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ザンスブルグの町へ

20180321 更新1回目

           ※




 魔族の一件があって以降、学園から出るのはかなり久しぶりだった。

 俺たちは今、ザンスブルグという町へ向かっている。

 そこにラーニアが所属するギルド――『ケラウノウス』があるらしい。


「……なぁ、ラーニア。

 雷帝っていうのは、どんな奴なんだ?」


「前に少しだけ話したでしょ?

 あたしの所属するギルドのトップにして、最高の冒険者の一人」


「めちゃくちゃ強いよ~。

 過去に英雄と呼ばれた人たちと比較しても劣らないくらいにね」


 ラーニアだけでなく、リフレも雷帝の事は知っているようだ。

 英雄と聞くと学園長の姿が思い浮かぶ。


「学園長と比べたらどっちが強いんだ?」


「……今であれば……もしかしたら雷帝が上かもしれないわ」


「現役の冒険者だからね。

 しかも向こうは、今が全盛期って言っても差し支えないだろうし」


 あの爺さんよりも上か……。


「……正面からやりあったとしたら……あたしが本気で殺しにかかっても、勝率は2割ってとこね」


「ワタシとラーニアちゃん、二人がかりで5割ってとこかなぁ。

 勿論、本気でぶっ殺そうとしてって話ね」


 さっきから殺すという言葉が連呼されて若干穏やかではないが、ラーニアもリフレもトップクラスの冒険者だ。

 その二人にここまで言わせるのだから、とんでもない化物なのかもしれない。


「まぁ……仮定の話だよ。

 学園長だって全く底が見えない。

 雷帝だって同じだね。

 そして、ワタシやラーニアちゃんが二人に絶対に勝てないかって言えばそうじゃない」


「ラーニアは勿論だが、リフレもかなり強そうだもんな」


「ふふ~ん。

 マルスくんはまだまだ若いなぁ。

 単純な強さって話じゃないんだよ。

 一流の冒険者はね、みんな切り札を持ってるんだ。

 そしてその切り札を見せる時は……相手を確実に殺す時だけ。

 逆に言うなら、それを防がれたら負ける時だね」


 切り札……そういえば、ラーニアも言っていたな。

 相手を確実に殺す為の一撃。

 二人とも何らかの手札を隠し持っているってわけだ。

 俺も同じだ。

 師匠アイネに使うことを禁じられているが……俺には切り札となる固有技能オリジナルスキルがあった。

 これは俺にとって切り札と言える力だろう。


「もう仮定の話はいいでしょ?

 全ての手を尽くして最後に生き残っていた方が強い……けど、それを確かめる事は多分ないわ」


「だね~。

 相性の問題もあるし」


「そうね。

 あたしたちが戦っても無駄なのと一緒よ」


「まぁね~」


 何か含みがあるような会話をするラーニアとリフレ。

 この二人の関係を俺は知らないが……随分と長い付き合いなのは間違いないだろう。


「……もし雷帝と会ったら勝負してみたいんだが……」


「そんな暇はないわよ。

 学園長からの言伝を済ませたら、とっと学園に戻るわ」


「訓練したいなら、ワタシとラーニアちゃんが相手をしてあげるよ。

 マルスくんはと~っても強いけど、ワタシたちが教えて上げられることは沢山あると思うよ」


 この間のラーニアとの訓練でも、学ぶことは沢山あった。

 だからリフレからも、多くを学べるだろう。


「まぁ、雷帝も中々の戦闘中毒バトルジャンキーだから、あんたに会ったら興味を持ちそうではあるけどね」


 一体、どんな人物なのか?

 話を聞く限り想像が膨らんでいくばかりだ。

 だが一つ言えるのは……。


(……きっと雷帝でも、師匠アイネには勝てないだろうな)


 あの人の影を超えるには、あの人を超える人間を倒さなくちゃいけない。

 でも……そんな奴は永遠に現れないのかもしれない。

 そう考えると少しだけ虚しくなる。


「どうしたのよ、マルス?」


「いや、なんでもない」


「そう……なら、あまりしけたツラ見せるんじゃないわよ」


 どうやらラーニアは、俺の様子を心配してくれたようだ。


「そうだよ~マルスくん。

 ラーニアちゃんが心配しちゃうから。

 これでも結構、生徒想いないい教官なんだよ?」


「そうだな。

 ラーニアは乱暴なところはあるが、根は優しいからな」


「なっ!? きゅ、急になに言ってんのよ!

 リフレも、余計なこと言うんじゃない!」


 ゴツン――リフレの頭部に拳が振り下ろされた。


「あぎゃっ!?」


 お陰で、リフレの魔女帽がぺちゃんこになる。


「いった~~~い!

 何するのよ!」


 仕返しとばかりに、リフレの手がラーニアの胸部に触れた。


「きゃっ――あ、あんたね!」


「ふふ~ん、きゃっ! だって~!

 きゃははっ! ラーニアちゃん可愛い~!」


「こんのっ!」


「残念~当たらないよ~!」


 ラーニアの拳を軽やかにかわすリフレ。

 そんな魔女娘を、全力で追いかけるラーニア。


(……仲がいいなぁ、この二人)


 いつもの調子で喧嘩をする二人を見ながら、俺はそんなことを思うのだった。

 それから暫く歩き続け俺たちは、無事にザンスブルグの町へ到着した。

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