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第3話

一ヶ月以上も音沙汰なしですみません!


言い訳はしません。次はもっと早く上げれるように頑張ります。



俺と白鳥は中学の時からの付き合いだ。かれこれ四年になる。栗原薫を除けば一番と言っていいほど。だからといって仲が良いという訳ではない。寧ろ犬猿の仲と言っていいだろう。俺の一方的だが。

そんな訳で俺と白鳥は仲が良くない。だれーだ。なんて今時誰もやりはしないコトを嬉々としてやっているのは多少腹が立つ。が、ここで返事を返さないのは良くないだろう。あくまでビジネスライクとして対応しようじゃないか。


…決して栗原薫と付き合ったからといった逆恨みなどではない。



「……白鳥。」


たっぷりと嫌悪感が詰まった声音で返してしまった。おい、全然上手くやれてねぇじゃねぇか。


「おう!おはよう!」


そんな俺の態度に気にする素振りを見せずに白鳥は笑顔をみせる。絵に書いたようなイケメンフェイス。少女漫画の主人公顔負け。コイツほどリア充という言葉が似合うヤツはそうはいないと思う。


「今日は一段と機嫌悪い?何かあった?」


……空気読めない具合も主人公っぽさたる所以なのか。


「……別に。ただ夜中まで本読んでただけだ。ちょっと眠いんだよ。」


俺が読書家なのはコイツは知ってる。ただ、現代文のテストはいつもコイツの方が断然高いのだが。神よ。コイツに二物も三物も与えすぎじゃねーのか。


俺の返しに納得したのか、白鳥は深く頷きながら俺の肩に手を回す。ブレザーの上から感じる温もりがやけに不快だった。


「みなっちも眠れなかったのか〜!俺も昨日寝れなかったんだぜ!」


みなっちというのはコイツが付けた俺のあだ名である。容認した覚えはないが、言っても聞かないので諦めた。


「へー。そうなのか。つか、いい加減離れろ。暑苦しい。」


そういって、無理矢理腕を振りほどく。軽くなった肩を回す。こきりと骨がなる音がした。


「ちょ!扱い雑すぎるだろ~。親友にする仕打ちじゃなくない?」


「お前と親友なんて考えたくねぇよ。なんなら悪友って表現もしたくねぇ。ただの部活メイトだ。」


俺の辛辣な物言いにつれないな〜とヘラヘラする白鳥。まるでのれんに腕押しだ。


「じゃあ、俺は先行くわ。」


言い終わらないうちに歩き出す。三歩ほど歩いた所で腕を掴まれる。誰だと考えるまでもない。白鳥だ。


「…んだよ。」


「話があるんだ。」


先程までのヘラヘラ顔はどこにいったのか。俺の目をしっかりと見据えて白鳥は言う。


「後にしろよ。」


「いいや。今がいい。時間は取らせないから。」


「さっきまでウザいくらい無駄口叩いたくせによく言うな。お前。」


俺の皮肉の言葉に、白鳥は表情を変えることなく俺の目を見続けている。こういう所が嫌いなんだよ白鳥健吾。


「はぁ。……んで?なんの話だ?」


かといって今更無視できるはずが無い。十中八九あの話だろう。


「ああ。俺、薫ちゃんから告白された。」


ほらきた。やっぱりな。


「あ、そう。要はそんだけか?なら行くぜ。もう始業のベルが鳴っちまう。」


あらかじめ用意していた言葉を返す。心底どうでもいいというように。そうでないと気持ちをぶちまけそうだから。必死に理性で押し殺す。


「…驚かないのか?」


「驚いてるさ。一周まわって冷静になってんだよ。」


俺の言葉に満足したのか。白鳥は口角を吊り上げる。その顔は愉悦に満ちていた。


「なに笑ってやがる…。」


「いやぁ、ずっと薫ちゃんの隣にいたお前を出し抜いて薫ちゃんと付き合えたんだ。これほど嬉しい事は無い。」


「俺と薫はただの幼馴染だ。」


「嘘をつくなよ。それ以上の感情はあっただろ?」


図星だ。喉が絞まる。歯がカチカチと音を鳴らす。それでも白鳥は続ける。


「それも今となってはどうでもいいけど。今後極力薫ちゃんの横に立つなよ。その位置は俺のものだ。」


「最初からそのつもりはねぇよ。」


震える喉を押さえつけ、懸命に言葉を紡ぐ。声に動揺がみられないように。そんな俺を見て、白鳥は笑顔を消した。


「ならいいさ。話は終わりだ。手間とらせて悪かったね。」


そう言い残して白鳥は歩き出す。


「なぁ。白鳥。」


返事は無い。だがそれでもいい。やられっぱなしはしょうに合わない。最後に一言言ってやる。


「よくそんな敵対心見せて、嘘でも親友なんて言えたな。」


白鳥の肩がピクリと動いた気がした。が、そのまま振り返らずに歩いていく。

気が抜けて座り込みそうになるのを死ぬ気で堪えた。ただ笑う膝を誤魔化して、白鳥の後ろ姿を見つめ続ける。それが俺に残された唯一の矜持だった。


結局、白鳥は一度も振り返ることなく、校舎に入っていった。


「……ふぅ。」


その途端、緊張の糸が切れたのか。あっけなく座り込む。制服が汚れるだとか、始業のベルが鳴っていることだとか、一切気にならなかった。


空を見上げる。小説ではこんな時は土砂降りの雨が降るのがお約束だが生憎様、雲一つない晴天。


「やっぱ、アイツ嫌いだわ。」


その呟きは、声にならなかった。ただ、サンサンと輝き続ける太陽がやけに心地よかった。


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