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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
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購買部

 スキンヘッド。

 右目に傷。

 筋骨隆々の肉体。

 酒場の店主のような厳ついおっさんに、今俺は睨まれている。


 どうしてこうなったのか?

 そう問われたら、セイルのせいだと俺は言ってしまうかもしれない。


 授業は終わり、既に放課後になっていた。

 現在、俺達は二階にある購買部まで制服を買いに来ていた。

 視線の先で俺を睨むおっさんは、信じられないことにここの店主らしい。

 ちなみにここに来たメンバーは、俺、セイル、ルーシィ、ルーフィの四人だ。


「「飼い犬の粗相は飼い主の責任」」


 ルーシィとルーフィが、ズタズタになった服のままそんなことを言ってきたので、俺も仕方なく付いてきていた。


 ちなみに今は、魔石を使用して服の代わりにしている状態だ。


「おい、買うならさっさと買ってこい」


 投げやりに言うセイルに、


「犬が弁償ね」

「犬が弁償よ」


 それだけ言って、ジト目でセイルを見続ける双子。


「おい、そもそもテメーらが喧嘩を売ってきたからこんなことになったんだろうがっ!」


 セイルの言い分もわかる。

 わかるのだが、服を着ろと頼んだのもセイルなのだ。


「なら飼い主の方に弁償させる」

「そうね。飼い主が払うべき」


 セイルに向けていたジト目を、双子は俺に向けてきた。

 同じ顔に並んでじ~っと見られるのは、なんだか変な気分だ。

 そもそも俺は、こいつの飼い主じゃないんだが。


「悪いが、俺は金を持ってないぞ?」


 なにか仕事に就いて金を稼いだことがないから、ほぼ無一文でここに来たわけだし。

 制服がいくらなのかは知らないが、購入は無理だろう。

 そもそも、制服なんて誰か教官に言えば支給してくれそうな気がするが。


「購買ではお金はいらない」

「物に応じて依頼(クエスト)をこなすだけ」


 依頼(クエスト)?

 購買で依頼(クエスト)が受けられるのか?


「面倒な依頼(もの)ばかりだぜ。

 ペットの捜索だとか、物探しだとかな」


 セイルはそう言うが、


「面白そうだな」


 ここで受けられる依頼(クエスト)どんな内容なのかはわからないが、俺は興味が湧いた。


「な、マルス、あんたまさか――」


 もしかしたら、セイルは俺を止めようとしたのかもしれない。

 だが、もう遅い。


「あの二人が着る制服が欲しい」


 俺は店主のおっさんに声を掛けていた。


「女子生徒用の制服二つか。サイズは中サイズくらいだな」


 厳つい顔に合った厳つい声だった。

 店主はカウンターの下から二着、制服を取り出した。


「商品は先に受け取っていいのか?」

「ああ。ただしきっちり働いてもらうぞ?」


 傷跡のある右目がギラついた。

 どんな依頼(クエスト)だろうか?


「依頼(クエスト)は、半森人(ハーフエルフ)の少女からの依頼だ」


 羊皮紙を渡された。

 書かれていたのは依頼内容だった。




○依頼内容

 

・ハーブ採集

 学院近くの森林に生える様々なハーブの採集の為のサポート。 

 別々ではなく、必ず依頼者と共に行動できる方のみお願いします。

 ハーブの採集日は今週の休日。

 詳細は一年Bクラスのコゼット・サルアまで。



 ということだった。

 依頼人(クライアント)のコゼットって、ラフィの人参(さつじん)サンドを食ったハムスターの飼い主だよな?

 会った時には気付かなかったが、コゼットは半森人(ハーフエルフ)だったようだ。


「ここで受けられる依頼(クエスト)は、生徒が依頼主(クライアント)なのか?」


 俺は店主に聞くと、


「生徒だけじゃない。この学院の関係者であれば誰でも依頼(クエスト)を出すことができる」


 つまり、教官や食堂の料理人、メイドのネルファでも構わないということか


「生徒の依頼(クエスト)に対して商品を提供してるが、なにか利益があるのか?」

「……これは学院の生徒の為の訓練の一環だ。

 生徒を育てることが学院の利益に繋がる」


 なるほど。

 ここの卒業生は、将来冒険者ギルドに所属する者が多いだろうからな。

 その為の予行練習のようなものなのだろう。


「必ず依頼人の元に顔を出せ。

 なんらかの事情があり依頼(クエスト)を受けられなくなった場合は連絡をしろ。

 成否は問わないといったが、依頼(クエスト)を放棄した上で連絡がない場合は、学院を退学になるから注意しろ」


 退学か。

 どんな環境でも、信頼関係が重要だろうからな。

 報告を怠るような者は冒険者には向かない。

 そういうことなのかもしれない。


「わかった。依頼人には明日までには会っておく」

「そうしろ」


 店主から制服を受け取り、俺はそれを双子に渡した。


「流石は飼い主」

「飼い犬は使えない」


 二人は俺に微笑みを向け後、セイルにはジト目を向けた。


「……テメェら、八つ裂きにしてやろうか?」

「セイル、やめとけ。また制服を買わされるぞ」


 俺が言うと、セイルは頬を引きつらせ、深く溜息を吐くのだった。

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