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競技仲間との交流②

 競技というものを経験してわかったことだが。

 仲間との協力が不可欠な団体競技において、個々人の能力を把握しておくということは重要だということに間違いない。

 だが――本来は第三者に自分の力について教えることなど間抜けのすることだ。

 なにせ、それは自分の弱点を教えることと同義。

 だからこそ、ミストレアも話せる範囲でと言ったのだろう。


「僕は構わないが?」

「私も大丈夫です」


 ツェルミンとノノノの二人は即答だった。

 迷う必要などないと、そう思っているのかもしれない。

 競技に勝つには信頼関係が必要のはずだ。

 ここで能力を明かすことは、今後の信頼に繋がる。


「……マルス君……イヤなら……無理に……話さなくて……いいわ……」


 イーリナが気遣うように口をひらいた。

 無言でいることを否定と捉えたのかもしれない。


「なんか迷う必要あるんっすか?」

「コルニス、キミは少し黙っていろ」

「え!? どうしてっすか?」

「……人には……それぞれ……事情が……ある……」

「でも、仲間じゃないっすか、自分たち」


 表情豊かで愛嬌のあるせいか、コルニスはあまり上級生という感じではない。

 猫人族ウェアカッツェがそういう種族なのか、それともコルニスの性格なのかはわからないが。


「仲間――か。

 そうだな。

 コルニス先輩の言う通りだ」


 ここにいる者たちは、命の取り合いをするような敵ではない。

 今は師匠と過ごしていた頃とは違うのだ。


「いい……の?」

「ああ。

 ただ、話せないこともある。

 聞かれればその理由も話そう」

「それで十分だ。

 ありがとう、マルス君」


 ミストレアが感謝を示すように頭を下げた。


「話を……始めた以上……私たちから……話す……わ……」

「そうっすね。

 じゃあ、まずは自分から話すっす!」


 コルニスは意気揚々と話し出した。


「自分は風と土の二つの系統の魔術が得意っす。

 その二つに関しては中級魔術まで行使できるっすよ」

「……普通ですね」

「ツ、ツェルミン!」


 慌てて注意するノノノに。


「いや、事実っすからね。

 後は獣人らしく身体能力はそこそこってとこっすね。

 人間よりは鼻と耳はいいと思うっす。

 後、土魔術の応用には自信あるんすよ」


 コルニスは、自信ありげに微笑んで見せた。

 先程の試合で、コルニスは地中から奇襲を掛けてきたが。

 あれも土魔術の応用なのだろう。

 とはいえ、地面が崩れないよう固定したりと意外と面倒な工程が多そうだ。

 この愛嬌たっぷりの犬人族は、意外と器用なのかもしれない。


「あとはこれといってっすね。

 技能が使えるわけでもないっすし。

 頭もそんなに良くないっす」

「……自分で言っていて、悲しくなりませんか?」

「ツ、ツェルミン!!」

「まあまあ、落ち着くっすよノノノっち。

 事実っすからね~。

 だから自分は言われた命令を自分に可能な範囲でこなすっすよ。

 それは喩え君たち二年生と組んでもそうするつもりなんで、その時は宜しくっす!」


 この軽い発言に、真面目なツェルミンは幽霊(ゴースト)でも見たかのように目を丸めた。

 呆れて言葉も出ないと言った様子だ。

 確かに頼りない発言ではあった。

 だが、コルニスは自分の能力を正しく理解しているようだ。

 少なくとも指揮官向きではない。

 それを自分で理解しているからこそ、恥ずかしげもなく宣言できたのだろう。


(……チームを組むのであれば、コルニスのような生徒が行動しやすいかもしれないな)


「自分の方からは以上っす。

 何か質問は?」

「競技と直接関係することではないのですが、

 差し支えなければ成績をお聞きしてもいいでしょうか?」


 躊躇いつつもノノノが尋ねた。

 能力を判断する材料にしたいようだ。


「今回定期試験は全体で中の中っす。

 実技は中の上くらいだったんすけど、筆記は下から数えた方が早いぐらいだったすね」

「芳しくはないのだ――ですね」

「正直、なんで自分が選ばれたのか、自分でもわからないんすよね」


 両手を重ね頭の上に置くコルニス。

 暢気に笑っているが、コルニスにしても二年生よりも実力があるということなのだろう。


「では、次はワタシが話そう。

 技能は持っていないが魔術はそれなりに得意だ。

 だが、火、水、土、風、光の五系統で魔術を行使できる。

 火と水の二に関しては中級魔術まで行使可能だ。

 それと競技で使うことはないかもしれないが、得意武器は槍だな」

「ミストレア先輩は優秀なのですね……」

「優秀? ワタシより優秀な者など、三年には多くいるぞ?

 実際、成績は中の上か上の下といったところだよ。

 三年には上級魔術を行使できる者もいるからな」


 傲慢なツェルミンが賞賛していた。

 しかし、ミストレアは驕りのない返答をした。


 個人の才能にもよるのだろうが、余程才に欠けていなければ中級魔術までは努力で到達できる領域だと師匠から聞いたことがある。

 つまり、努力を怠ることなく長い年月を掛ければ中級魔術までは行使が可能だということ。

 だが――上級魔術以上は才能の領域になるらしい。

 才能がなければ行使することは一生不可能。

 努力ではどうにもならない領域に入るのだそうだ。


 実際に行使してみればわかるが、中級と上級では効果範囲や威力がまるで違う。

 上級のさらに上――最上級魔術ともなれば、国家規模の戦争をする際には非常に重宝されるであろう対軍用魔術と言っていい。

 そもそも、現代の魔術師の中に最上級魔術を行使できる者がどれだけいるのかという話ではあるのだが。

 その分、消費する魔力量も多く、魔術を行使するまでの過程も長く面倒な為、対人用であれば中級までの魔術で十分だろう。


 余談ではあるが、魔術は初級、中級、上級、最上級の四つに分けられる。

 これらのランク分けされた魔術とは別に、合成魔術や固有魔術、精霊魔術や禁呪と呼ばれる魔術も存在している。

 ちなみに、どれも魔術である以上、媒介が必要な点は共通だ。


「ワタシに他に質問はある者はいるかな?」

「槍はどの程度扱えるのですか?」

「正直言うと、魔術よりも槍が得意だ。

 ワタシの基本戦術は魔術で拘束したのちに、槍で殲滅だからな」


 ノノノの質問に対して、凛々しい表情のままミストレアは微笑んだ。

 槍の扱いには相当な自信があるようだった。

更新遅れていてすみません。

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