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20180208 更新しました。

「面白い! ならばやってみせろ!」


 あまり感情を見せることのないバルガが、ニヤっと微笑む。

 それだけこの男は自らの能力、完全防御ディフェンサーに対して自信を持っているのだろう。

 だが、これなら少し強い防御魔法と何ら変わりない。


(……さて)

 

 俺が思い浮かんだ完全防御を突破する手段は二つ。

 一つは完全防御を上回る力でぶっ叩く。

 これが最も簡単な戦い方だ。

 が、それは最悪、バルガを殺すことに繋がる。

 これは戦いではない。

 ただの戦闘訓練だ。

 だから俺が最も得意とする戦い方は出来ない。


(――なら!)


 もう一つの方法でいくしかない。

 疾駆しながら、俺は魔法を放つ。

 火の元素を利用した炎の魔弾――それを無数に生成し一斉に放った。


「無駄なことを……どれだけの攻撃を加えようと完全防御を貫くことは出来ない」

「それはどうかな?」


 俺は無数に放った炎の魔弾を完全にコントロールし、一切のずれなく同じポイントに当て続けた。


 ――ダダダダダダダダダダダダダ!!!!!


 猛烈な音を立て、魔弾が当たっては消え、当たっては消えを繰り返す。


「ふん、それでは何れ……貴様の魔力が尽きるだけだろうが?」

「それは気にするな。

 多分、俺の魔力が尽きるよりも完全防御ディフェンサーの消滅が先だ」


 俺の言葉に、バルガは眉根をひそめた。

 苛立ち……を覚えたのかもしれない。

 だが、俺は嘘は吐いてない。

 その証拠に、


「むっ……」


 完全防御を使っているはずのバルガが、後ずさりした。


「どうしたんだ?」

「馬鹿な……攻撃が徐々に……」


 今のところ攻撃を通してはいない。

 では、なぜバルガが後ずさりしたかと言えば、完全防御ディフェンサー内にある空間が狭まって来ているからだ。

 同じ個所ポイントに攻撃を受け続けたことで、見えない壁が擦り減ってきたのだろう。

 これを繰り返せば、完全防御ディフェンサーは消失する。


「わかっただろ? お前の力は便利だ。

 ただ使用するだけで、攻撃を防いでくれるんだからな。

 が――とても完璧な力と言える代物じゃない」

「ぐっ……」


 どんな力も欠点はある。 

 万能な力など存在しないのだ。


「――それとな。

 魔法をぶつ続けてるかいもあって、完全防御ディフェンサーの位置はだいたい理解した。後は……」


 俺はバルガに向かって疾駆した。

 勿論、その間も魔法は撃ち続ける。

 メキ、メキ――と何かが軋む男が聞こえた。


(……これなら!!)


 そして俺は魔弾をぶつけ続けた箇所に、大剣を叩き付けた。

 すると――パリーン!!

 鏡が弾けるような音が聞こえる。

 この音は間違いなく、完全防御ディフェンサーが破壊された音。


「馬鹿な!?」

「ほら、簡単に突破できた」


 バルガの瞳に焦りの色が浮かぶ。

 勝負はついた。

 俺はバルガ目掛けて、もう一撃――大剣を振る。


「ぐっ……」


 目を瞑るバルガ。

 だが、俺の一撃はバルガに当たることはない。


「終わりだな」


 寸止め。

 最初から当てるつもりなどなかった。

 俺は魔石に流す魔力を止めて、大剣を消した。


「……戻るわ。

 バルガ、お前は結構強かったよ。

 この学園の生徒の中では、ファルトの次くらいに」


 だが、ファルトとバルガではその実力には大きな開きがある。

 戦ってみた感想はそんなとこだ。


「じゃあ訓練は終わりだな」


 俺とバルガの戦いを見守っていたファルトが告げて、戦闘バトル委員会コミュニティでの戦いは終わりを迎えたのだった。




            ※




 戦闘バトル委員会コミュニティ頂点トップであるバルガの敗北は、一瞬にして学園中に広まることになった。


「……バルガは、負けた?」


 そしてその話は、ミストレアの耳にも届くことになった。

 学院対抗戦の代表を辞退して、彼女は部屋でくすぶっていた。

 だが、自らが戦士として尊敬していた男の敗北を知ったことで、ミストレアの中に一つの感情が芽生える。


「今、彼はどんな気持ちでいるのだろうか?」


 バルガも自分のように、自らの弱さを悔いているのだろうか?

 敗北を知ったバルガ・ガルーダと話がしてみたい。

 彼はどうこの痛みを乗り越え、成長していくのだろうか?

 ミストレアの心にはそんな想いが芽生えていた。

明日も更新予定です。

感想全て読ませていただいております!

返信滞ってしまいすみません!

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