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学院対抗戦――参加競技決定②

鬼喰(デモンイーター)は、多人数参加型の競技だ。

 学院対抗戦の全競技の中で、最も多くの選手が同時に参加する競技になっている」


 俺たち二年生の顔を順番に見回し、ミストレアは聞き取りやすい滑舌で一言一言はっきりと言葉を口にする。

 その為、彼女の言葉は不思議と記憶に刻まれていった。


◯競技内容

 各チームの必要人数は三人。

 各学院は二チームまで参加することが可能――最大参加人数は六十人。

 この競技に参加する者には紙を渡される。

 紙には各選手が試合に勝利する為の条件が書かれている。

 その勝利条件をチームメイトに口外してはならない。

 チームメイトに勝利条件を知られた場合、選手は失格となる。

 またチームメイトの中に一人、鬼と呼ばれる存在が混じっている。

 鬼は、自分が鬼であることを自分以外の者に知られてはならない。

 鬼だと知られた場合、またその鬼が何らかの理由で退場になった場合、そのチームの敗北が決定となる。

 自チームの鬼が退場になる前に、勝利条件を三つ揃えたチームの勝利となる。

 相手を死に至らしめるような致命傷を与えてはならない。

 ただし死なない範囲での攻撃は問題なしとする。


 以上が、ミストレアが説明してくれた鬼喰の競技内容だった。


「……なんだか面倒そうな競技だな」


 死旗の時も感じたが、単純に敵を倒せばいいわけでないのが問題だ。


「うむ。

 勝利条件がそれぞれ異なっているのが面倒でならんな。

 言い方は悪いが、実力以上に運の要素が強いではないか」

「そうだね。

 これって勝利条件次第では、同じ学院の生徒と戦う可能性があるってことでしょうか?」


 ノノノが普段は見せない難しそうな顔をして尋ねた。


「可能性としては十分にあるだろう。

 だが、基本的には同じ学院の生徒は仲間と考えて差し支えないはずだ。

 ちなみに、去年のワタシの勝利条件は最後まで鬼だとバレずに生き残ることだった」

「試合の結果はどうだったんだ?」


 俺が問うと。

 ミストレアはうぐっと口を閉ざした。

 先程まで流暢に語っていたのが嘘のように、苦々しい表情をしている。


「……全二十チーム中……十八位……」


 代わりに答えてくれたのはイーリナだ。


「下から三番目じゃないっすか。

 って、自分は参加してないんで、あんま偉そうなことは言えないっすけど……」

「不甲斐ない成績だったのは自分が一番わかっている。

 先輩方にも迷惑を掛けた」


 苦虫を噛み潰したような顔をしているミストレアの顔には、後悔の念が浮かんでいた。

「……ちなみに、私のチームは……七位……」

「そうなのか?」


 俺は思わず目を見張った。

 すると、右手でⅤサインを作るイーリナ。

 黒髪で顔が見えなかったが、どこか誇らしそうだった。


「……イーリナ先輩は、意外と凄いのだな!」

「ツェ、ツェルミン……意外とは余計でしょ。

 でも、去年七位なら今年は三位以内に入れるかもしれませんね!」


 だが、意外だとツェルミンが言うのもわかる。

 見るからにミストレアの方が優秀そうだからな。


「ふふっ……レアは……本番に弱いの……」

「ぐっ……こ、後輩の前だぞリナ。

 あまり恥をかかさないでくれ……。

 だ、だが――だからこそ、今年の雪辱は晴らしてみせる!」


 拳を胸に当てたミストレアは、不退転の決意を表明しているようだった。

 否定しないということは、本番に弱いというのは事実なのだろう。


 それにしても。


(……全くタイプの違う二人だが、ミストレアとイーリナはかなり仲がいいようだ)


 お互いを愛称で呼び合っているくらいだからな。


「てな感じで、この二人は相性抜群なんで、一緒にチームを組む時は邪魔しないで上げてくださいっす」

「三人チームだからな。

 誰が二人と組むかが重要なポイントになりそうではある」

「え? もうミストレア先輩とイーリナ先輩の二人が組むのは決定なの?」


 仲が良いということは、それだけで連携が取れるようにも思えるが。


「ちょっと待て。

 チームはラーニア教官が訓練中に見極めると言っていただろ」

「……私は……別にレアと一緒で……いいのだけどね」

「いや、ワタシも構わないのだが。

 勝つ為に最善のチームが組めればいいと思っている」


 当然、二人は組むことを拒んでいるわけではない。

 ただ勝つ為に最善の選択を選びたい。という考えは理解できる。

 俺たち六人は、ラーニアに顔を向けた。


 ラーニアは胸を押し上げるように腕を組み、微動だにせず立ち構えて面白そうに俺たちを観察している。


「あら? もう話は終わり?

 もう少し親睦を深めておいてもいいのよ?」


 なんて暢気に返事をするラーニアに。


「ラーニア――教官。

 この後、早速訓練するのか?」

「いえ、今日はこのまま解散よ。

 明日から午後の授業が学院対抗戦用のメニューに変更になるから。

 授業開始と同時に、敷地の中心にある噴水前に集合。

 いいわね?」


 俺たち六人全員に、ラーニアは確認を取った。

 そして、全員の首肯を見ると。


「じゃあ、もう今日はもう解散していいわよ。

 勿論、この後さらに親睦を深めるのも自由ってことで」


 言われるままに。


「……では、ワタシたちも今日は解散にしよう」

「ええ……そうね。

 ねえ、マルス君、私と……今度、お話をしましょう」

「? ああ、別に構わないが」


 何を話すのかは謎だが。


「そう……。

 ……嬉しいわ。

 では……近いうち……あなたの委員会に……遊びに行くわね」

「ああ、そういうことか。

 なら、歓迎するぞ!」


 要するに、イーリナは俺たちに相談事があるということなのだろう。

 俺の設立した委員会――『交流』は来る者を拒まないからな。

 困ったことがあるのなら、是非相談に乗ろう。


「自分も、怪我しない程度に、全力でがんばるっすから」

「僕がいる以上、先輩方も大船に乗った気持ちでいて下さい!」

「も~ツェルミン、またそんな大口を……」


 終始和やかな雰囲気ムードのまま解散した。


 さて、この後どうするか。

 エリーやセイル、ルーシィとルーフィの参加する競技は、まだ話が終わっていないようだ。


(……みんなが終わるのを待つか)


 などと思っていると。


 そういえば、まだ戦王バトルロイヤルについて説明を受けてなかったな。

 ラーニアが話をしなかったということは、今は鬼喰の方に集中しておけということなのかもしれないが。

 エリーたちの話が終わるのを待っている間に、ラーニアから戦王の説明だけでも聞いておくか。


「ラーニア、戦王バトルロイヤルについても話を聞いておきたいんだが」

「あ――そうだったわね。

 話をするのを忘れてたわ」


 どうやら素で忘れていただけのようだった。

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