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咎人ダークエルフ  作者: 猫崎
竜王襲来
7/10

竜王襲来 一


「おいそこの、止まれ。フードを下ろして素顔を見せろ」


 とある街の門の前。衛兵が黒いコートを着てフードを深く被った不審な人物にそう言った。


「ああ、すまん」


 帰ってきた声は鈴のように綺麗な女の声だった。

 

 黒コートの女が褐色の手でフードを上げる。

 それ見て、衛兵たちに動揺が走った。

 女は、日の光にキラキラと輝く銀色の髪と並みの人種より長い耳、更には褐色の肌を持った──ダークエルフだったからだ。

 

「……これでいいか?」


「あ、ああ。入門税は半銀貨五枚だ」


「金貨で」


「こ、こちらで換金しよう」


「どうも」


 そして入門税を払うと、ダークエルフはフードを深く被り街に入っていった。




「おい、俺ダークエルフなんて初めて見たぞ」


「俺もだ。そもそもエルフ自体珍しいってのによ」


「しかも超可愛かったな。あー今からでも食事に誘いてえぇー」


「馬鹿、ああいう子はお前みたいなムキムキおっさんより細身のイケメンの方がいいんだよ」


「っかぁーおっさんには辛い世界かぁ……。つうかあの子一人だったよな、珍しいからって人攫いに捕まらなきゃいいんだがな」


「ま、そこは中の奴らに任せるしかないだろうよ。俺らは積み荷のチェックで忙しいからな。


 ああ、ここら辺では無いけどそういやダークエルフって迫害対象だったな。聖国とか」



 ◇  ◇  ◇  ◇



 よし……よし。

 無事に街に入れた。

 餞別としてファニーに渡された金貨があってよかった。

 あれがなきゃあの強面の衛兵たちに捕まったりするんだろうか……。とにかくファニーには感謝しなきゃな。


「ねえ、アニったらまた彼氏と別れたんだってー」

「領主様の三男が生まれたらしいわよ!」

「あー、スライム共せいで剣がボロボロだわ。買い換え時かねぇ」


 ……人、多いな。

 ヤバい緊張する。いや別に人見知りとか人混みが苦手とかじゃない。


 俺は、このコートの下に何も着ていないんだ。靴も無い。

 下手すりゃ露出狂だ。いや、もう既に露出狂なのか? いやいや誰にもバレてないからセーフ……。


「あの、安い服屋を探してるんですけど、どこら辺にあるか分かります?」


「え? ああ、それなら二番通りに商店が密集してるから行ってみたら?」


「そうなんですか。ありがとうございます」


 二番通り。二番通りか。

 ……どこだ。


「すいません、二番通りってどこら辺にあります?」



  ◇  ◇  ◇  ◇



 無事服と靴を買えた俺は次に、武具屋を目指していた。

 服は袖が長い白の上と、黒いジーンズ。黒いブーツと黒いのグローブ。全て(恐らく)安物だ。

 その上から、フード付きの黒いロングコートを着ているからもう真っ黒だ。本当は赤色が好きなんだが、まあ、白や赤だと汚れが目立つから黒でいいか。



「おう、らっしゃい」


「どうも。あの、ここに魔導銃はありますか?」


「魔導銃ねぇ……んなマイナーな武器無えなぁ。あっ、ガスターんとこなら一丁あったかな。一番スラムに近いとこにあるぼろ屋だよ」


「そうですか、ありがとうございます」


 目当ての物が無いらしく、足早に店から出る。


「スラムか……」


 日本では馴染みの無い単語だ。まあどういう所かは知っている。

 俺は買ったばかりの服を着ている時に現れる謎の違和感に苛まれながらスラムを目指して歩く。



  ◇  ◇  ◇  ◇



「──か。いい名前だな」


『そうじゃろ? その名は我の主だった人の名じゃ。

 お主は元男らしいが今のお主はどこからどう見ても女のダークエルフじゃからの、体の変化に慣れるのにはまず名からじゃ』


「まあ、変な名前じゃないからいいよ。

 そういや、貰った宝ってここで試し撃ちしてもいいのか?」


『ん? 別によいぞ?』


「それじゃあ、ちょっとやってるか──」



  ◇  ◇  ◇  ◇

 


「ここ……か?」


 スラムに一番近いボロ家は……ここしかないな。

 俺は今にも崩れ落ちそうなボロボロ家……小屋を見る。


 横開きの玄関の扉は今にも壊れそうで、ありとあらゆる所に隙間がある。

 ここに人が住んでるとは思わないが、建て付けの悪い扉を力を入れて開く。


「すいませ──ゴホッゴホッ!」


 扉を開けた瞬間埃が舞う。

 コートの袖で顔を守りながら薄目を開けると、足の踏み場も無いほど散らかった明かりのついてない部屋があった。


「こんな所に人が住んでる訳ないか」


 汚すぎて長く居たくない。なのでそう見切りを付けて体を180度回転させる。


「おいおい、勝手に人ん家入ってきてそりゃねえんじゃねえか?」


 足を一歩踏み出したところでそう声をかけられた。……後ろから。


「居たんですか……ということは貴方がガスターさんですか?」


「ああ、そうだよ姉ちゃん」


 やけくそ気味に振り向くと、ぽっちゃりとした上裸のおじさんが頭をポリポリと掻いていた。


「んでぇ? 俺の店になんのようだ」


 店……と言うよりは物置と言った方が納得がいく空間だが、この人基準だとここは店なようだ。


「ああ、ここに魔導銃があるって聞いたもので」 


 魔導銃。

 それは、あのウサギのようなモンスターがいるこの世界での俺の希望だ。




『魔導銃とは、持ち主の魔力を弾として撃ち出す武器じゃ。

 我が知っておる時代では割とありふれた武器じゃったが今の時代ではどうなっておるか分からんの。

 そして、魔導銃を撃つことは魔法ではない。誰でも出来るのじゃ。

 魔導銃なら、咎人の鎖を持っているお主でも魔物と戦えると思うぞ?』




 その説明を受け、俺はファニーに魔導銃を貰った。

 そして俺はその銃たちを大層気に入り、あの洞窟で試し撃ちをしてみた。


 結果としては、魔導銃は撃てた。

 ……洞窟の天井をぶち抜いたが。




『制御もせずに撃てばこうなるだろうの。

 魔力も込めすぎじゃし、お主自身の魔力も“強い”ようじゃ』




 他にも銃は何種類か貰ったが、流石に試す気にはなれなかった。

 原因は俺が魔力制御とやらを殆どしていないからだそうだ。

 魔導銃に持ってかれる魔力を引っ張り合い、いい感じの魔力量で撃たないと余計な威力が出てああなるとファニーが言っていた。


 練習しようとも魔力というものがよく分からなかった。

 魔力なんて無い世界に生きてたからしょうがない。



『まあ、それは英傑の武器。威力が高いのも当たり前じゃ。

 一度普通の魔導銃で練習するのがいいじゃろう』



 そのような理由があり、俺は今このボロ小屋に来ている。




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