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咎人ダークエルフ  作者: 猫崎
約束の杯
4/10

約束の杯 四


 ──兄ちゃん、俺さ! 彼女が出来たんだ! あと全国大会にも出ることになった!


 流石俺の弟だ。あと、彼女の方が優先度高いのな。俺? 俺は恋なんかに現を抜かしてる暇はないのさっ。



 ──○○、あんた根を詰めすぎよ。高校生なんだから、たまには遊びなさい。折角私らイイ顔で生まれてきたんだから、楽しまなきゃ損よ?


 姉さん、いつも言ってるだろ? 俺は妹を助けるまで恋はしないって。断じてモテないからじゃないからな。


 ──○○。たまには父さんと釣りにでも行かないか? ボーリングでもいいぞ。


 んー、そうだな。たまにはボウリングにでも行こっかな。




 ──お兄ちゃん。私、いつか皆で景色が綺麗な山に登ってみたいな。


 ああ、いつかきっと、お兄ちゃんが病気を治して、絶対に連れてってやる





『殺せ』


『家族を助けたいんだろう?』


『ならば、殺せ』


『その銃で、その力で』


 ズドンッ




『そして、私を楽しませろ。──くくくっ』



 ◇  ◇  ◇  ◇ 



「──っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 開いた瞳に入ってくるのは、一面の岩肌。

 背に感じるのは冷たさと、少しの痛み。


 どこだ、ここは。


 心臓がばくばくと鼓動を立て、俺の思考を邪魔する。

 何か、悪い夢を見ていた気がする。

 

『おお、起きたか』


 頭上から、脳に直接響くような声が聞こえる。

 それを確認しようと起き上がる。


 ──待て、俺は今、両手を使ったのか……?


『それには我も驚いたのじゃ』


 右手が、ある。

 それを確かめながら、俺は声の主を確かめようと後ろを見た。


『おはよう、ダークエルフ。我の名は──』


 そこには、漆黒の鱗を持った大きなドラゴンがいた。


『我の名はファフニール。ファニーと呼ぶがよいぞ』



 ◇  ◇  ◇  ◇



「ドラ……ゴン?」


『そうだ。我こそは生物の頂点、龍。その中でも我は最強の龍なのだ』


 縦に割れた黄金の瞳は俺より大きく、その龍の全長は計り知れない。


「なんで、ドラゴンが……そもそも、ここは──」


『ここは我の巣だ。安心せい、取って食おうとはせぬ。久々に外へ出たら、面白そうな物が落ちていたからな。気まぐれで拾ったのじゃ』


 気を失う前、何かの声が聞こえた。

 幻聴だと思ってたんだが、まさかこいつだったとは……。


 恐らく、ここはどこかの洞窟なのだろう。

 ゴツゴツとした壁や床は途轍もなく広く、天井は見えない。

 灯りは壁から生えている水晶のような物と、ファフニールの後ろから見えるキラキラと光る何かだけ。


『おっと、我の宝を盗む気なら殺すぞ?』


「……盗んだとして、どうやって運ぶんだよ……」


 ぐいっと、ファフニールが顔を近づけてくる。

 何というか、獣臭い。


『それもそうか。他の者なら魔法でなんとかするが、お主に関してはその心配も要らなそうじゃしの』


 ん?

 今、魔法って言ったか?


「魔法……」


『ああ、そうだ魔法じゃ。お主の腕は何故治ったのかのぉ。治癒魔法の類いではないし──』


「治癒魔法!? そんな物があるのか!?」


 二つ頭のウサギ。ダークエルフ。そしてドラゴン。


 ここまで来れば信じよう。ここは異世界だ。

 そして、このドラゴンは魔法と言った。それは、この世界に魔法があるということ。

 治癒魔法なんて物があるなら、妹の病気も治せるかもしれない!


「俺に! 俺に使い方を教えてくれ! 頼──」


『無理じゃよ』


「……え?」


『何を呆けておる。理由はお主が一番よく分かっておるだろう』


「な──! 意味分かんねえよ! 頼む、教えてください!!」


『ふむ……ここまで話が食い違うと、少し面白いな』


「何でだ! 何で教えてくれない!? 俺にやれる事なら何でもする、だから──」


『お主……自分の腕が見えぬのか? ほれ、見よ。鎖が巻き付いておる』


「だからなんだ! この意味分かんねえ入れ墨に、何の意味が──」


『それは咎人の鎖と言っての。巻き付いた者に、魔法を使えなくさせる呪いなのじゃ』


 ……は?

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