありがとう! それじゃあ、行きましょう」


 笑顔の桃井達に促され、そのまま教室を後にした。

 コハクにはラインで連絡し、桃井達と遊んで帰る旨を伝え、私達は駅前のカラオケ店へとやってきた。


 部屋に入り扉を閉めたところで、桃井達が一様に並んで私の前に立った。

 中々威圧感のある光景に、心臓が不整脈のように嫌なリズムで鼓動を刻む。


 綺麗に化粧をして髪にも拘り派手な印象の彼女達と、地味で冴えない自分。

 一緒に街中を歩いている時も遠くからヒソヒソと声が聞こえていた。


『一人浮いたのがいるぞ』

『どう見ても引き立て役だろ。合コンでも行くんじゃね?』

『女ってこっえー』


 学園を出ても周囲から感じるのはバカにしたような嘲笑の眼差し。場違い感をヒシヒシと感じて惨めな気持ちになった。

 一緒に来たのは失敗だったのかもしれない……そう思い始めた頃、彼女達は一斉に深々と頭を下げた。


「今まで貴女に辛い思いをさせて、悪かったと思ってるの。許して欲しいなんて言わない。でも、これだけは聞いて欲しいの。本当にごめんなさい」


 桃井の謝罪の言葉を契機に、他の女子達も誠心誠意謝ってくれた。

 また何かされるんじゃないかって少しでも変に勘繰った自分が恥ずかしくなる。


「気持ちは分かったから、頭を上げて」


 正直今までの事を許せたわけじゃないけど、真摯に向き合ってくれたのは分かる。

 今までの事は水に流すという方向で話は進み、私達はカラオケを楽しむことにした。


 途中、坂梨さんの彼氏とその友達がやってきて場を盛り上げてくれたものの、その場のノリについていけない私はひとり隅の方で烏龍茶を飲んでいた。


「桜ちゃんは彼氏とか居るの?」


 その時、坂梨さんの彼氏の友達の一人、柳原君が私の隣の席に腰を掛けて話しかけてきた。


「桜の彼氏は聖学きってのイケメン王子だから、あんたに望みはないよ」


 向かいの席でフライドポテトを摘まんでいた坂梨さんが、辛口で柳原君の質問を一刀両断。


「そうなんだ、残念。桜ちゃん結構俺のタイプだったのに」

「柳原君にも素敵な人がきっと現れるわよ」


 ちぇっと呟く柳原君を、歌い終わった桃井がこちらに近付いてきて優しくフォローしていた。

 あまりこういう雰囲気が得意でない私はトイレに行くと席を立つ。


 スマホを見ると、コハクから『大丈夫?』とラインが来てたので『大丈夫だよ』と返信しておいた。

 カラオケに来て、既に一時間半ほど経っていたようで、時刻はもう十九時になろうとしている。 

 クッキーも待ってるだろうし、そろそろ帰ろう。


 部屋に戻り飲みかけの烏龍茶を飲んで、そろそろ帰る旨を伝えようとした時、異変が起こった。

 異様に眠たくなってきて、身体が思うように動かない。


「桜さん、大丈夫?」


 そう桃井が話しかけてきたのを最後に、私は意識を手放した。



***



「ここは……」


 気が付くと、知らない部屋で寝ていた。

 隣には柳原君が半裸で寝ていて、首元まで閉めていたはずのブラウスのボタンが少しはだけていた。


 何故こうなったのか、記憶を辿ろうとしても思い出せない。

 帰ろうとしてたら、急に眠くなってそれから私は何をしたの?

 とりあえず急いでボタンを閉めていると、柳原君が起きた。


「あれ、桜ちゃんもう帰っちゃうの?」

「これはどういう事ですか? どうして私はあなたとここに居るんですか?」

「一晩愛し合った仲なのに。冷たいね、桜ちゃん」


 彼のその言葉に、私は絶句した。

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