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1.幕開け

「成程な、君たちか。この世から消えたモノを、まるで未だそこに在る(生きている)かのように、人間に見せることが出来るというのは」

「何だ、じいさん。未だ生きていたいっていうのか」

 

 黒猫の姿のカガが言うように、恰幅が良く、大層立派な白いヒゲをお持ちのおじいさんは、確かに長く生きて(存在して)いたと思われました。ここ、水車堂(すいしゃどう)に訪れるお客さまの多くが、お年寄り(のように見える)とはいえ、その中でも断トツじゃないかと、カガは思いました。


「言っておくが、俺らの能力(ちから)は永遠じゃない。それだけは理解してくれよ」

 先程から無遠慮なカガに――とはいっても、(はた)からみれば、まるでおじいさんに可愛がられている(?)黒猫のように見えるのですが――、おじいさんは、さして怒った様子も見せずに、

「人間相手に、確かに錯覚できるのだな? ――ならば、私の願いぐらい(、、、)叶えてもらえるな?」


「はい、ご安心ください」

――「ぐらい」とは何だ、「ぐらい」とは。

 不機嫌なカガをよそに――といっても、カガはいつもこんな感じ――、おじいさんに視線を向けられたいずみが答えると、おじいさんも一瞬虚をつかれた顔をしましたが、先程よりも更に悠然とした笑みを返します。


――「水車堂」。実に都合の良いものがあったものだな。あの愚かな人間を騙す。これが私の目的だ。あの人間さえいなければ、私はここに来ることなどなかったのだから。私は絶対に、私の願いを叶えてみせる。――たとえ、どのような手段を使っても。

 どうせ私はもう、罪深き存在なのだから。


          *           *


 あるところに、ある1人の平凡な男がいた。平凡なその男は、だがしかし、少しばかり他人(ひと)より真面目で、少しばかり正義感が強く、ごく真正直に警察官という道に進んだ。

 まあ、ある意味? 職場が「普通」ではないといえないらしいが……。とにかく、ごく平凡に家を出て、1人で暮らし、恋人もいたらしい。

 そんな(ある一部分を除いて)生活も平凡だった男だが、ある日、彼はある場所で事故に遭った。

 こうやって書いてみても、特筆すべきこともない男だが、ただ1つの謎だけが残った。

 何故、そんなところにいたのか、誰にも判らなかった。少なくとも、僕が調べた限りでは。もう、男はその理由を話すことが出来なくなってしまったから。


――何か、こう書くと死んだみたいだな。この世から消えた的な。

 だが、死んではいない。事故に遭った男は、命を落とす代わりに、

 

 記憶を喪った。


 男の名前は立石和馬(たていしかずま)。年齢は27。


 以上が僕の過去(こと)であるらしい。

始まりました。水車堂物語、3作目です。順番は関係ありませんが。

前回の最終回に続いて、いつもより短めになってます。まあ、始まりですから。その代り物語はいつもより長めを予定しています。――ちょっと待て、いつ終わる気だ!? まあ、それは置いといて、今回は今まで微妙?だった恋愛もの(っぽいもの)を書きたいと思います。上手くいくかな?

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