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槍の騎士の矜持

更新遅れており申し訳ありません。


こちらキャラクター設定です。

http://ncode.syosetu.com/n7236dl/


 走りながら、セリカが状況の説明をしてくれた。


「ミストレア先輩は学院対抗戦の代表に相応しくない。

 戦闘バトル委員会コミュニティに所属する生徒たちがそう口にしたそうです。

 それが原因で争いに発展したようで……」


 つまり、戦って実力を認めさせることになった。

 そういうことらしい。


「でも、問題は一対一じゃないことで……」


 現在、ミストレアの実力に異議を申し立てた生徒全員と、ミストレアは一人で戦っているらしい。


「それをミストレア自身が許容したのか?」

「……はい」


 まだ話は途中だったが、戦闘バトル委員会コミュニティに到着した。

 扉を開くと騒々しいほどの歓声が耳を劈く。

 同時に目に入ったのは、複数の生徒に囲まれながらも応戦するミストレアの姿だった。

「はああああああっ!」


 円を描くようにパイクを振り、相手の接近を防ぐ。

 接近することを許せば、槍という武器の性質上、一気に形勢が不利になることを理解しているのだろう。


「あなた達、いい加減にしなさい!」


 この状況で怒声を上げたのはアリシアだった。

 喧噪が消え、場にいる生徒たちの視線が森人エルフの生徒会長に集まる。

 このまま争いも鎮まるのだろうか?

 そう思っていると、


「……いい加減にするとは何をだ?」


 決して大声ではない。

 だが、威厳のある声が虚空に響いた。


「……バルガ」


 声の主はこの戦闘バトル委員会コミュニティのトップ――バルガ・ガルーダ。


「アリシア、もう一度聞くが――いい加減にするとは何をだ?」

「何を……? 私はこの戦いをやめろと言っているのです!」


 再び激昂するアリシア。

 険悪な雰囲気が室内を満たす。

 そんな中、バルガは表情一つ変えない。


戦闘バトル委員会コミュニティに来て、

 戦うなというのはおかしな話だな」


 それどころか、淡々とただ当然のように正論を口にする。


「多勢に無勢の争い――これは戦いではなく、ただの暴力です!

 あなたはそれで、またミストレアに怪我をさせるつもりですか!」

「暴力のない戦いがこの世にあるか?

 政事まつりごとですら暴力が絡むというのに。

 それに――戦いを求めているからこそ、ミストレアはここに来たはずだ」


 アリシアから視線を移し、バルガはミストレアを見つめる。


「……ええ、バルガ。

 あなたの言う通りです」


 そしてミストレアは首肯した。

 戦う為にこの場にいる。

 それを肯定したのだ。


「ミストレア!

 あなたは先日、ここで傷を負ったばかりではないですか!」

「……ああ、その通りだ。

 だがねアリシア――ワタシは許せないんだよ」

「許せない……? 何をですか?」


 アリシアが聞き返すと、


「この学院の代表に相応しくない。

 ワタシのことをそう思う生徒がこれほど多くいたこと、

 自分の力がその程度に思われていることがさ!」

「ミストレア……」

「もしこれがマルス君やファルトなら……。

 異議を唱える生徒などいなかったはずだ!

 この状況を招いたのはワタシに実力がないからだ!

 これは――ワタシの矜持を守るための戦いなんだ!」


 ミストレアは力強い眼差しでアリシアを見つめた。


「……本人もこう言っているんだ。

 問題はないだろ?」

「っ……」

「これ以上の反論は、感情論でしかないぞアリシア」


 そう言われて、アリシアが射抜くような視線をバルガに向けた。


「さっきから黙って聞いているが、

 ……お前はどう思う、マルス・ルイーナ?」


 バルガが俺に顔を向けた。

 ミストレアも、アリシアも俺を見る。

 俺に答えを決めろと言っているようだった。


「ミストレアと一対一で戦って勝てる。

 それが証明できる生徒はいるか?」

「マルス君! ワタシはこのままやっても負けはしない!」

「……いや、このまま続けたら先輩は負けるよ」

「っ――ワタシは負けたりしない!」


 ミストレアは唇を噛み、悔しそうに俺を見つめた。

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