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デモンイーター(訓練)①

 学院の敷地中央の噴水前には、俺たち鬼喰デモンイーターの代表選手を含めた、十数人の生徒が集まっていた。

 代表選手以外のメンバーは、訓練に手伝ってくれる生徒だそうだ。

 主に二年生と一年生が多い。

 未来の代表候補たち――ということなのかもしれない。


 しかし、これだけの生徒がいるというのに、俺たちはガヤガヤと賑わっているのみだった。

 未だに、鬼喰の代表教官であるラーニアが来ない為、手持ち無沙汰なのだ。

 噴水から噴き上がった水が、陽射しに照らされキラキラと煌いている。

 本来なら授業が始まっている時間なので、のんびり噴水を見ている場合ではないのだが。


「ラーニア教官は何をしているのだ!?」

「色々、準備をしてるんじゃないかな?」


 苛立たしそうに足踏みをしているツェルミンを、ノノノは柔和な笑みを浮かべながら宥めていた。


「後輩くん、落ち着くっすよ。

 常に心にゆとりを持っておくべきっすよ」


 そんな言葉を口にする犬人族のコルニスは、子供のように純朴な顔でツェルミンの肩をポンと叩いた。


「そうだぞ、ツェルミン君。

 コルニスの言う通りだ。

 この程度の事で心を乱してどうする?」

「……試合で……冷静さを……失ったら……負ける……よ」


 先輩二人にも、ツェルミンは軽い訓戒くんかいを受けていた。


「む……た、確かに余裕を持つことは大事だと思いますが……」

「まあまあツェルミン。

 ラーニア教官だって忙しいんだよ」

「……そうだな」


 口をヘの字に曲げながらも、ツェルミンは渋々といった様子で納得した。


「遅くなって悪かったわね」


 それほど待たずに、ラーニアはやってきた。


「予め用意しておくつもりだったんだけど、準備に時間が掛かったわ」

「準備? 死旗デスフラッグのような道具を使う競技じゃないんだよな?」


 見たところ、何か持っているようには見えなかったが。


「これを作ってたのよ」


 ショートパンツのポケットをガサガサと漁り、数枚の白い羊皮紙を取り出した。

 その紙は四角く折りたたまれている。


「この紙にはそれぞれの、勝利条件が書いてあるわ。

 今から渡すけど、まだ内容を確認するんじゃないわよ。

 確認後もその紙は捨てないこと」


 言ってラーニアは代表選手六人に、その紙を手渡していった。

 受け取っても、折られた紙を広げず。

 俺たちは担当教官に目を向けていた。


「チーム分けだけど、まずは三年と二年のチームに分かれて試合をしてもらう。

 集まってくれた他の生徒にも競技に参加してもらうから」


 俺、ツェルミン、ノノノ。

 ミストレア、イーリナ、コルニス。


 三人ずつのチームに別れて。


「渡した紙には勝利条件と共に、誰が鬼かも記載されているわ。

 昨日の説明で当然理解しているとは思うけど、その紙は仲間にも見せるんじゃないわよ。

 特に鬼になった生徒は気をつけなさい。

 じゃあ、勝利条件を確認してもいいわよ」


 許可が下りて、俺は四つ折りされた紙を開いた。

 紙を手でビリビリ破いたのか、開いた紙の上下がギザギザになっていた。

 そんな乱雑に引き裂かれた紙には。



◯勝利条件

 自分のチーム以外の、三人の選手の勝利条件を確認すること。

 ただし、直接攻撃をしてはならない。


 と書かれていた。


(……ラーニアのヤツ)


 誰に何を渡すかまで含めて、勝利条件を考えていたようだ。

 攻撃をさせないというのは、競技の難易度を向上させる為だろう。

 そして、俺が鬼でなかったということは、ツェルミンかノノノが鬼ということで。


(……試合に負けられない以上は、鬼であるどちらかを守りながら戦う必要もあるのか)


 基本的には単独で行動するのは避けた方が無難。と考えていたところで、ツェルミンやノノノと目が合った。

 当然、紙に書かれていた内容についてお互い触れることはなく。

 三年生の三人も紙を確認すると直ぐに、何もなかったかのように顔を上げた。


「確認したわね。

 それじゃ、あんたたちは一旦そのまま待機。

 代表選手以外の生徒はこっちに集まりなさい」


 ラーニアは手招きし生徒たちを引き寄せた。

 それから集まってきた生徒たちにいくつか話をして、四つのチームを作った。

 その後、俺たちに渡したように紙を渡し。


「これで全部で六つのチームが出来たわね。

 じゃあ、開始位置を適当に決めるわよ」


 それぞれのチームが開始位置を告げられた。

 俺たちのチームは男子宿舎前からのスタートとなった。


「少ししたら、空に向かって炎の魔術を放つわ。

 それが試合開始の合図だから。

 じゃあ、全員移動開始!」


 ラーニアの掛け声と共に、俺達は移動を開始した。

 歩きながら。


「少し作戦を考えておこうか」

「うむ、そうだな。

 作戦の相談をする上で、発言には気を付けてくれ。

 間違っても自分の渡された紙の内容に触れるような話はしないでくれよ。

 それを理解した上で相談だ。

 最終的に三つの勝利条件を満たす為に動くことになるが。

 どうする? 他のチームとの協力は必要か?」


 お互い勝利条件を知ることはできないが、直接的且つ、相手にバレない範囲での相談なら問題ないようだ。


「協力はあったほうが楽にはなるが……判断が難しいな」


 手を組んだとしても、当然裏切られる可能性だってある。


「……まずはチームメイトだけで行動すればいいんじゃないかな?

 そうしてお互いの勝利条件を目指す」

「やはりそれが無難か。

 確実に信じられるのはチームメイトだけだからな」


 全員、意見は一致していた。


「では、試合開始と同時に他チームを探す為に行動するということでいいか?」

「うん。問題ないよ」

「ああ」


(……うちのチームは、全員が敵チームの選手に接触する必要のある勝利条件なのかもしれないな)


 待機や敵との接触を避ける者がいない以上、その可能性は高い。

 俺達は話し合いながら、試合開始後の行動を決めた。

文字数少なめですみません。

余裕がある時に、もう少し書いて一気に更新できればと思います。

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