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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
25/201

放課後① コミュニティ

 先程の治癒魔術の授業で、今日の授業日程は全て完了。

 それと同時に、俺の学院初日も終わった。


 今は日も落ちて夕暮れ時。

 宿舎では今頃、ネルファが夕食の準備で大忙しかもしれない。


「マルス。今日はお疲れ様」

「マルスさん。お疲れ様でした」


 エリシアとラフィが俺に労いの言葉をかけてくれた。


「ああ、お疲れ。この後は、みんな宿舎に帰るのか?」


 生徒達が一人、また一人と教室を去っていくのを見て、そんな質問をしてみると、


「宿舎に帰る人もいるし、学院の施設を使って訓練する人もいるよ。

 後は委員会コミュニティの活動をする人もいるね」

委員会コミュニティ?」

 

 エリシアが言った委員会という言葉は、俺にとって聞きなれない言葉だった。


「う~んと……どう説明すればいいのかな?」


 エリシアがラフィに目配せすると、


「委員会というのは、特定の作業をする為の複数の人で構成された組織のことです」


 ラフィがしっかりと説明してくれた。


「組織? 規模はどのくらいなんだ? どういった作業をする?」

「それは委員会によって様々です。例えば――」


・生徒会

 教官によって選ばれたトップクラスの実力者で構成されている。

 各学院との交流。

 学院行事の運営。

 学院内の最低限の治安維持。



・鍛冶

 武器や防具などの製作。

 実際にギルドや城下町、商人などに販売も行なっている。

 稼いだ金銭は学院に寄付される。



・薬師

 薬の調合を学ぶことができる。

 学院内で薬草の栽培なども行なっている。

 材料の買い出しに街に出ることもできる。


・調理

 モンスターの調理方法を学べる。

 材料は実際にダンジョンを探索し集める。



・戦闘

 戦闘訓練をする為のコミュニティ。

 コミュニティの参加者も一番多い。



・魔術

 魔術の研究、実験。

 魔法道具の開発。



 ラフィから聞いた各コミュニティの活動内容はこんな感じだった。

 学院側が正式に認可し発足されたコミュニティは以上の六つだが、それ以外にも多くのコミュニティが存在しているらしい。

 コミュニティの発足自体は生徒が自由にしていいそうだが、正式に認可されたものでなければ学院から活動費はでないそうだ。


 つまり、自腹でなら好きにしろってことだな。


 コミュニティ認可の条件は色々あるらしいが、現段階では特に興味もなかったので聞かなかった。


「二人はコミュニティには入ってるのか?」

「ラフィは入ってませんが、エリシアさんは以前、生徒会のメンバーだったんですよ」

「……解任されちゃったけどね。

 今はボクもどこのコミュニティにも入ってないよ」


 だが、生徒会のメンバーだったということは、学院内でのエリシアの実力はかなり高かったわけか。

 考えてみれば、去年の対抗戦でも一年生代表って言ってたっけ。

 魔術制御の訓練の時も、誰かが元首席がどうこう言ってたし。


「エリシアはこの学院のエリートだったってわけか?」

「……マルスがそれを言ったら、ただの嫌味だよ」


 呆れたみたいに言われてしまった。


「マルスさんが興味があるなら、ラフィが各委員会コミュニティ委員会室コミュニティルームまでご案内しますが……?」


 ラフィがそんな提案をしてくれた。

 興味がなくもないが、


「今日はやめとくかな。でも、ありがとなラフィ。もし機会があったら頼むわ」

「はい。お任せください」


 いやな顔一つせずラフィは頷いてくれた。


「もし見にいくなら休日がいいかもしれませんね」

「休日? この学院には休日があるのか?」


 俺をここに連れてきた赤毛の教官は、一切そんなことを言っていなかったが……。


「ラーニア教官から聞いてないの? 六日間の授業の後は丸一日休日になるんだよ?」


 ……全く聞かされていない。

 てっきり俺は毎日が授業なのだと思っていた。


「平日は授業もあるし、宿舎で食事する都合もあるからね。

 コミュニティで長時間の活動はできないでしょ?

 だからどのコミュニティの活動も、メインは休日にするんだよ」


 エリシアの説明に、ラフィは相槌した。


 なるほど。

 だから休日がいいと言ってたのか。


 休日があるならコミュニティの見学に行くのも面白いかもしれないな。


「それじゃあ、今日はもう帰りますか?」

「……そうだな。――と、悪い。その前に教官室に行ってくる」

「何かあるの?」

「ラーニアからまだ魔石を受け取ってなかった」

「ああ……」


 ああ……と思い出したような声を出したのはラフィだった。

 ラフィはあの時の状況を知っているので、思わずそんな声が出たのかもしれない。


 休み時間に結局受け取れなかったからな……。


「俺は教官室に行ってくるから、二人は先に帰ってて――」


 言い終わる前に、ラフィが俺の腕を取った。


「ラフィもご一緒します!」

「……了解」


 ニコッと微笑む兎人の少女の気持ちを、俺は無下にすることはできなかった。


「エリシアはどうする?」

「……う~ん……」


 迷っているエリシアの視線は、ラフィに向いた。

 ラフィは目でエリシアに何かを訴えている。

 何を訴えているのかは、俺にはわからなかった。


「じゃ、じゃあ、ボクは先に帰ってようかな」

「そうか? なら俺達は行くぜ?」

「うん。部屋で待ってるから、戻ってきたら一緒に食事にしよう」


 それだけ約束して、俺達は教室を出た。

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