VSラーニア①
20180211 更新1回目
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こちらキャラクター紹介となります。
学院対抗戦の開催日が迫る中。
生徒たちは日々、訓練に励んでいる。
勿論、それは俺も同様だ。
代表選手として勝利する為に、仲間たちと訓練を重ねている。
「はぁ~……でも、びっくりっすよね~」
訓練の休憩中、溜息交じりの感嘆が聞こえた。
声の主は犬人族のコルニスだ。
「どうしたんだ、先輩?」
「今日の訓練で、驚愕することはことはなかったように思うのだが?」
尋ねたのは俺とツェルミンだ。
「……違う。
コルニスは……ミストレアのことを……言ってるの……」
答えたのは、コルニスではなくイーリナだ。
「……ああ、それは確かにそうですね」
「わたしも驚きました……。
本当に突然の発表でしたもんね……」
ノノノも会話に混じる。
ミストレアの名前が出たことで、コルニスの言葉の意味を皆が理解したのだ。
「そうだな……まさか先輩が代表に戻るなんて」
「それも鬼喰じゃなくて、奪還っすよ?」
元々、ミストレアが代表選手だったのは俺たちと同じ鬼喰。
だが今回、彼女が代表選手として返り咲いた種目は、奪還だった。 しかも、ミストレアが奪還の代表になるいう発表と同時に、元々の選手が怪我で離脱になった事も発表された。
訓練中の怪我……ということだが、アリシアの話を聞いていたこともあり、何か裏があるのではないか? そんなことを考えてしまう。
「バルガと同じ種目に出場するんすよねぇ~……」
「そう……ね……。最近……二人は……一緒にいることが……多い、わ」
「そうなんすよね~。
いつからあんな仲良くなったんすかね?」
「……わからない……わ。
でも……」
イーリナは、何か気になることでもあるのだろうか?
その表情に影が落ちた。
「何か気になることでもあったのか?」
「……いえ……ごめん、なさい。なんでも、ないの……」
気になることはある。
だが、まだ確証がないから話せない。
そんなところだろうか?
「先輩方! 既に抜けた者のことを気にしても仕方ないでしょう!
さぁ、休憩は終わりにして、訓練に戻りましょう!」
「ふふっ、ツェルミンは前向きだね。
でも、その通りだ! 訓練、頑張ろう!」
ノノノの言葉に俺たちは頷く。
周りではなく、まずは自分たちのことだな。
そう思い、俺たちは訓練に戻った。
※
訓練終了後。
「マルス、ちょっといいかしら?」
「ラーニア……?」
タイミング見計らったように、ラーニアが話しかけてきた。
「少し時間をいいかしら?
学院対抗戦の開催日も近付いてきたからね。
少し、戦王の訓練をしておいてもいいのかな……なんて思ったんだけど?」
「戦王……?」
そういえば、そんな競技もあった気がするが……。
「まさか忘れてるとは言わないわよね?」
「忘れていた……が、今思い出した」
俺は鬼喰ともう一つ、戦王という競技に出場するんだっけ。
「あんたのことだから、訓練は必要ないとは前に言ったけれど……一応、担当教官だしね。一度はくらいは訓練をしておいてもいいかと思ってるんだけど、どうかしら?」
戦王は確か、実戦形式の勝ち抜き戦だったな。
その訓練ということは、
「俺とラーニアで実戦訓練をするってことか?」
「ま、そういうことね」
ラーニアとの実戦訓練か。
興味はある。
学園の教官の中では、ラーニアは相当な実力者だ。
俺の感覚としては、学園長の次……くらいのように思う。
「……そうだな。
鬼喰にもだいぶ慣れてきたところだ。
一度くらいは戦王の訓練もしておくか」
「OK。なら、今から戦闘教練室に移動するわよ」
「わかった」
そして俺はラーニアと共に戦闘教練室に移動した。
久しぶりの強者との戦闘を前に、俺は少しだけ気持ちが昂っていくのを感じる。
「あんたって、本当に戦闘狂ね」
「なんだ急に?」
「好戦的な顔しちゃってさ。
……そうね、折角だしゲームでもしましょうか」
「ゲーム?」
「もしあたしがあんたに買ったら、次の休日に少し付き合いなさい」
「俺が勝ったら?」
「あんたに、あたしが付き合ってあげるわ」
それ、俺に対してメリットないだろ?
何か用事でもあるのだろうか?
「学園の外に出るのか?」
「ええ……学園長の許可は取ってあるから」
魔族の存在も確かめられているこの状況だ。
流石のラーニアと言えど、一人で学園の外に……というのは危険があるだろう。
「わかった。いいぞ」
「OK。じゃああたしも、久しぶりに本気出しちゃおうから」
ニヤッと笑う紅髪の教官。
それは俺は言うことを聞いたことに満足したのか、それともこれから始まる戦闘訓練を楽しみにしてのものなのか。
「さて、到着ね。
いつ初めていいわよ」
ラーニアは俺に右手を伸ばし、掌を上にしてくいくい――と、指先を動かす。
かかってこい。
そう言っているようだ。
「――なら、行くぞ」
こうして――俺とラーニアの初めての実戦訓練が始まったのだった。