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リフレVS蛇女

20181120 更新しました。

         ※




「るんるんるん~」


 ラーニアちゃんとマルス君と分かれて、ワタシは三年生の教室に向かってる途中。


(……生徒たちは無事かな?)


 ユーピテル学院には、冒険者として多くの実績を持っている腕利きばかりだから、魔族如きに後れを取ることはないと思うけど、ラーニアちゃんやワタシみたいな所謂――武闘派タイプ……というか、戦闘狂ばかりじゃないから、少し苦戦してるかもしれない。


(……もしも魔族がワタシの生徒を傷付けていたら……皆殺しにしなくちゃ)


 怒りに思考が支配されていく。


(……ああ、ダメダメ。

 気を付けないとね、冷静にならないと)


 落ち着きを取り戻そうとしていると――。


「……?」


 背後に不穏な気配を感じた。

 瞬間――。


「甘いよ」


 ワタシは振り向きざまに杖を振った。

 常人では目で捉えることはできない高速の一撃が、背後に立っていた何かを捉えた。

 はずだったのだが――


「ありゃ……?」


 陽炎のようにゆらゆらと人影が消える。


「残像か。

 ……へぇ、動きの速さが自慢なんだね」


 視界の先にいる蛇女をワタシは見据える。

 喩えで蛇と言ったんじゃなくて、本当に蛇頭なんだよね。

 神話のメデューサみたいにさ。

 本人の目もギロッてしてて、ちょっと不気味。

 しかも持っている武器が大鎌って……死神みたい。


「……いやぁ、チビっちゃいお嬢さんかと思っていたのですが……思ったよりもやりますね~」


 怖い見た目とは裏腹に声音はとても優しい。

 でも……これもきっと表面だけなのだろう。

 だってこいつ――絶対に性格が悪い。

 ワタシを見て、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。

 


「可愛らしく一生懸命走っていたので、思わず手を出してしまいましたが……反撃に合うとは思いませんでした」


「見た目はこんなだけど……一応、この学院の教官だからね~」


「そうですか。

 人間にしてはそこそこいい動きをすると思いました。

 まぁ、その程度はわたしには勝てませんけれど」


 この蛇女は、自分を圧倒的な強者だと思っているみたいだ。


「ふ~ん。

 そうまで言うんじゃ、あなたはよっぽど強いんだろうね~」


「ええ……これでも魔王様の配下である魔人の一人ですから」


「ああ、魔人って英雄に負けて引き籠りになっちゃった猿山のボスだったっけ~?」


 ちなみにこれは事実だ。

 魔王戦争で魔族側が受けた被害は大きく、態勢を立て直す為に彼らは表舞台から姿を消した。

 主であり絶対的強者であった魔王を失った魔族たちに反逆の為の一手を打つことは叶わなかったのだろう。


「……人間の分際で生意気なこと言いますね、あなたは」


「魔族ごときが、人間様を舐めないでほしいな~」


「さっき殺してきた人もそうですけど……随分と口達者なのですね」


「殺した……?」


 多分、嘘だ。

 蛇女の身体には争った形跡すら残っていない。

 ワタシを動揺させる為に、そんなことを言っているに決まってる。


「エルフの男がいたのよ。

 わたしを倒すなんて偉そうに言ってたけどか~んたんに倒しちゃった。

 ま、石化させたばかりだから――まだ生きているかもしれないけれどね」


 石化?

 状態異常の呪いだろうか?

 神話の中で描かれているけど、メデューサは石化の力を使うことで知られている。

 だが……今の話が事実であるならまだ十分に助けられる可能性はあるだろう。


「なら――さっさとあなたを倒して助けに行かないとね」


「助ける? どうやって?」


「これでもワタシは回復魔法の専門家スペシャリストだからね」


「へぇ……そう。

 でも、無理よ」


「無理かどうかは――」


 やってみれば直ぐにわかる。

 そう口にしようとした時……今更になってワタシは気付いた。

 足が動かなかったのだ。


「残念だったわね。

 もう……石化は始まっているのよ」


「――別に問題ないよ~!

 こんなの直ぐに治療しちゃえば――」


「あなたって本当に馬鹿ね……」


 ワタシを見下すように言ったメデューサが急接近してくる。

 その動きはしっかりと終えているけど、


「回復の隙なんて与えるわけないじゃないですか」


 大鎌がワタシの首目掛けて振られて、


「ぁ……」


「さよなら、おチビちゃん」


 黒い刃で刈り取られたワタシの頭部が宙を舞い、首の断面から飛び散った鮮血が廊下に散るのが見えた。

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