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炎の魔術師VS炎の魔人

20181115 更新しました。

 校舎内――大きな気配は複数に散っている。

 その中で一番大きな力は最上階にある学園長室から発せられていた。

 それだけじゃない。

 先程から、校舎内に喧騒が響き続けている。


「マルス……最上階は後回しでいいわ。

 学園長ならなんとかするでしょ」


「そうそう。

 ワタシたちは……先に生徒を救出しないとね」


 ラーニアの発言に、リフレは真面目な顔で頷く。

 なら、ここから分かれて行動したほうがいいだろう。

 学園に乗り込まれている時点で既に多くの被害が出ているのだから、早急に対処しなければならない。


「……あんたは2年の教室に行きなさい。

 あたしは1年を見てくるわ」


「ならワタシは3年生だね」


「わかった。

 ラーニア、リフレ――気を付けろよ」


「誰に言ってんのよ」


「マルス君も気を付けてね!」


 こうして、俺たちは分かれて行動を始めた。




         ※




 私は1年の教室に向かっていた。

 校舎内はあちこちに亀裂が走っている。

 それだけじゃない。

 壁の一部など完全に大穴ができていた。


(……随分と暴れまわってるみたいね)


 教室に近付くに連れて、喧騒は徐々に大きくなっていく中で、


「はあああああっ!!」


 雄叫びが聞こえた。

 それが一年の担当教官であるロニファスの声であることに、私は直ぐに気付いた。


(……応戦中か。

 ロニファスが居るなら、恐らく生徒は無事……)


 だが安堵はできない。

 そして、1年の教室に駆け付けたラーニアは教室を開くと――ブワッ!

 突然、熱風が舞った。


「――っ」


 それは普通の人間であれば肌が焼き焦げてしまうほどだっただろう。

 でも、私にはさほどダメージはなかった。

 それは炎の魔術師としての私の特性の為だろう。


「ロニファス!?」


「ら、ラーニア……さん……」


 だがロニファスはそうではない。

 彼の全身には致命傷――直ぐに治療しなければ危険と言っていいほどの火傷の跡。

 恐らくこの魔人は……炎の魔術、もしくは魔法の使い手。


「……あん? んだよ、仲間か?」


 私に鋭い視線を向ける男がいた。

 かなりの大柄――二メートル以上はあるだろうか?

 人間ではないことは一目でわかる。

 魔族――中でも魔人と言われる者たちの特徴である二本の角が生えている為だ。

 何よりも目前の相手は、今まで出会ったどの魔族とも比べ者にならないほどの魔力量を有している。


「へぇ……随分と美人な姉ちゃんじゃねえか」


 上から下、下から上へ、魔人は私を値踏みするように見つめる。


「下衆な目で見るんじゃないわよ」


「はっ、しかも性格も強気ときたか。

 たまらないねぇ!」


 魔人は私を挑発するように、舌なめずりした。

 決して挑発に乗るわけではないが……自分が負けるはずがない。

 そう思っているような魔人の態度は流石に腹立たしい。

 本来なら直ぐにでも焼き殺してやりたいけど……。


「……ロニファス……生徒たちは?」


「既に避難しています。

 ユミナ教官が同行しているので心配はないはずです……」


「そう。

 あんたは、まだ動ける?」


「え、ええ……」


「なら直ぐに生徒たちのところへ」


「し、しかし――」


「平気よ。

 私の実力、知らないわけじゃないでしょ?」


 相手が魔王の配下である魔人であることは百も承知。

 当然、今までの相手とは格が違うだろう。

 でも――私は、それでも負ける気がしない。


「……おいおい。

 勝手に話を進めるんじゃねえよ

 俺がその優男を逃がすと思うか?」


「逃がす……じゃなくて、逃がさざるを得なくなるのよ」


 私は無詠唱で魔法を連発する。

 同時に魔人に向かって駆け出した。


「ロニファス、行きなさい!」


「っ……申し訳ありません」


 謝罪を告げながらも、ロニファスが駆け出したのがわかった。


「だから逃げていいと誰が許可した?」


 一瞬で魔人はロニファスに接近していた。

 そして持っていた剣を振り下ろす。

 でも――


「私が許可したのよ!」

 

 ギン! ――剣戟の音が鼓膜を揺らす。

 魔人が振り下ろした刃を、私は持っていたナイフで受け止めて――そのまま腹部を蹴りつける。

 私の倍ほどは体重のある魔人が、床に跡を付けながら吹き飛んでいく。

 その間にロニファスはこの場を離れていった。


「……少しはやるってことか」


「さっきから上から目線だけど――私はあんたよりも遥かに上よ」


「そうかよ。

 でも、気に入ったぜ。

 その綺麗な顔が涙で歪んで、泣き叫んで許しを請うようになるまで――てめぇの〇〇〇に俺の〇〇〇をぶち込んでやるよ!!」


 卑猥な言葉を投げかける。


「懐かしいわね」


「あん?」


 荒くれ者の冒険者の中には相手が女であるから……という理由だけで、こうして見下すような態度を取る者もいた。

 でも私はこれまで――そういう奴らは全員、ぶちのめしてきた

 だから、


「覚えておきなさい。

 泣き叫んで許しを請うのはあんたのほうよ」


 私は予言と共に挑発を返した。

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