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獣耳男子と恋人契約  作者: 花宵
第10章 悲しき邂逅
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11、寝込みを襲うわけではありません

 あれから、カナちゃんが家に結界を張ってくれて、とりあえず家の中ではいつも通り生活出来るようになった。


「開運のお札もろたんでお裾分けです。これ家に貼ると、運気がぐんぐん伸びてきっとええ事ありますよ」


 もちろん、そんな効果は無い。

 だけど、その言葉に母は何の違和感も持たない。


「どこに貼ったらいいかしら? カナちゃん教えて~」


 ルンルン気分で尋ねる母に「何なら俺、やりますよ」と人当たりの良いスマイルを浮かべるカナちゃん。

 そこに他意が含まれていることに、母はもちろん気付かない。


「いいの? 助かるわ~」


 こうして、何の疑問も持たれずに彼は家に結界を張ってのけた。

 私は彼に『浪花のペテン師』の称号を与えたい。


 その日の夜、上機嫌で話しかけてきた母は


「桜、ほら見て! 無くしてた指輪が見つかったのよ! これもカナちゃんが貼ってくれたお札のおかげね!」


 と、都合よく良い事はお札のおかげだと思い込んでくれている。


『母よ、それはお札のおかげではなく、元々見つかる運命だった指輪だ』と、私は心の中で一人つっこんでいた。



 呪いをかけられても、私はいつもの日課をこなさねばならない。

 左手の呪印がⅠの数字を刻んだ日に、プリンセスコンテストが行われる。


 優菜さんという強力なライバル……と、私が言うのもおこがましい超絶美少女の天使様と戦わなければならない。

 そのためには、呪いに屈している時間などないのだ。


 美容体操をしながら、気合いを入れ直していると──


「なぁ、それスカートはいてやれよ。その方が見てて楽しいぞ」


 背後から突如話しかけられ、寿命が三年ほど縮んだ。


「い、いつからそこに?!」

「お前が一人で回想し始めたくらい」

「最初からじゃん! ていうかシロ、体調大丈夫なの? よくテレポート出来たね?」

「ああ、これくらいなら平気だ。変化はうまく出来ないけど……」


 コハクに化けようとして、知らないおっさんに変化したシロ。合ってたのは性別くらいで、それくらいアバウトにしか今はコントロールが出来ないらしい。


「俺の事はいいから、続きやれよ。ただし、これに着替えてからな」


 そう言ってシロは、袖口から取り出した葉っぱを自信満々にあるものへと変化させる。


「それだと動きにくいから却下」

「動きにくいだと? そんなはず……何だこれは!?」

「タヌキの着ぐるみ」

「それならこれはどうだ!」

「……ひよこの着ぐるみ」

「くっ……ならこれは……っ!」


 それから数々と着ぐるみコレクションを作り出したシロは、げんなりとした様子でベットに横たわっている。

 どうやら葉っぱを変化させるのも上手く出来ず、力を使い果たしたようだ。

 可哀想な気もするが、自業自得感が半端ない。


 一日のメニューをこなし、途中コハクに呼び掛けたりして、時刻は軽く午前様を越えていた。

 シロはそのまま寝てしまったようで、私のベットを軽く占拠している。

 休んだら少しは霊力の回復はするんだろうけど、流石に補充してあげないと可哀想だ。


 スヤスヤと眠る彼の寝顔に視線を移し、いざ試みようとするが、寝込みを襲っているみたいで気がひける。

 でも、ここでやらなかったから朝になってもシロは目覚めないかもしれない。


 だけど寝ている相手に自分からって、欲求不満みたいで何だか恥ずかしいよ!


 シロの寝顔をじっと見つめながら、一人頭を悩ませること数十分。意を決してベッドに身を乗り出して、そっと口付けた。

 離れようとした時、不意に手が伸びてきて腰を取らる。そのままシロの上に倒れこんでしまった。


「ずっと待ってたんだ、そう簡単に逃がすと思うか?」

「お、起きてたの?」

「いや、今起きた。待ちくたびれて寝てただけ」 

「ごめん、遅くなって……」

「全くだ。罰として、今日はこのまま寝る」


 シロはそう言うと、私の身体を抱き寄せて頭に顔を埋めてきた。

 いつもなら何だかんだ言いつつも、結局白狐の姿で眠る彼が、こんな風に甘えてくるなんて珍しい。


 このまま寝るって問題がある気がするけど、横になったら急に睡魔が襲ってきた。

 思っていたより、身体は大分疲れていたらしい。


 ああ、なんか……いい匂いがする。

 とくん、とくんって……鼓動の音聞いてると、落ち着くな。

 シロ、マイナスイオンでも出してるんじゃないのかな……なんか、癒される……すごく……気持ちい……。


「お前は頑張り過ぎだ。ゆっくり休め。おやすみ、桜」


 頭に柔らかい何かが触れて、私はそのまま意識を手放した。

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