第1話
初投稿です。
よろしくお願いします。
俺の幼馴染、栗原薫は端的に言えば人気者だった。
学年一可愛いと呼び声高く、テストも常に上位キープ。運動もできる。
そんな高嶺の花要素てんこ盛りだが、それでいて親しみやすい。誰にでも隔てなく接し、常に笑顔が絶えない彼女。
同性にも異性にもファンクラブがあると友人から聞いた。
そんな彼女と俺はいつも一緒にいた。
たまたま家が近かっただけ。それが何よりも大きい要因だった。
幼少期から引っ込み思案だった俺を無理矢理連れ出して毎日遊んでいた。
小学五年生くらいの頃に、子供ながら彼女が好きだということに自覚。それからは、彼女がやっているから。という理由からバスケも始めたし、彼女が好きな音楽も聞くようにした。
中学生になってからは常に隣にいるようにした。そういうお年頃だからなのか。周りからの冷やかしや嫉妬が多々あったが、気にならなかった。彼女の隣に立てればそれで満足だった。
いや、満足という言い方は正しくない。俺は彼女が俺以外の人に同じ笑顔を振り撒くのが嫌だったのだと思う。
閑話休題。
そんなこんなで高校でも一緒だった俺と彼女だが、つい先程、といってもホント6時間前の事だ。関係が一変してしまった。
俺が告白して振られた。とかそんな訳では無い。俺に告白出来るほどの度胸は無かったし、そもそも彼女が俺の隣を離れるはずがないと慢心をしていた。
だから信じられなかった。
彼女、栗原薫が俺とは別の男に告白をしている現場に出会すなどとは。
その時の事は、幸か不幸か鮮明に覚えている。
こういう時は頭が真っ白になってなにも覚えていないものだと思っていたがそんなことはなく、むしろ目を瞑ればその時の湿度までも思い出せるほど俺の脳はキッチリ仕事をしていた。
いつもは部活が先に終わった方が校門前でどちらかが揃うまで待つ。というのが決まりだった。誰が決めた理由でもない。自然とそうなっていた。
普段は俺が待つ方だったのだがその日だけは違った。
待たせたら悪いと思い、少し小走りで校門に向かった俺。
校門が視界に入った頃、目に入ったのは彼女が告白しているところだった。
頬を赤らめ、挙動が不審になりながらも相手の返事を伺っている彼女。あんな表情は今までの長い付き合いでも見たことがない、とても可憐なものだった。
自分自身の想い人が違うダレカに告白している。
そんな危機的な状況にも関わらず胸がざわめく程度には。
そしてその告白を受け、目に見えるほど狼狽えながらも、嬉しそうにしきりに頭を書きながら了承の返事を返す例の男。
ドラマのワンシーンそのまま体現しているような錯覚。
動揺と嫉妬。
頭の中ではその感情が渦巻いていた。が、それとは裏腹に心はプールの底にいるかのように冷たく、それでいて静かだった。
結局、今日は一緒に帰らなかった。否、出来なかった。
何食わぬ顔をして帰ればいい。俺は彼女の幼馴染なのだから。なにも気にすることは無い。そう考えても俺の体は動く事はなく、彼女と男が肩を並べて帰路につく所をただ見送った。
家に帰ってからは悶々と考えていた。
もし俺が告白していればどうなっていたのか。
そんなたらればには意味が無いことなど知っている。だが考えずにはいられず、結局一睡も出来なかった。
毎日届いていた彼女からのメールが届かなかったことを気付かないふりをして。




