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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
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選択授業① 三つの選択

2015/0912 サブタイトル修正

「次は選択授業だけど、マルスはなにを選択するか決めてるの?」


 薬学の授業が終わって直ぐ、エリーにそんなことを聞かれた。

 何を選択するのと聞かれても、


「すまん。選択授業ってなんだ?」


 俺は質問を質問で返した。

 すると、ラフィがぴょこと俺たちの前に現れて、


「マルスさんの為にラフィがご説明しましょう!

 選択授業とは授業を選択することなのです!」


 言葉のまんまの説明をしてくれた。

 だがなラフィ、それは俺にもわかってる。

 俺が聞きたかったのは、


「鍛治と錬金魔術。二つの授業から、どちらかを選択して受けられるんだ。

 鍛治の授業も錬金魔術の授業も、やることは装備の製作。

 それを道具で作るか魔術で作るかの違いがあるけどね」


 今エリーがしてくれたような、具体的な説明だ。


「どっちを選んでも物作りの授業なんだな」

「そういうこと」

「エリシアさーーじゃなかった、エリシャさん。

 もう一つお忘れです」


 エリーの説明に釘をさすように、ラフィが口を挟んできた。


「もう一つ?」

「はい。どちらも選ばないという選択です」


 つまりサボりか。

 ラフィはサボり魔なのだろうか?


「うん。ラフィさんの言う通り、選ばないという選択肢もある」


 あれ?

 意外なことにエリシャが納得していた。


「教官の方針で、鍛冶は装備に魂を注ぎ込めない者は選択してはならない。

 錬金魔術は装備を使い捨てだと考えられないなら選択してはならない。

 そういう決まりがあるんだ」


 なるほど。

 だから、どちらも選べない者がいるわけか。


「正反対の方針の授業なんだな」

「でも、その言葉の意味は、なんとなくわかるよね」

「確かにな」


 鍛冶は長い時間を掛けて一つの装備の製作に取り組んでいく。

 それは半端な気持ちで出来るものじゃない。

 それこそ魂を注ぎ込むような作業だ。


 錬金魔術は素材に魔力を送り込み装備を形成する。

 慣れてしまえば形成するまでの時間はほとんどかからない。

 だが素材に内包する魔力が切れれば、元の素材に戻ってしまう。

 確かに装備に愛着を持つ者には向かないだろう。


「ちなみに、何も選択しない場合は、自主訓練の時間になります」

「自主訓練? 好きなことをしていいのか?」

「はい。宿舎に帰って身体を休めてもいいですし、戦闘教練室で基礎訓練をしても大丈夫ですし――」


 言葉を切ったラフィが、突然俺の腕にぴったりくっ付いて、


「ラフィとデートをしてもいいんですよ!」


 上目遣いでそんなことを言ってきた。


「ら、ラフィさん! デートは訓練じゃないでしょ」

「そんなことありません。立派な訓練ですよ。

 男女でデートすると、精神訓練になるのを知らないのですか?」

「え、そ、そうなの?」


 エリー、騙されるな。

 どう考えてもラフィの嘘だ。


「デートは置いておくとして、二人は何を選択してるんだ?」


 このままだと、エリーが完全にラフィの嘘を信じてしまいそうだったので、俺は口を挟んだ。


「私は鍛冶を選択してる。

 鍛冶を極められるとは思ってないけど、鉄を打ってると心が落ち着くんだよね。

 精神鍛錬ってわけじゃないけどさ」


 騎士を目指しているエリーなら、剣にもこだわりがありそうだしな。

 なんとなく鍛冶を選んでるんじゃないかと思ってはいた。


「ラフィは自主訓練だろ?」

「実は、ラフィも鍛冶を選択してます」


 意外な答えが返ってきた。

 装備など全く興味なさそうなラフィが鍛冶だと?

 それだけでかなり驚きだ。


「可愛い装飾品を製作してるんです。

 ラフィは小物には、ちょっとしたこだわりがあるんですよ」


 そういうことであれば納得だ。

 ラフィは雰囲気的にも可愛いものとか好きそうだもんな。

 鍛冶というから、武器や防具ばかりを連想していたけど、身に付けられるものなら何を製作してもいいのか。


 二人が鍛冶の授業を選択しているなら、俺も鍛冶にしてみるか?

 だが魂を込められるほど装備品に執着はない。


 かといって、俺は錬金魔術を選択するメリットもない。

 錬金魔術は既に修得しているからだ。


 どちらも選ばない場合は自主訓練か……。


「どちらかを選択した場合でも、たまに休みを取って自主訓練にすることはできるから。 この授業は自分の趣味で選ぶくらいでいいと思うよ」


 悩んでいる俺を見かねてか、そんなアドバイスをエリーがしてくれた。


「ちなみに、鍛冶の担当教官はドワーフのドドルカ・ドルン教官で、

 錬金魔術の担当教官は、ダークエルフのリスティー・リリフル教官です」


 ラフィが言った。

 どちらの授業もまだ受けていないから、どんな授業をするのか興味はある。


 だが――


「俺は、自主訓練にするかな」

「そっか。わかったよ」


 エリーは俺の決定を受け入れ、


「え~、ならラフィも……あ~でも、ブローチがまだ製作途中なんですよね……。

 マルスさん、ラフィがいないからって浮気は絶対にしないでくださいね!」


 悩みつつ、ラフィも鍛冶の授業に向かうことにしたようだ。

 二人が教室を出て行くのを見送ったところで、


「マルス」


 セイルに声をかけられた。


「どうした?」

「選択は、自主訓練にしたのか?」

「ああ。セイルもか?」

「そうだ。それで……さ、もしあんたがいいなら、

 戦闘教練室でオレの訓練に付き合ってくれねえか?」


 一緒に訓練をしないか? とセイルは誘ってくれているようだ。

 なら、折角の誘いだ。


「いいぜ。だけど、今の時間に教練室あそこは使えるのか?」

「選択授業は、自主訓練を選ぶ生徒も多いんだ。

 だからラーニア教官が付いて、戦闘教練室を開放してんだよ」


 自主訓練なのに教官がいるのか。

 しかもラーニアとは。

 もし話しかけられたら、呼び捨てにしないように今から注意しておこう。


「とりあえず、鐘が鳴る前に移動しねえか?」


 授業の説明を聞いていたせいもあるが、教室でのんびりしすぎた。

 そろそろ授業も始まる頃だろう。


「そうだな」


 俺とセイルは教室を出て、戦闘教練室に向かった。

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