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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
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選択授業③ セイルVSルーフィ&ルーシィ①

2015/0912 サブタイトル修正

 確か双子で、ルーフィとルーシィだったか?

 魔術制御の授業でやたらと目立っていたから、この闇森人ダークエルフの双子は記憶に残っていた。


「あ? なんだとテメェーらっ!」


 明らかな中傷に、牙を剥き出し怒りを露わにするセイル。

 しかし、それを全く気にもせず、


「弱い犬ほどよく吠える」

「飼い主にいいとこみせたいのかも」


 闇森人(ダークエルフ)の姉妹はくすくすと笑った。


「おい、今何て言いやがった?」


 セイルが双子に詰め寄っていく。

 だが双子の姉妹はその場から動きもせず、不思議そうな顔でセイルを見て、


「噛み付く犬は躾けがなってない」

「代わりに躾けてあげないと」


 ニヤッと皮肉めいた顔で笑う双子。

 容姿は人形のように精緻で美しい顔立ちなのだが、同じ顔で同じ笑みを浮かべているのが不気味に思えた。


「ははっ――」


 そんな双子の姉妹を見て、セイルは笑った。

 挑発が続き、セイルの怒りも絶頂に達してもおかしくないはずだが、


「代わりに躾けだ?」


 いや、やっぱりブチギレてた。

 目は血走り、額には血管が浮いている。

 どうやら我慢の限界だったようだ。


「オレも同意見だぜ。生意気なクソ黒エルフにはーー」


 セイルは右足を頭に届くくらい高く振り上げ、


「――躾けが必要だよなっ!!」


 双子の立っていた位置のちょうど真ん中に振り下ろした。

 それは当てる為の攻撃ではなく、力任せの威嚇するような一撃だ。

 双子はステップを踏むようにその攻撃をかわし、左右に分かれセイルを挟み込んだ。


「やる気みたいだよ」

「やる気みたいだね」


 セイルと双子が戦い始めても、止める者はいない。

 寧ろ、その戦いを観客として楽しもうというノリすら感じる。


 だが、闇森人ダークエルフは二人、セイルは一人だ。


「セイル、よければ手を貸すが?」

「いらねえよ!」


 一蹴された。


「オレを飼い犬呼ばわりしやがった酬いは受けさせてやる」


 セイルは双子の片割れ、右側にいた方に向かって突進した。


「馬鹿な犬ね」

「馬鹿な犬よ」


 双子はセイルに言って、


「「闇夜やみよ――視界を塞げ」」


 声を揃えて言った。


「なっ――!?」 


 途端にセイルの動きが止まった。

 そして、きょろきょろと辺りを見回し始める。


「ど、どこだ? どこに行きやがったっ!?」


 その声音からは明らかな動揺が感じられた。

 双子か何か魔術を行使したのだろう。

 直ぐ傍にいるはずの闇森人ダークエルフの姿が、セイルには見えていないようだ


「こっちよ」

「こっちね」


 ぐるぐると周囲を回り、双子はセイルを惑わすように言った。


「ぐっ、ど、どこだ!!」


 冷静さを欠いたセイルは、腕をめちゃくちゃに振り回している。

 その間に双子はゆっくりと歩き、セイルの後ろに回り込んだ。


「くすくす」

「くすくす」


 狼狽するセイル見て、嘲笑っている。


「……う、後ろか!?」


 声で方向はわかるのかもしれないが、距離感までは掴みにくいようだ。

 視界が塞がれているとしたら、接近戦主体のセイルの勝機は薄い。


「さぁ、どうやって躾けをしようかな」

「さぁ、どうやって躾けをしましょうね」


 この双子はもう勝った気でいるようだった。

 その証拠に、直ぐに相手を始末せず、勝利の過程を楽しもうとしている。

 自分たちが負けるわけがないと確信しているのだろう。


 さて、敗北濃厚のセイルに、俺は口を挟んでいいだろうか?

 さっき手を出すなと言われているから、手助けしたらいい顔はしなさそうだ。

 でも、手は出すなと言われたが、口は出すなと言われていない。

 だから、口は出させてもらおう。

 俺自身、このまま友達が負けるところを見るのは面白くないからな。


「セイル、光球ライトは使えるか?

 もし使えるなら、光球ライトを自分の顔にブツけてみろ!」


 俺が言うと、闇森人ダークエルフたちの長い耳がピクピクと揺れた。

 セイルは言われたままに魔術を行使し、手の中に形成された光球ライトを顔にブツけた。


「っ――」


 それから直ぐに、セイルは周囲を見回すと、


「テメェーら、面倒な魔術を使いやがって」


 ルーフィとルーシィを睨みつけていた。

 どうやら視界は回復したようだ。


 闇を利用して視界を塞いだなら、光を利用して闇を消し飛ばせばいいと考えたのだが、上手くいったようだ。


「……はぁ……飼い主さんは少し面倒」

「……はぁ、全くもってそのとおり」


 少しと言うわりには、心底面倒くさそうに溜息を吐かれた。


 だが、これで状況は振り出しに戻った。

 相手の手の内は一つ知れたことで、セイルがどう動くか。

 第二ラウンドを見守るとしよう。

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