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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
58/201

休日の予定

2015/0913 修正

 一年のBクラスを出て左へ真っ直ぐに進み、突き当たりを右に真っ直ぐ進んでいくと、中庭へ出られる通路がある。

 そこから俺達は中庭に行くと、


「あ、いましたよ」


 緑髪の半森人ハーフエルフの後ろ姿が見えた。

 後輩の情報通り、コゼットは花壇の世話をしているようだ。


「綺麗にな~れ。綺麗にな~れ」


 草花にじょうろで水をやりながら、なにやら呪文のようなものを唱えていた。

 その音に合わせて、コゼットの肩に乗っているハムスターも、左へ右へと小さな身体を揺らしている。


「それはどういう魔術なんだ?」


 俺がコゼットに話しかけると、


「うひゃっ!?」


 驚かれ、慌てて振り向いたコゼット。

 その拍子に、手に持っていたじょうろの水が俺にふりかかった。


「お、おい、大丈夫か?」

「あ、あ~、す、すみません! すみません!」


 ペコペコと頭を下げられる。

 頭のツインテールも、それに合わせてふるふると揺れていた。

 昼休みの時といい、なんだかこの少女には謝られてばかりだ。


「そんなに気にするなって」

「で、でも……」

「それよりコゼット、俺は依頼クエストを受けたって報告に来たんだが」


 俺は話題を変える為に、依頼を受けたことをコゼットに話した。


「え? そ、それでは、マルス先輩がわたしの依頼クエストを受けてくれることになったんですか」

「ああ。一緒に来てる二人は付き添いだ」


 俺が言うと、


「コゼットさん、昼休みぶりです」


 ラフィがコゼットに声をかけた。


「あ、ラフィ先輩。先程は本当にすみませんでした。

 プルも反省してます」


 プルと呼ばれたハムスターもペコりと頭を下げ反省の意思を示した。


「いいんですよ。その話はもう済んでるんですから」


 優しい微笑みを浮かべるラフィを見て、コゼットも微笑を浮かべた。


「もしかして、ラフィ先輩も手伝ってくれるんですか?」

「はい。マルスさんを手伝えたらと考えてます」


 そう言って、なぜか俺にウィンクをしてくる。

 やはりラフィは手伝う気満々のようだ。


「ありがとうございます。

 あ、あの、そちらの狼人ウェアウルフの方は?」


 ラフィには笑顔を向けていたコゼット。

 だというのに、セイルを見るその目は潤み、頬は引きつっているみたいだ。


「こら狼男、コゼットさんを苛めないでください!」

「な、何もしてねえだろうがっ!」

「ひぃ……」


 セイルの怒声に、コゼットは泣きそうになっていた。

 目付きの鋭い凶悪顔の狼人ウェアウルフに怯えているようだ。


「ほら、やっぱり恐がられてます」


 すかさずセイルに突っ込むラフィ。


「ぐっ――す、すまねえ」

「い、いえ……こ、こちらこそ恐がってしまってすみません」


 恐がってしまってと言われ、セイルは肩をガックシ落とした。


「……セイル・ルハウルだ。あんたさえ良ければ、オレも手伝わせてくれ」

「せ、セイル先輩ですね! よ、宜しくお願いします」


 表情は硬かったが、コゼットはなんとか笑顔で答えていた。

 さて、セイルの紹介も終わった。

 そろそろ依頼クエストの詳細を確認しよう。



「それでコゼット、ハーブの採集は休日でいいんだよな?」

「あ、はい。学院の外に出ますので、先輩方も外出許可は必ず取ってください」


 外出許可?

 そんなものが必要なのか?


「外出許可っていうのは、どうやって取るんだ?

「宿舎の管理人に言えば大丈夫ですよ。

 男子宿舎であれば、今朝のメイド――ネルファさんでしたっけ?

 彼女に言えば大丈夫だと思います」


 俺の質問には、ラフィが答えてくれた。

 学院の外に出るのに許可が必要とは知らなかった。


「あ、あの、マルス先輩は学院に入ってから外出をされたことはないんですか?」

「ああ、俺はこの前編入してきたばかりだからな」

「え……そ、そうなんですか?」


 意外そうに口を開くコゼット。

 やはり編入生は珍しいのだろう。


「安心して下さいコゼットさん。

 マルスさんに任せておけば依頼クエストの一つや二つちょちょいのちょいですから」


 それはどうかわからないが、失敗するつもりはない。

 やるからには必ず達成してみせるつもりだ。


「あ、す、すみません。そういう意味ではありませんから。

 ただ、編入生というのは珍しいと思っただけで」


 ラフィの言葉を聞いて、コゼットは俺に謝罪した。


「いや、謝るようなことじゃない。

 それでコゼット、当日、何か必要なものはあるか?」

「いえ、必要なものはこちらで用意しますので。

 皆さんにはハーブの回収と護衛をお願いできればと思います」


 護衛が必要な魔物が出るとは思えないが、念の為なのだろう。


「当日の集合場所と時間はどうするんだ?」

「暗い森の中ではハーブも探しにくいので、できれば明るいうちに。

 昼食を食べた後でいかがでしょうか?

 集合場所は正門前でお願いします」

「二人はそれで大丈夫か?」


 ラフィとセイルに目を向けると、どちらも俺に頷き返した。


「……あ、そうだ」


 一つ、確認しておかなくちゃな。


「休日まで、後何日分の授業を受けたらいいんだ?」


 六日間の授業の後、丸一日休日になるというのは聞いていたが、今日が何日目なのか確認していなかった。


「今日が今月に入って五日目の授業なので、明日の授業を受ければ休日になります。

 ちなみに、今月は五月に入ってから五日目です」


 教えてくれたのラフィだった。


「わかった。じゃあ、当日は宜しくな」

「は、はい! お手数ですが、宜しくお願いします」


 こうして、俺の休日の予定が確定した。

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