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第7話

はやはや半年近く音沙汰無しですみませんでした。


書く気はあったのですがなかなか時間とれなくて……。

どれだけの読者が楽しみにしているのか(そもそも読者なんているのかは置いといて)わかりませんが失踪だけはしないように心がけます!


多分年内投稿はこれで終わりかな。でも書けるなら書いて投稿したいと思ってます。頑張ります。


前置きが長くなりましたが7話です!

どうぞ!!

みっともなく泣き散らかした俺に残ったものは、瞼の腫れと多大なる羞恥心だった。いやもうバカじゃねぇの俺。バーカ!俺のバーカ!どうすんだよ!同級生の前で、しかも色恋絡みで泣くなんて!穴があったら入りたい。むしろ今からでも穴を掘ってでも入りたい!


……死にてぇ。


混沌で占めた頭の中を落ち着かせるために、2杯目のブラックコーヒーを口元に運ぶ。相変わらずの苦味だがヒートアップした脳内をクールダウンさせるにはちょうどいい苦味かもしれない。まさかこんなことでコーヒーを克服出来るなんて。人生なにがあるかわからないな。なんてね。てへ。


「……そろそろ帰りましょうか」


自身の右手首に巻いた腕時計を確認した五反田はこちらの返事を聞くことなく立ち上がった。慌てて残っているコーヒーを飲み干す。先程より強い苦味に顔を顰めた俺を気にすることもせずに五反田はカウンターに足を向かわせた。左手に伝票を持って。


「ちょいまて」


既にカウンターで財布を取り出している五反田を呼び止める。怪訝な顔で振り返った五反田の手にあった伝票を引っ掴む。


「あ、ちょっと!」


五反田の静止の声をガン無視して会計を済ます。コーヒー4杯で1520円か。果たして高いのか安いのかよく解らんが。ひとまず今月の新刊の漫画は見送ろう。2000円を財布から取り出して店員さんに手渡す。お釣りの480円を受け取って財布に戻す。質量的には重くなった、だが気持ち的に軽くなった財布をズボンのポケットに戻す。


「……私が誘ったから私が出すのに」


「いいんだよ。みっともねぇとこ見せたからな。ちょっとはイイトコ見せたいんだよ。察しろ」


というか五反田に心中を吐露して楽になった部分もある。そのお礼がコーヒー代で済むのはむしろ安上がりだ。


「……なにそれ。ホント馬鹿ね」


「まぁな。男ってのはそんなもんだ」


どちらともなく扉の取っ手に手を掛けて店を出る。店内の空調から流れていた、いわゆる整備された空気とは違った、春の終わりを予感させる冷たくも温い乾いた空気が俺達2人を包み込む。その空気がなんだか心地よくて。少しセンチメンタルになっているからなのか。吹き抜ける風に髪を揺らす五反田の横顔はいいものだった。なーんてことを考えてるからなのか。面倒な影の接近に気が付かなかった。うん。早く帰ろう。


「じゃ、帰ろうぜ」


「……なに。そんなに急かして」


一刻も早く帰りたい欲が言外に漏れてたらしい。五反田は不機嫌そうに眉をひそめる。いや、お前も帰るってさっき言ってたじゃん。面倒くさいのが来るんだよ今から。


「つってもな。もう用もないし」


「…………アンタってホント女心わかってない。だからそうなるのよ」


……このアマ。


「あーはいはい。俺は女心なんてわからんよ」


だから帰ろう、と再度問いかけようとした刹那。面倒臭い影はこっちに気付いたようだ。言葉を飲み込んでその代わりに息を吐く。ようやく影の存在に気付いた五反田はバツが悪そうな表情を浮かべた。俺が急かした理由に合点がいったらしい。無言のまま目を閉五反田と天を仰ぐ俺。陰鬱な表情を浮かべているであろう俺たちに近づく影、栗原薫と白鳥健吾のカップルは、仲睦まじく肩を並べていた。





「みなっち部活ぶり〜」


気付かれた以上、足早に立ち去るなんてことは出来るわけがなく。結局この2人と接触せざるを得なかった俺達。まず口火を切ったのは白鳥だった。学校で1番モテる男のキラキラフェイス。大抵の女子は堕ちる。だが五反田さんだけは例外だったようで。全く惚れた素振りは無かった。とりあえず白鳥には気持ちの篭ってない会釈を返す。五反田は清々しく無視していた。


「新と五反田さんが一緒にいるってなんか珍しいね」


風に靡く前髪を整えながら横から栗原薫が覗き込む。畜生可愛いじゃねぇか。ちなみに五反田さんはこれにもスルー。五反田パイセンさすがっす。


「ま、な。こんな日もある」


さすがに栗原薫をガン無視できるわけがなく、なし崩し的に俺が対応する。先ほど感情を吐き出したので、幾分か心に余裕ができた。そんな俺の態度に目を光らせた白鳥は嫌味に口の端を引っ張っていた。


……すんげぇ嫌な予感がする。


「もしかして2人って付き合ってんの?」


ほらきた。ちょいと白鳥さん。お前さん俺がアナタの彼女好きだったの知ってるでしょうがどの口が言うんだよ。見てみろ。


「え!?新と五反田さん付き合っているの!?」


誰よりも女子高生らしい女子高生が女子高生としてパーフェクトのリアクションをしているじゃねぇか。そんな顔キラキラさせたら無視なんて出来ない。


とはいっても。その気が毛ほどもない俺と五反田にはほぼほぼノーダメージだ。なんにも面白みもなく否定をしてそこで終わり。火のないところに煙はたたないからな。


「そうよ。私達今日から付き合っているの」


そうそう。俺達は付き合っていない。って……え?


「「……え?」」


白鳥と同時に疑問符を発してしまった。だがそれに追求する余裕は互いにない。白鳥も珍しく呆けた面をだらしなく垂れ流していた。鏡を見なくてもわかる。俺も多分似たような顔をしてる。栗原薫はなお一層キラキラエフェクトを増量し、キャーキャー言っている。五反田は表情筋が1ミリも変わっていない。あまりの自然さに、あれ?俺達付き合っているの?とか錯覚してしまう。


「これから彼と一緒に帰るの。だから邪魔しないで頂戴」


五反田はアホ面さらしてる白鳥と俺に追求しようとしていた栗原薫に釘を刺すと、俺の手をとって歩き出す。後ろから、新、後で教えてねー!とか聞こえるけれどそんなことはどうでもよかった。俺はまだ状況が掴めてなかった。ただわかるのは初めて繋いだ五反田の手は春の朝方みたいにひんやりしているという事だった。




「……どういう事だよ」


五反田に手を引かれて数分。公園と言うには少しチャチな空間に辿り着くと五反田はようやく手を離した。間髪入れずに真意を探る。声が反響してすぐ消えた。車のエンジン音も子どもの笑い声もどこか遠くに感じる。もう太陽は沈んでいて、世界の色がまるっきり変わっていた。


「あのイケメンの態度がちょっと気に触ったから。少し鼻を明かそうかと」


五反田は笑う。いつもの笑みだ。どこか上から目線を感じさせるいつもの笑い方。


「あんなこと言って明日からどうなるかわかってんのか?」


あまりに変わりないその態度に。ちょっとだけムカついた。そんな気持ちを言葉に乗せる。


「ま、追求は避けられないでしょうね」


実にあっけらかんと。五反田の口から出た言霊は俺の鼓膜を揺らす。


ふざけーーー


「でも、そうなってもいいの。知ってた?私ってアナタの事が好きかもしれないの」


「…………はい?」


別に俺は難聴系主人公という訳ではない。しっかり聞こえていた。その上で理解が出来なかった。え、今なんて仰った?


「ああ、言葉足らずだったわね。好きと言っても今すぐにどうこうという気はないわ。私にもよくわからないの。アナタのことをどう思っているか。ただ他の人よりは大分気に入っているの。これが恋愛面から見ても好きかどうかハッキリさせるために……」


「一番近い所でこの感情を確かめたいのよ」


だからよろしくね。と告げた五反田の顔はよく見えない。差し込んだ夜の闇が五反田の表情を隠していた。ただ一つだけ明確に見えたのは。先程の怒りは四散し、変わりに戸惑いの色を含んだ俺の心中のみだった。

文体や展開、心情の機敏などで一言申したい場合は遠慮せずお申し付け下さい。


私の未熟な文章があなたの暇つぶしになりますように

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