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家政婦の真似事④ 余談②

今回はラーニアとネルファさんの話。

 次に頭の中に浮かんだ人物はラーニアだった。

 正直、最も家政婦メイドというものに縁がなさそうな女だと思うが、だからこそ彼女がなったら面白いのでは? と思ったのだ。

 きっととんでもない家政婦メイドが出来上がるに違いない。

 まず謙虚さが足りない。

 彼女が家政婦になどなったら、寧ろ主人の命が危険なのでないだろうか?

 たとえば、家政婦になったラーニアに水が飲みたいと頼んだとしよう。


『水? 自分でも持ってきなさいよ?』


 当然こうなる。

 あのラーニアが『わかりました』などと従順に言うわけがないからだ。


『ついでに、あたしにエールでも持ってきなさい』


 逆に命令され奉仕を強要されそうな気がする。

 それでも、こちらが無理に強要しようものなら。


『ご主人様、死にたいの? そう焼殺がお好み?』


 などと言いながら、恐ろしいほど威圧感を放つ笑顔を作るに違いない。

 このラーニアに平気でものを言えるのはリフレくらいだろうか?


『ラーニアちゃ~ん、今は家政婦メイドさんなんでしょ?

 ならご主人様の言うことを聞かないとダメだよぉ~?』

『リフレ、死刑決定!』

『あぎゃああああああああああああああああっ!?』


 と、紅蓮の死神に滅殺されるリフレの姿を想像してしまい思わず苦笑してしまった。

 白と黒で構成されたな家政婦(メイド服が、ラーニアの激怒と共に鮮血に染まるに違いない。

 恐らく彼女の二つ名は鮮血の家政婦メイドになるに違いない。

 そもそも、あの暴力教官と主人の為に尽くす家政婦メイドというのがあまりにも真逆過ぎる。

 家政婦メイドではなく、暴力家政婦はかいしゃであればピッタリなのだが。


『今、失礼なことを考えたでしょ? ねえ、ご主人様ぁ?』


 恐ろしい。

 ラーニアだけは家政婦メイドにしてはいけない。

 そうだ。

 もう考えるのはよそう。


 やはり、本業でもない者がいきなり家政婦メイドになるというのは無理がある気がする。

 格好だけ真似ても、その仕事を懸命にこなそうとする心までは真似できるものではないと思うのだ。

 ネルファなら大抵のことは文句すら言わず首肯してくれそうだからな。

 それどころか、世話を焼けることに感謝されそうだ。


『ご要望などありましたら、遠慮せずおっしゃってください。

 ご主人様の世話をさせていただけることが、私の喜びですので!』


 満面の笑みを浮かべてそう口にする彼女の姿は容易に想像できた。

 しかし、ネルファが否定を口にする姿は想像できない。

 頼めばなんでもしてくれそうなイメージがある。


『なんでもかはわかりませんが、可能なことであれば全力を尽くします』


 背筋をピンと伸ばし、手を腹部の少し下に重ねて置き、一切隙のない姿で控えめながらそう宣言するネルファ

 俺は彼女以外の家政婦メイドを知らないが、その姿は家政婦メイドという象徴そのものと言っても過言でない気がする。


『私は家政婦メイドとして当然のことをしているだけですから』


 ラーニアの家政婦メイド姿を考えた後だと、ネルファの存在は癒しのようだ。


『癒しだなんて、面映いです。

 ですが私の存在が少しでも役立っているのであれば、家政婦メイドとして本望です』


 何より彼女は謙虚なのが素晴らしい。

 うん。

 やはり奉仕してもらうならネルファが一番だな。

 そう決めて、俺はラフィを見た。


「ラフィ、もし誰かに奉仕されるなら、俺はネルファがいいぞ!」

「ぐっ……そ、そうきましたか……」


 俺の言葉に、ラフィは眉根をひそめた。


「ご主人様、ネルファはダメ」

「そもそもこの場にいない」


 双子が口を開いた。

 確かにこの場にいない者のことを言っても仕方ないか。


「そうです! 双子の言う通りです!

 やはりここにいる私達の中から選ぶべきだと思います!」


 ルーシィとルーフィの発言に加勢するように、ラフィは意気揚々と言った。


「ま、マルス、別に無理に選ばなくても……」

「ダメです! ここで選んでもらいます! エリシャさんだって知りたいでしょ?」

「そ、それは……」


 知りたい?

 何の話だろうか?


「……さあ、マルスさん!

 選んでもらいますよ! ラフィですか? ラフィですよね? それともラフィですか!?」

「選択肢が一つしかないじゃないか!」


 頭から俺に突っ込んできそうなラフィを右手で抑えながら、俺はもう一度考えた。

余談終わりです。

次回から本編に戻ります。

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