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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
19/201

授業初日⑧ エリシアの魔術

15 8/24 サブタイトルを変更しました。

* エリシア視点 *




「――っ――」


 高速で迫っているはずの炎弾が、今のボクの目にはゆっくり、ゆっくりと迫ってくるように見えた。


(このままじゃ、当たる……)


 確実にかわすことはできない。

 既に選択肢は限られていた。


 一つは、魔術を使い炎弾を防ぐこと。

 一つは、魔術以外の方法で炎弾を防ぐこと。

 一つは、このまま攻撃を受けること。


(でも、この状況で攻撃を受ければ……)


 必殺の魔術ではないとはいえ戦闘続行は不可能だ。

 だとしたら、防ぎきるしかない。


(でも――)


 魔術が使えない。

 何か技能スキルを持っているわけでもない。


(なら、どうやって……)


 悔しい。

 このままじゃ負ける。

 また負ける。

 一日で二度も。

 どうして、どうしてボクは――


(どうしてボクは――こんなにも弱い……!)


 心の中で次々に生まれた葛藤。


(強くなりたい……!)


 でも、どうしたら強くなれる?

 魔術も技能スキルもないボクがどうしたら――


『そうならないと生きていけなかったから、強くなるしかなかった』


 それは、不意に脳裏に蘇ったマルスの言葉。

 マルスがこちらを見ている。

 その瞳が、私を見つめている。

 どうにかしてみろと訴えかけている。


 この学院で生き残りたいなら強くなれと言われている。

 そんな気がして――。


「――ボクは――」


 集中する。

 目前に迫る炎弾。

 失敗したら確実に必中。

 でも、今は不思議と失敗する気がしなかった。

 全身が熱い。魔力が身体に漲っている。


(久しぶりの感覚――今なら――)


「――光の障壁よ――」


 瞬間――ボクの正面に透明な壁が形成された。




* マルス視点 *




 ダンッ――という音がなり、俺が放ったはずの炎の弾が地面を穿った。

 本来その炎弾を身体に受けるはずだったエリシアは、既に跳躍から着地し俺の方を見ている。

 その表情は、なぜかやたらと驚愕しているように見えた。


「反射の魔術か。便利な魔術だな」


 エリシアは自分の魔術で、炎弾を反射させたのだ。


「え? い、今……」

「お前がやったんだよ」

「う、嘘っ……!」

「嘘って、じゃあなんでお前がそこに立ってんだよ。俺の魔術を反射させたから、今お前はそこでピンピンしてんだろ?」

「そ、そんな……それじゃ、本当に――!」


 本気で驚愕しているエリシア。

 だが、その驚愕はエリシアだけのものではなかったようで、


「あいつ、魔術が使えなくなったんじゃなかったのか?」

「で、でも、今見たよな?」


 見学していた生徒たちは今の光景に目を疑っている。

 だが、起こった事実は変わらない。


「魔術、ちゃんと使えるじゃん」


 まるでタイミングを見計らうみたいに、


 ――カーン、カーン。


 授業の終了を合図する鐘が鳴ったのだった。

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