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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
29/201

放課後⑤ 生徒会長

 * ラフィ視点 *




 戦いが終わるまで、ラフィの目はマルスさんに釘付けだった。

 狼人ウェアウルフたちの攻撃を華麗にかわしていくマルスさん。

 どこか楽しそうな余裕に溢れたその表情。

 自信に溢れた瞳。

 マルスさんはきっと、自分の勝利を確信している。

 でも、それは当然のことでしょう。

 マルスさんと狼人たちでは明らかな実力差があるのです。

 埋めようとしても埋まることのない圧倒的差。

 底がまるで見えない。

 あまりにもマルスさんが強過ぎるのです。


(あぁ……)


 身悶えてしまう。

 これほどの雄に巡り合えた幸運を、ラフィは全能神ユーピテルに感謝したいくらいだ。いや、この場合はユーピテルよりも愛の女神ヴェヌスに感謝するべきかもしれない。

 これほどの雄に出会えるチャンスはもうない。

 だからこそ、何としてでもマルスさんの心を掴まなくては。

 

 でも、それよりも先に既成事実だけでも作ってしまいましょうか?

 今日にでも宿舎に忍び込み、マルスさんと一夜を共に。

 そんな淫らな計画を、ラフィは考えてしまう。


 しかし、それには問題がある。


(エリシアさんが同室なんですよね……)


 どうしたものかと考えていた時でした。

 戦いは終わりました。

 当然、マルスさんたちが勝ちました。

 ラフィの番いになるべき人が、他の雄を圧倒するのは喜ばしいことです。

 そのこと自体は喜ばしいのですが、その直後に起こったことが、ラフィにとって問題でした。

 ラフィの目の前で、マルスさんとエリシアさんがイチャイチャし始めたのです。




 * マルス視点 *




 戦いが決着し、人だかりが散っていく。


「まさか落ちこぼれが勝つなんてなぁ……」

「ああ、予想外だった」

「つ~かラスティーが情けなさ過ぎるだろ?」


 去っていく者達がそんなことを話していた。


「ったく、今日は大損だぜ」

「なけなしの回復薬が……」


 おい待て。

 賭け事に使ってたのか。

 元締めは誰だよ。


 随分と見物人が多いと思ったがそういうわけか。


 その事実を知った直後、


「お二人とも、距離が近いです!」


 俺とエリシアの間に、ラフィがグイッと身体を割り込ませてきた。

 その表情はトゲトゲしく不機嫌そうだ。


「ぁ……」


 ラフィに言われ、慌てて身を引くエリシア。

 ついでに目も逸らされた。

 エリシアの頬はまだ赤い。

 いや、さっきよりも赤くなっている気がする。

 気のせいかもしれないけど。


「全くもう。油断も隙もないです」


 唇を尖らせるラフィ。

 何を怒ってるのだろうか?


「……お二人とも、お怪我はありませんか?」


 しかし、心配はしてくれていたみたいだ。


「ああ。俺は問題ない」

「ボクも大丈夫。ちょっとダメージがある程度だから」


 あれだけの攻撃を受けたのだから、エリシアの身体は痣くらいできているだろうけど、その程度なら治癒魔術で直ぐに回復できるはずだしな。


 ラフィは安心したのか。

 ほっと一息吐いた。


「しかし……こいつら、どうするよ?」


 こいつらというのは、地面に倒れている狼人たちのことだ。

 流石にこのまま放置というわけにはいかないか?


「……ど、どうしようね」


 苦笑するエリシア。

 しかしエリシアもこのままでいいとは思っていないようだ。


「全員医務室まで運ぶか?」


 俺が聞くと、


「――あなたたちは宿舎に帰っていいわ」


 予想外のところから返答がきた。

 答えたのは黒髪眼鏡の森人エルフ、アリシアだ。


「後はこちらで処理しておきます」

「いいのか?」

「はい。ラスティーがご迷惑を掛けました。

 同じ三年として謝罪させて頂きます」


 アリシアが頭を下げる。

 やはり生真面目なヤツだ。

 自分のせいではないのに、他人に頭を下げるなんて。


「か、会長、やめてください。ボクたちは大丈夫ですから」


 慌てるエリシア。

 そういえば、アリシアはさっきも会長とか言われてたな。

 ニックネームか何かか?


「なあ、なんであんたは会長って呼ばれてるんだ?」

「……」

「……」

「……」


 この場にいた俺以外――エリシア、ラフィ、アリシア、三人の視線が一斉に俺に向いた。


「……ま、マルス、もしかして、アリシア会長のことを知らないの?」


 エリシアは目を丸くしている。

 ラフィは苦笑している。


「知ってるよ。三年でアリシア・レステントって名前だって」


 自己紹介されたばかりだからな。


「あ、いや、そういうことじゃなくて……」


 なんだというんだ?

 エリシアとラフィはちらちらとアリシアを気にしている。

 俺はアリシアを見た。

 目が合ったかと思うと、アリシアは口を開いた。


「……編入生に配慮が足りませんでした。

 改めて名乗らせて頂きます」


 俺を真っ直ぐに見つめたアリシアが、


委員会コミュニティ――生徒会の会長をしています。

 アリシア・レステントです」


 改めてされた自己紹介には、生徒会の会長――という役職が付加されていた。

エリシアとアリシア、紛らわしくてすみません。

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