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アリシアの推測

こちらキャラクター設定です。

http://ncode.syosetu.com/n7236dl/

「……今すぐか?」


 アリシアに尋ねる。


「時間は取らせません

 コルニスとイーリナも一緒に」


 それは予想外の返事だった。


「先輩たちは……大丈夫か?」

「……いいっすよ。

 何か事情ありって感じっすよね?」

「……構わないわ」


 こうして俺たちは生徒会室に向かった。




      ※




 そして生徒会室に入ると、


「よう、マルス」

「やっと来たか。

 遅かったニャ」


 ファルトとネネアが俺たちを歓迎した。

 だが、ここにいたのは二人だけではなく、


「――ミストレア先輩!?」


 ミストレアの姿があった。


「な、なんでミストレアがここにいるっすか?」

「……」


 コルニスは驚いていたが、イーリナは冷静だ。

 もしかしたら、自分たちが生徒会室に呼ばれた時点でミストレアがいることを察していたのかもしれない。


「私が呼びました。

 ミストレアも含めて話がしたかったのです」


 このメンバーで話――というと戦闘バトル委員会コミュニティでの件だろう。


「呼んだではなく、ファルトに連行されたに近いのだけどね」

「普通に呼んでも来てはくれないでしょ?」

「……今更何を話せばいいんだい?」


 ミストレアは自嘲するように口を開いた。

 勇ましく舞う戦姫の姿は既にない。

 あの敗北で彼女の誇りが砕かれてしまったように。


「ミストレア……なんで勝手に代表を辞退なんてしたんすか……?

 自分らに相談してくれても……」

「相談?

 何を相談しろと言うんだい?

 力なく無様に敗北したから、代表を辞めると伝えれば良かったのかな?」


 コルニスの言葉に対する強い拒絶。

 最初から語り合う言葉は持っていない。

 それだけは伝わってきた。


「……コルニス。

 今のミストレアに……何を言っても無駄……」


 イーリナも同じことを思ったようだ。


「ははっ……そうさ。

 その通りさ。

 アリシア、わかっただろ?

 私から話すことはない」


 ミストレアは立ちあがった。

 そのまま生徒会室を去っていこうと歩き出す彼女に、


「待ちなさい、ミストレア。

 勘違いしないでください。

 あなたたち三人を話し合わせる為に、

 この場を設けたのではありません」


 アリシアははっきりと告げた。


「……ど、どういうことっすか?」

「話したいのはバルガのことです」


 

 バルガ・ガルーダ――戦闘バトル委員会コミュニティのトップにして、セイルが出場する競技『奪還リキャプチャー』の代表選手。

 俺が知っている情報はこのくらいだが、俺もあの男について興味があった。

 委員会コミュニティでのあの男の行動は、どうにも引っかかるものがあったからだ。

 いくら戦闘バトル委員会コミュニティでは戦いが許可されているからといって、あの状況を止めもせず。

 それどころか、ミストレアの性格を利用し戦いを促すよう態度を見せていた。

 ルールの上での戦いであれば、確かに問題はない。

 だが……どうにも腑に落ちなかったのだ。


「それでアリシア。

 バルガがどうしたんだよ?」

「……これは確定事項ではありません。

 ですのでこの場にいるもの以外には他言無用でお願いします。

 私の推測では、バルガは代表選手を狙っています」


 狙う……?


「それは学院対抗戦の選手を排除する。

 そういう意味でいいのか?」

「はい」

「……信じらんないっす」

「……バルガが……?」


 コルニスとイーリナは小さな動揺を見せていた。

 ファルトとネネアは事前に知らされていたのか、アリシアの言葉を淡々と受け止めている。

 だが、


「はははっ!

 アリシア、何を言いだすのかと思えば……」


 ミストレアは違った。


「バルガは純粋に力を求める戦士。

 そんな姑息な真似をする男ではないよ」

「……あなたが一方的に攻撃を受けている間も、止めようとすらしなかったのですよ?」

「それは戦闘バトル委員会コミュニティでの規則ルールだろ!

 戦いを望んだのはワタシの意思だ!」


 そう。

 確かにミストレアの意思で戦いは続行した。

 だからこそ、俺も止めはしなかった。

 だが――あの場で、代表選手だったミストレアだけが一方的に攻撃を受けていたのは、明らかにおかしい。

 まるで最初から話が通っていたような――代表選手であるミストレアを追い込むような戦いだった。


「ミストレア、少し冷静になりなさい」

「私が代表を辞退したのは力不足だからだ。

 誰かにそうしろと命じられたわけじゃない!」

「あなたがそこまで追い込まれたのは、委員会コミュニティでの戦闘が原因のはずです」

「だから、その戦いに赴いたのは私の意思だ!」

「では何故、彼らはあなたを挑発するような真似をしたのです?

 まるで逃げ道を塞ぐように。

 そしてあの場にいた者たちは、なぜあなただけを集中的に攻撃したのですか?」


 圧倒的な強者を数で迎え撃つのであればともかく。

 学生レベルでは多少の力の違いがある程度。

 本来であれば誰が敵となるかもわからない状況で、怪我を負うかもしれない戦闘であれば、緊張感からピリピリしているものだ。

 だが、あの場にいた者たちが発していたのは嘲笑だった。


「あなたは罠にハメられたのです」

「違う違う違う!

 バルガは誇り高き戦士だ!

 アリシアだって知ってるだろ?

 彼の強さを!

 ファルト、キミならわかるだろ?

 強者である彼がそんな姑息な真似をする理由がない」

「……さてな。

 おれはバルガとはそこまで親しくないんでね」


 ファルトは淡々と客観的な意見を口にする。


「だがおれは、アリシアのことは良く知ってる。

 こいつが黒だと言うなら、きっとバルガが黒なんだと信じられるくらいにな」

「馬鹿な……。

 理由がない!

 代表選手であるバルガがなぜ、代表選手を狙う必要がある?」

「……それは……」


 ここで今日初めてアリシアが言葉を詰まらせた。

 確かにバルガの動機はわからない。

 あいつがミストレアをハメたのは間違いない。

 だが……その行動理由はなんだ?


「答えられないじゃないか!

 アリシア、キミがこんないい加減なことを口にするとは思ってもみなかったよ」


 失望を口にしミストレアは扉に向かって歩いて行く。

 もう話すことはないと。


「ミストレア、私の話に納得できないならそれで構いません。

 ただ、暫く戦闘バトル委員会コミュニティには近付かないでください」


 アリシアの言葉に、ミストレアは足を止め。


「……ワタシの行動は、ワタシ自身が決めるよ」


 振り返りもせずにそれだけ口にして生徒会室を出て行った。

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