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雷帝ヨーウェ

20180704 更新1回目



 扉の先――部屋の中には中世的な顔立ちの人間ヒューマンがいた。


(……男……だよな?)


 見た目では性別や年齢はわからない……が、この男からは尋常ではない魔力を感じる。

 学園長と同様に底知れない……傍にいるだけで背筋がピリピリと痺れるようなそんな感覚を覚えた。


「……久しぶりね、ヨーウェ」


 その人物の名前をラーニアが呼んだ。


「おやおや……聞き覚えのある声だと思えば、ラーニアじゃないか。

 それにそっちの子は……バンスタインのところのリフレだったかな?」


「おひさで~す!

 2年前のギルド集会の時以来……だよね?」


「もうそんな前になるか……バンスタインは元気にしてるかい?」


「まぁまぁ元気だよ~。

 少し前まで楽しめる依頼クエストが入ってこないって嘆いてるくらいだから……まぁ、今は随分と忙しくなっちゃったけどね……」


 ヨーウェとリフレが話を始める。

 バンスタインというのは聞い事がない名前だが、話の内容から察するにリフレが所属するギルドのマスターだろう。


「そうか……まぁ、今は動けるギルドは大忙しだろうね。

 ……ところでラーニア、その少年は……もしかして――うちのギルドへの所属希望者か何かかい?」


「違うわ。こいつは教え子よ。

 前に少し話したでしょ?

 面白い奴を見つけてユーピテルに入れたって」


「ああ……何ヵ月か前に、キミが心底興奮しながら話していたっけ……。

 随分と惚れ込んでいるなぁ……とは思ってたけどこの少年がそうか」


「実力は本物よ。

 本人のやる気次第ではあるけど、間違いなく歴史に名を残すような冒険者になると思うわ」


「ほう……キミがそこまで言うなんてね……」


 ヨーウェが感心したような声と共に俺に視線を向けた。

 何を考えているのか読み切れない……が、その深い瞳に見られていると、心の中を読まれているんじゃないかという錯覚に陥る。


「マルス、この『暢気そうな男』がケラウノスのギルドマスターでこの世界に8人しかいないSランク冒険者の一人――ヨーウェ・ハイネルよ」


「暢気そうとは失礼だな……。

 これで日々、頭を悩ませながら馬車馬の如く働いているというのにさ」


 ラーニアの雑な紹介に雷帝ヨーウェは苦笑を浮かべる。

 正直なところ、少し拍子抜けしていた。

 学園長のように精悍で力強い爺さんを想像していたのだが……タイプとしては真逆の穏やかで優しそうな人物だった。


「マルス・ルイーナだ。

 ヨーウェ……さん、でいいか?」


「ヨーウェで構わないよ、マルスくん」


 椅子から立ち上がったヨーウェが俺に近付いてきた。

 そして目前に立つと手を差し伸べる。

 どうやら握手を求められているようだ。

 これはつまり……。


「ヨーウェは俺と友達になりたいのか?」


「うん?」


「握手を求めるというのは、そういうことなんだろ?」


 俺はユーピテルに入って友達にそれを教えてもらった。


「ふふっ、なるほど。

 握手は友好の証だからね……しかし、友達か……ははっ、面白い少年だなキミは」


「? そんな面白いことを言ったつもりはないんだが……」


「いや、すまない。

 私と友達になりたいなんて言う人物は久しぶりだったから……なんだかそれがおかしくて……」


「そうなのか?」


「この歳になるとね……友人というのは中々作れなくなるんだよ」


 過去を懐かしむようにヨーウェが口にする。

 ヨーウェの年齢は知らないが……見た感じはかなり若いように思う。


「そういうものなのか?」


「ああ……人それぞれ様々な事情はあるのだろうけど、大人になると多くの人たちはそうなっていくんだ」


「……そうなのか」


 なんだかそれは、少し寂しい気がする。


「勿論、キミがそうなるとは限らないけどさ……今、学生という立場でいるうちに大切な友達を――仲間を作っておくといい。

 それはキミの一生の特別な財産になるからね」


「財産……?」


「そうさ。

 信頼の置ける仲間というのは、お金を出しても買うことができない。

 だから金銀財宝などよりもよっぽど価値があるものなんだ。

 特に私たちのような仕事をしている者にとってはね」


 今の言葉はヨーウェにとっては、自分の経験から得た事実なのだろう。

 だからこそ不思議なくらい俺の心の中に、彼の言葉は入り込んできた。


「今の言葉、覚えておくよ。

 なんだかヨーウェは、ラーニアによりも教官っぽいな!」


「ちょっとマルス、その一言は余計よ!」


「ははっ。

 まぁ、これでも私はこのギルドのマスターだからね。

 人を育てる立場という意味ではラーニアよりも実績は上のつもりだよ」


「ぐっ……悔しいけど、今は何も言い返せないわ……」


「にゃははっ、ラーニアちゃんもヨーウェの前では形無しだねぇ」


「あんただって同じでしょうがっ!」


 言い争いを初めそうになる二人を尻目に、


「それで、マルスくん。

 改めてになるが、私と友達になってくれるかい?」


「ああ、勿論だ。

 よろしく頼むな、ヨーウェ」


 こうして俺はヨーウェと友達になった。

 でもなんだか普通の友達とは違う……不思議と頼れる存在という感じがしたんだ。


「さて、挨拶も済ませたところで……本題に入ろうか」


 ヨーウェに言われ、二人の教官が視線を向けた


「ラーニア……ただ世間話をする為にここに来たんじゃないんだろ?

 まだ世間的に認知されていないとはいえ、世界は再び魔族の脅威に晒されている。

 学園の襲撃事件でってまだ記憶に新しいじゃないか……その状況で戦力であるキミがわざわざ学園を離れたということは……」


「……ええ。

 学園長から依頼を受け、言伝を伝えにきました」


 ラーニアは依頼内容を話した。

お待たせしており申し訳ありません。

感想返し滞っておりますが、全て読ませていただいております。

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