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獣耳男子と恋人契約  作者: 花宵
第13章 激化する呪い
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11、膨れ上がる悪意

 少し気になる事があった。一組の中で『私がコハクと付き合っていながら放課後、別の男と親しげにしていた』という噂が流れていて、それが女子の間でひどい反感をかっているようだ。


 一瞬クレハの事が頭に思い浮かぶも、あれは幻術空間の中での出来事であり噂になるはずがない。

 ここ最近はなるべく一人にならないよう外に出る時は、シロかカナちゃんが傍に居てくれる。

 幸いなのは、その噂が嘘だというのをここに居るメンバーは知ってくれている事だろう。

 だがこのまま放置しておけば、呪いの効果でまた誰かが彼女達のように被害に遭う可能性がある。

 つまりそれは明確な悪意をまた誰かに向けられるということで……結構きついな。

 そっとため息をこぼした私に、美香が声をかけてくれた。


「安心して、桜。下らない噂の真相は私がきっちり調べて根絶やしにするから」

「美香……ありがとう」

「大丈夫、コンテストが終われば皆の見方もきっと変わる。だから、きちんとメニューこなすのよ? サボったらすぐ分かるんだからね」


 そう言って私の肩に手を回した美香は、いたずらな笑みを浮かべて空いているもう片方の手を私の脇の下にあてがうと、そのままスーッと撫でながらヒップまで下ろした。 


「うん、だいぶ仕上がってきてるわね。ラインも綺麗に出てるし何より、いい感じで引き締まってるわ。こっちは……」

「ちょっと、美香! ストップ!」


 横のラインを撫でられたところまでは何とか我慢出来た。しかしスカートの上からお尻を鷲掴みされ、さすがにまったをかける。

 このまま抗議しなければ、彼女はきっとスカートをめくって今度は足のラインを確認し始めるだろうから。

 美香は美容スイッチが入ると、チェックのために身体のあらゆる部分を触ってくる癖があると最近気付いた。

 彼女の奇跡の手は触るだけでサイズの変化を敏感にキャッチ出来るようで、前日の夜食べ過ぎたりすると次の日、的確にそれがどこにおさまったのかをつまんで教えてくれる。

 二人だけの時ならまだよしとしよう。だが、ここにはシロとカナちゃんが居る。彼等の目の前で公開プロポーション検査は恥ずかしいからやめてほしい。

 チラリと彼等の方を見ると、シロはニヤニヤした顔でこちらを眺めており、カナちゃんは赤らめた顔を横に向けて視線を逸らしていた。


「ああ、ごめんなさいね。彼等が居たことすっかり忘れてたわ」


 シロの視線のおかげか、何とか美香の美容スイッチを切る事に成功して手が離れた。

 将来エステティシャンとか向いてそうだな美香……ああ、でも病院継ぐために美容外科医になるのかな。


「それじゃあ私、早速調査に行ってくるわ」

「待って桃井さん、俺も手伝うわ」


 教室を出ていこうとする美香をカナちゃんが引き止めるも、振り返った彼女は顔を左右に振ってその申し出を断る。


「西園寺君、貴方には無理よ。分かったでしょう? 貴方の前で女子は決して口を割らないってことが」

「それは……」

「必要な時は協力要請するから。分かったら、今は桜の傍についててあげて。不安なのよ、この変態一人じゃ」

「誰が変態だ!」

「自覚があるって事は、少なからず認めてるって事よね」

「テメェが顎しゃくってこっち指すからだろうが!」


 シロと美香のバトルが本格化しないうちに二人をなだめて引き離す。

 美香はそのまま文化部を回って情報収集に行くみたいで、お礼を言って別れを告げ、私はシロとカナちゃんと一緒に学園を後にした。


***


 帰り道、やけに工事中で通行止めの看板が多くかなり遠回りさせられる。これも、呪いの影響なのか嫌な予感を感じながら帰路を急ぐ。

 大型ショッピングモールの影響でさびれたアーケード街まで来て、流石にこれはおかしいと気付いた時には、周囲を派手な頭のお兄さん達に囲まれていた。


 左右にはシャッターの閉まったお店があり、前後にはバットやら鉄パイプやら物騒な武器を持った強面の方々がざっと十人。

 あの数で武器を振り回されると間合いをつめるのが難しく、私の拳も蹴りも届かない。

 シャッターを背にして死角を無くすもさすがにまずいな……危機的状況を前に、背中に冷や汗が流れるのを感じた。


「あの時はどーも。よくも優菜の前で格好悪い所見せてくれたな?」


 そう言って強面のお兄さん達の合間を縫って現れたのは、見覚えのある男。ギラついた目でこちらを睨むその男は、少し前に優菜さんを無理矢理襲おうとしていた最低な奴だった。

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