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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
63/201

生徒会にて①

2015/0918 一部修正

 生徒会室に向かおうと席を立つと、


「マルス、この後って忙しいかな?

 時間があれば訓練に付き合って欲しいんだけど?」


 エリーに声を掛けられた。

 だが、今日の予定はもう決まっている。


「悪い、これから生徒会に行くことになってるんだ」

「生徒会? アリシア会長に呼ばれたの?」


 俺が生徒会に行くこと。

 それが意外だったのかもしれない。

 エリーは自分の用事について口にせず、さらに俺に質問を続けた。


「ああ。今朝会長に会った時、放課後になったら生徒会に来いって言われてな。

 俺も特に用事があるわけじゃないから、行くって約束もしててさ」


 聞かれるままに答えると、


「マルスさん、生徒会に行かれるんですか?」


 それはエリーではなく、ラフィの声だった。

 その声と共に、ささっと俺の傍に寄って、ギュッと腕に引っ付いてくる。


「なら、ラフィもご一緒していいですか?」

「そんな面白いところでもないと思うぞ?」

「マルスさんを一人にするのが心配なのです!

 生徒会のアリシア会長は美人な方ですから……」


 ラフィのヤツは、なにを心配をしてるんだ?

 だが、その顔は至って真剣だった。

 即断即決で自分の行動を決めたラフィとは別に、


「……私も一緒に行ってもいいかな?

 アリシア会長とは話したいこともあったし」


 少し考えるような素振りの後、エリーは言った。

 アリシアからは、一人で来いとは言われていない。

 だから、二人くらいなら連れていっても問題ないだろう。

 そう考え、


「わかった。なら一緒に行くか」

「うん」

「はい」


 俺達は三人で生徒会の委員会部屋コミュニティールームに向かうことになった。


「そう言えば、マルスは生徒会の委員会室コミュニティールームの場所を知ってるの?」


 教室を出て直ぐ、エリーに言われて今更気付いた。

 そう言えば、アリシアに生徒会の場所を聞き忘れていたな。


「もう、その様子だと知らないんでしょ?」

「ああ、場所を聞き忘れてた。でも、二人は知ってるんだろ?」


 俺が聞くと、


各委員会コミュニティは八階にあるんですよ」


 ラフィが教えてくれた。

 そうして、俺達は長い階段を上っていく。


「全ての委員会コミュニティが八階にあるのか?」

「はい。学院に正式に認可されている委員会コミュニティは全て八階にあります。

 一部、学院から部屋や活動費が与えられていない小規模の委員会コミュニティも存在しているらしいですが、それは個人の趣味レベルの活動と変わりませんね」


 歩きながら、色々と雑談をしていた。

 八階まで上るのは地味に時間がかかる。


「近いうち、戦闘バトル委員会コミュニティに顔を出そうと思うんだ。

 あそこは委員会コミュニティのメンバー以外とも決闘を受け付けているから、訓練には最適なんだよ」


 それなら俺も、一度は顔を出してみたいものだ。

 面白ければ、そのままどこかの委員会コミュニティに参加してみるのもいいかもしれない。

 委員会コミュニティについて色々話しているうちにようやく八階に着いた。


「ここが生徒会用の委員会室コミュニティールームだよ」


 真っ直ぐ進むと、正面に扉があった。

 重々しく荘厳な濃い木色の扉だ。

 取っ手が二つ付いている。

 この扉の先が生徒会らしい。


「それじゃ、入るか」


 ノックをする。が、返事はない。

 そのままドアノブを回す。

 だが、鍵がかかっているようで開かない。


「まだ誰も来てないみたいですね」

「……私たちの方が、先に着いちゃったみたいだね」


 一応、向こうが俺を呼んだわけだし、約束を忘れているということはないと思うが。


「授業が長引いてるのかな?」

「三年生になると特殊な授業もありますからね。

 でも、そろそろ一年生の生徒会メンバーの方が来られるのでないでしょうか?」


 そんな噂をしていると、背後から足音が聞こえた。

 こちらに歩いてくるのは、一人の少女と、小人ホビットの少年だ。

 少女の方には見覚えがあった。

 凛とした佇まいに橙色の髪。

 確か、


「あ――マルス先輩。お待たせしてしまいましたか?」


 そうだ。

 今朝会った少女――生徒会メンバーのセリカ・リラントだ。

 一緒にいた小人の少年は、俺達を見て軽い会釈をした。

 態度から察するに、この少年はセリカと同じ一年生のようだ。


「いや、俺達もさっき来たところだ」

「そうでしたか。お待たせしてしまい申し訳ありません。

 会長からマルスさんを生徒会室にお通しするように言い付かっております」


 謝罪の後、セリカは鍵を開け扉を開いた。


「先輩、あのそちらのお二人は?」

「付き添いだ。別に問題ないだろ?」

「……恐らく。会長からはマルスさんお一人をとは言われておりませんので」


 確認を取ると、セリカはそう言って、


「お入り下さい」


 手を扉に伸ばし入るように促した。

 エリーもラフィも一緒で問題ないようだ。

 促されるまま、俺達は委員会室コミュニケーションルームに入る。


 

 部屋の中はそれほど広いわけではなかった。

 中央には重厚感のある立派な机が置かれていて、それ以外は長机が横並びに二つずつくっついて設置されていた。

 頻繁に会議が行なわれているのかもしれない。


「……会長も直ぐに来られると思いますので、お座りになってお待ちください」


 言われて俺達は腰を下ろした。

 ラフィが俺の隣で、ラフィの隣がエリーという並びだ。

 セリカと小人ホビットの少年は入り口の隅に並んで立っている。


「会長はマルスになんの用なんだろう?」


 椅子に座って直ぐ、エリーがそんなことを言った。


「エリシャさん、そんなの一つしかないじゃないですか」


 なんとはなしに言ったエリーの一言に、すかさずラフィは言葉を返し、


「生徒会にマルスさんを――」


 ラフィが何かを言おうとした。

 その時だった。


「――失礼、遅くなりました」


 委員会室コミュニケーションルームの扉が開き、アリシアが入ってきた。

 その後ろには一人。

 猫人族ウェアカッツェの女が続いた。


 部屋の奥――重厚な机にアリシアは腰を掛けた。

 猫人族ウェアカッツェの女はアリシアの傍に立った。


「あら、マルス君以外にも来ていたのね。

 いらっしゃい、エリシアさ――いえ、今はエリシャさんだったかしら?」


 俺達の方を見てアリシアは言った。


「付き添いがいても問題なかったか?」

「ええ。一人で来いとは言いませんでしたからね」


 すんなりと了承される。

 つまり、聞かれても問題ない話ということなのだろう。


「まず、遅れてしまったことをお詫びします。

 授業が長引いてしまいました。申し訳ありません」

「ほとんど待ってないから気にしないでくれ。それで用件はなんなんだ?」


 早速聞いた。


「今日マルス君を呼んだ理由は一つです。――マルス君、あなた生徒会に入りなさい」


 アリシアの口から単刀直入に、委員会コミュニティへ誘われたのだった。

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