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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
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生徒会にて⑤

アリシア視点で継続してます。

「そうなのか? だったら俺も付き合うぞ。

 今日は俺の用事に付き合わせたようなもんなんだしな」

「マルスさんが残るのなら、ラフィも残ります」


 そう言って、マルス君とラフィさんは再び椅子に座った。


「ごめんね、直ぐに終わるから。

 会長、今日私がマルスの付き添いでここにきたのは、話したいことがあったからです」


 何かを決意したように、エリシャさんは私に視線を向けた。


「先日、会長が私におっしゃってくださったことを覚えていますか?」

「……先日?」


 なんだろうか?

 この場で改まって話すことはないと思うのだが。


「会長は『自信を取り戻したら生徒会に戻って来い』と言ってくださいました」

「……そのことですか」


 彼女がラスティーと戦った後の話だ。

 確かに私はそう言った。

 エリシャさんが生徒会に戻ってくることを期待している。

 その気持ちに嘘はない。

 ネネアも言っていた通り、現在二年生で生徒会に所属する生徒がいない。

 我々三年が卒業した後、生徒会を支える人材が不足しているという状況だ。

 去年の学年対抗戦の事故さえなければ、来年の生徒会はエリシャさんを中心に活動するはずだったのだが。

 いや、それは悔やんでも仕方のないことだ。


 だが、なぜエリシャさんは今その話をするのだろうか?


「次の定期試験の成績次第で、私は生徒会に戻れればと考えています」


 全く予想していなかった言葉が聞こえた。

 しかし、聞き間違えではない。

 私を見るエリシャさんの瞳はただひたすらに真摯だ。

 そもそも、彼女はこういった場で冗談を言うような人ではない。


「先程、ネネアに言われたことを気にしているのですか?」

「いえ、ネネア先輩に言われたからではありません。

 一年の頃、教官方の推薦もありましたが、私は自分の意思で生徒会に入りました。

 今まで投げ出したままでいましたが、出来ることなら責任を全うすべきだと考えていたんです」


 意外だった。

 いや、そう言ってしまうのはエリシャさんに失礼だが。

 彼女がそんなことを考えていたなんて……。

 真面目な彼女のことだ、責任を感じてしまっていても不思議ではないかもしれない。


「まだ生徒会の一員としてやっていける自信を取り戻せてはいません。

 ですが、定期試験で学年内でトップクラスの成績を取れたら、その時はまた生徒会に戻らせてください」


 当然歓迎だ。

 能力に問題がないなら、こちらから頼みたいくらいだ。


「勿論、私は構いません。

 成績次第では教官方の許可も取れるでしょう」


 だが、彼女は魔術の行使ができなくなったと聞いている。

 ラスティーとの戦いを見る限りだと、少しずつ力を取り戻せていたみたいだが、


「私が伝えたかったことはこれだけです」


 彼女には期待したい。

 エリシャさん自身の力も、学年内でトップクラスに優秀だったのだから。

 それに、もし彼女が生徒会に所属してくれるなら、今後マルス君との衝突は確実にさけられると考えて問題ないはず。


「わかりました。

 エリシャさん、ありがとうございます」


 自然と感謝の言葉が出ていた。

 だが、今の生徒会の状況を考えればエリシャさんの生徒会入りは光明だ。

 問題はエリシャさんの成績が奮わず生徒会に戻ることができなかった場合。

 その時の為に、どちらにしても対策を考える必要はある。


「感謝されることではありません。

 むしろ、私が謝罪しなければいけないことですから」


 エリシャさんは頭を下げた。

 そして、


「それでは、私達はこれで失礼します」


 立ち上がり軽く会釈をした。

 マルス君とラフィさんも立ち上がり、


「ファルト先輩はどうするんだ?

 俺達と一緒に来るか?」


 マルス君がファルトに声をかけていた。

 この後、一緒に食事をすると言っていたものね。


「先に行っててくれ。

 おれは後から追いかけるからよ」


 だが、ファルトはこんなことを言って、


「わかった。

 先に宿舎に着くようなら、一階で待ってるぜ」


 ファルトは軽く右手を上げその言葉に答えた。

 こうして、マルス君達は委員会室コミュニティルームを出て行き。

 ここに残ったのは現生徒会のメンバーだけとなった。


「……はぁ」


 思わず溜息が漏れた。

 気が抜けた。

 だが、それは私だけではなく、一年生――セリカとカネドの二人も同様で。

 ずっと気を張っていたのか、肩から力が抜けたようだった。

 まさかこんな展開になると考えてもいなかった。

 生徒会のメンバーを全て揃え、万全の状態で望んだつもりだったが、


「おいおいアリシア、編入生を紹介するなんて言ってたから、

 もうとっくに口説き終わってるのかと思ってたぞ!

 まだならまだで、せめて一言相談しろっての」


 ファルトから文句が飛んできた。

 まさかファルトを呼んだ上で、こんな状況に陥るなんて考えてもいなかった。


「……申し訳ありません。もっと慎重に行動すべきでした」


 言い訳のしようがない。

 素直に謝罪する。


「マルス先輩は、ファルト先輩の目から見ても、それほどの方だったのですか?」


 そう聞いたのは、一年生のセリカ・リラントだ。

 彼女は強い者に強く惹かれる嗜好がある。

 だから、ファルトのことも尊敬している風なのだが、


「ありゃ、マジでヤバいぞ」


 そんなファルトが、飄々とこんなことを言ってしまった。

 セリカは目を見開いた。

 少なからず衝撃を受けているようだ。


「……あなたの目から見ても、それほどなのですね」


 当代最強。

 大陸全土の冒険者育成機関の生徒の中で、私が天才の一人に数えるファルト・ハルディオンが。

 教官方を除けば――いや、技能スキルを考えれば、一対一であれば教官方とすら渡り合える可能性すらある彼から、これほど弱気な言葉を聞くことになるなんて。


「どんな修羅場くぐってきたら、あんな化物になれるやら。

 ウチの教官連中よりは確実に上だぞあれは」


 たった一目見ただけで、ファルトがそこまで判断するなんて。

 だとしたら、勝てるわけがない。

 ラーニア教官をはじめ、この学院の教官のほとんどは大手ギルドから派遣されたトップクラスの現役冒険者なのだ。


「ネネアが手を出したときは、あの馬鹿猫マジで死ぬんじゃないかと思ったぞ。

 マルスが思っていた以上に温厚なヤツだったから助かったが」


 ……確かに、軽くあしらわれていた。

 あそこでファルトが手を出さず、戦いが継続していたらどうなっていたかはわからないが。


「ラーニア教官が引っ張ってきたんだっけか?

 どこで拾ってきたんだかな……」


 今まで気にしていなかったが、確かに疑問だ。

 ……先日、ラーニア教官は依頼クエストを指名で受けたということで、短い期間だが学院を抜けていたことがあった。

 もしかしたら、その時に出会った生徒なのだろうか?


「実はラーニア教官の隠し子だったりしてな!」

「……それ、本人に言ったら殺されるわよ」


 ファルトの冗談に私が返答すると、部屋の中に笑いが生まれた。


「ま、冗談はさておき、今後絶対に実力行使なんてするなよ」

「わかっています」


 実力行使ができない以上、彼が生徒会に所属してくれない可能性も考え行動していくしかない。

 その場合、絶対に敵対してはいけない。

 まず、情報の委員会コミュニティを使い、マルス君に対する噂を止めなければ。

 彼の望みが友人を作ることであれば、他の生徒に恐れられるような噂はマズい。

 もし私が情報を操作し生徒に伝えたとばれれば、彼との関係に深いひずみを生むことになるかもしれない。

 今の噂は直ぐに止め、生徒会の必要性を流布しよう。

 そうすれば、彼の意識を少しでも生徒会に向けられるかも。


「……そういえばファルト先輩、ネネア先輩をどこに飛ばしたんですか?」


 小人ホビットのカネドが、ふと思い出したように口を開いた。


「ああ、あいつなら――」


 ファルトが答えかけたところで、扉の外からバタバタバタと激しい音が聞こえ。

 

 ――バン!! と叩きつけるような音と共に勢いよく扉が開いた。


「テンメェェェーファルトォォォォォォ!!!!!

 よくも噴水ににゃんて飛ばしやがったにゃぁぁぁぁぁ!!!!!」


 現れたのはびしょ濡れになった猫だった。

 ポタポタと、床に水滴を滴らせている。


「おいおい、助けてやったんだからそんな怒るなって」

「助けるつもりだったとしても、にゃんで噴水にゃんだよ!」


 どうやらネネアは、学院の敷地にある噴水に飛ばされてしまったらしい。


「はははっ、水も滴るいい猫じゃん!」

「今度という今度はマジでブチ切れた!

 ブッ飛ばしてやるからにゃ!」

「あなたたち、少し落ち着きなさい」


 この二人は、本当に仲がいい。

 一年の頃から何度も繰り返してきた。

 何度も見た光景。

 ファルトがネネアをからかい、私がそれをなだめる。

 でも結局は、


「喰らえっ!!」

「おっと――」


 拳を突き出したネネア。

 それをファルトは軽くかわし、


「もう一回、頭を冷やしてこい」

「テメ――」


 ファルトがネネアに触れた。

 すると――その場からネネアは一瞬で消えていた。


「……相変わらず、便利な技能スキルですね」

「相手にするのも面倒なときは特にな」


 ファルトは飄々と言って、


「んじゃ、おれもそろそろ行くわ。

 カネド、折角だからお前も来いよ。今日はマルスと三人で飯だ!」

「ぼ、僕もいいんでしょうか?」


 唐突に誘われ、おろおろと戸惑いを見せる小人ホビットの少年だったが、


「いいよ。ほら、さっさと行こうぜ!」


 ファルトに言われるまま、委員会室コミュニティールームを出て行った。

 これでここに残ったのは、私とセリカだけだ。


「……セリカ、私はもう少しここに残ります。

 あなたはもう、戻って構いませんよ」


 それだけ伝えて。

 私は残って、今後の対策を練ることにした。


「……わたしでは会長のお力になれないかもしれませんが、

 もし何かできることがあるなら、遠慮なくお声掛けください」

「ええ、ありがとうございます、セリカ。

 その時は是非お願いします」


 セリカの気持ちはありがたい。

 だが、今は一人で考えたい。

 一人で全てを決定するという意味じゃない。

 生徒会のメンバーに相談するのは、今後の指針を決めてからだ。

 まずはするべきことを考えよう。

 マルス君が答えを出すまで、多少なりとも時間はあるのだから。


「……では、失礼します」


 そしてセリカが部屋を出て行き。

 私は一人になった。

 静寂に包まれた部屋の中。

 私は今日の失敗を反省する。

 慢心、油断、自惚れ、思い上がり。

 全てがミスに繋がった。

 我々が束になって勝てない相手。

 相手は圧倒的強者。

 認識は既に改めた。


 今度こそ、上手く事を運ぶ為に私は思考を開始した。

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