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前編

※ちはや れいめい様のリクエストにお応えして執筆しました。リクエスト、ありがとうございます。

――密かに想いを寄せる彼女から、突然、マイナーなクラブを作るから協力するよう頼まれたら、あなたは、どうしますか?

  *

「部として認めて部室を与え、予算を出すには、部員を五名以上集め、教職員の誰かに顧問を依頼して承諾してもらうことが条件だ。そうじゃない場合は、同好会として活動してもらう。部員数や顧問の有無は問わないが、その代わり、予算も部室も用意できないから、そのつもりで」

 首から「鮎川」というネームプレートをさげ、くたびれたスーツを着た教師が、回転イスに座ったままアッサリ告げる。すると、セーラー服の胸元に「松本」という名札を付けた女子生徒は、ひじ掛けに手を置いてしゃがみ込み、上目遣いで瞳を潤ませながら懇願する。

「そんな。冷たいこと言わないでくださいよ、ハンサムティーチャー」

「あからさまなご機嫌取りをするな。まったく」

 教師は、ひじ掛けから生徒の手を引き剥がすと、「新規部活動申請用紙」と書かれた半ピラのコピー用紙を手に取り、手の甲でパンパンと軽く叩きながら言う。

「そもそもだな。鉄道研究部や旅行愛好部なら、まだ理解できる。だが、この時刻表部ってのは、なんなんだ?」

「時刻表を愛し、時刻表に愛される選ばれし者が、切磋琢磨し合うクラブです!」

 疑問を呈する教師に対し、女子生徒が立ち上がって胸を張り、自信満々に宣言する。教師は、後頭部に若白髪の目立つ頭を掻きつつ、呆れたように話を続ける。

「……皆目、活動内容が分からないが、まぁ、良い。それで、現在の部員数は?」

「目下、部長の私と、鮎川先生の二人です」

「僕を数に入れるな。入部した覚えはないし、顧問だってやらない」

「ひどい。あの日、放課後の教室で二人きりで誓った約束は、嘘だったのね!」

 女子生徒が再び瞳を潤ませながら言うと、教師は女子生徒の右手を掴んで掲げ、持っている目薬を他の教職員に見えるようにしながら言う。

「デタラメを言うな。根も葉もない噂が立ったら、どうする? こんな小道具まで使って芝居しやがって」

「バレちゃいましたか。でも、そのときは、教職員生命にかけて償ってもらいます。家事は任せてください!」

 女子生徒が目薬を箱ヒダのスカートのポケットにしまいつつ、拳で発展途上の控え目な胸を叩いて自信満々に言うと、教師は即座に断る。

「却下。僕は、まだまだ独身貴族をエンジョイしていたい」

「そんなこと言ってると、あっという間に売れ残りますよ?」

 ニヤニヤと口の端で笑みを浮かべながら女子生徒が言うと、教師は野良猫でも追い払うかのように片手を振り、デスクワークに取り掛かる。

「余計なお世話だ。とにもかくにも。まず手始めに、青春を時刻表にかける同士を集めて来い」

「はいは~い。それじゃあ、一旦、失礼しま~す」

 少女は、パタパタとゴム底を鳴らしつつ、小走りで廊下へ向かった。

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