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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
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喧嘩するのも友達らしい

「そんな理由で、二年と三年が試合をすることになったんだ……」


 教室に着いて直ぐ。

 俺は四人に、ラーニアとリフレの喧嘩に巻き込まれるまでの話を伝えた。


「教官の争いに、生徒を巻き込むなという話ですね」


 エリーもラフィも呆れ口調だった。


「あの二人、去年も喧嘩してた」

「喧嘩っていうか、殺し合い?」


 殺し合い?

 あの二人は、実は仲が悪いのだろうか?


「ラーニア教官とリフレ教官は、学生時代からの友達らしいから。

 かなり親しいみたいだけど……喧嘩する時は全力なんだよね」


 あの二人は学生時代からの友人だったのか。

 年齢は違うらしいから、先輩と後輩だったのだろうか?

 それとも別の学院で知り合ったのだろうか?


「友達なのに殺し合いになるのか?」

「……あの二人にとっては、ちょっとした小競り合いってとこなのかもしれないね」


 小競り合いで殺し合いをするような関係でも友達と呼べるものなのだろうか?

 やはり俺はまだ、友達という存在に対する理解が足りていないようだ。


「……友達とは奥が深いな」

「マルスが誤解しないように訂正しておくけど、

 普通は友達同士は仲良くするものだからね。

 勿論、喧嘩することもあるかもしれないけど」


 困ったような笑みを浮かべながら、エリーはそんなことを言った。


「喧嘩……か」


 ラーニアとリフレは随分といがみ合っていたようだけど。


「なぁエリー、なぜ友達なのに喧嘩などするんだ?」

「え……?」


 俺が疑問をブツけると、エリーは間の抜けたような声を出した。

 まるで俺の疑問が突拍子もないことだったように。


「それは……一緒にいればどれだけ仲が良くても衝突することはあるから」

「そうなのか?」

「そう……だと思うけど……」


 銀の双眸を伏せ、自信なさそうに答える銀髪の少女。

 友達というのは、お互い助け合うものではないのだろうか?


「では、俺とエリーも喧嘩をする可能性があるのか?」

「それは……」


 エリーは言葉を濁した。

 だが、それは肯定ということなのかもしれない。


「俺とエリーが争っているなんて、想像もできないがな……」


 そう伝えると、エリーは伏せていた顔を起こした。

 銀の双眸が俺を捉え、彼女が何かを言おうとした時。


「ルーシィとご主人様は喧嘩しない」

「ルーフィとご主人様も喧嘩しない」


 双子の姉妹が交互に口を開いた。

 二人はエリーのように迷う様子はなかった。


「マルスさんと双子が喧嘩することはあっても、

 マルスさんとラフィは永遠にラブラブですからご安心ください。

 なんなら、ラフィの愛情を今直ぐにでも証明してみせますよ!

 さぁ医務室に移動しましょう!」


 ラフィが満面の笑みで、俺の腕を引っ張ってきた。


「兎の今の顔は卑猥」

「発情兎はマルスから離れる」

「いいですかそこの双子!

 最近マルスさんのハーレムに加わったのだから、

 ここは先輩であるラフィを立てなさい!」

「「順番とか関係ない」」


 白い兎と黒い森人エルフが言い争いを始める中。


 カーン! カーン! と始業を知らせるベルが鳴り。


「――あんたら! さっさと席に着く!」


 それに合わせるように赤髪を揺らしながら、我らが担当教官がドスドスと教室に入ってきた。

 鋭い目付きがいつも以上に機嫌が悪そうに細められ、見るからに機嫌が悪いとわかる

 絶賛ラフィや双子の姉妹も、そんなラーニアを見て席に戻って行った。


「あんたたち、喜びなさい!

 今週いっぱい、学院対抗戦の訓練をするわよ!」


 教室に入ってきて早々、捲くし立てるように三年との決闘の件が伝えられ、クラス中から戸惑いの声が上がっていた。

 そんな中。


「マルス」


 不安そうな声が俺の耳に入った。

 エリーの伸ばされた手が、俺の肩に触れて。


「あのね、さっきの話しだけど。

 ……私だってマルスと喧嘩なんてしたくないよ。

 でも、関係が深まっていけば、喧嘩することもあると思う」


 小声だったけれど、今度は迷うことなく、白銀の少女は自分の想いを口にした。


(関係が深まれば……か)


 みんなのことを知っていけば、もっと仲良くなれるのではないのだろうか?

 そんな疑問が思い浮かんだのだけど。


「でも、マルスと私だったら喧嘩をしたとしても、その後にもっと仲良くなれると思う」「……そういうものなのか?」

「うん。きっとね」


 エリーは自信に満ちた表情で肯定した。

 どうしてなのかその理由はわからないけれど。

 もしかしたら、近い将来分かる日が来るかもしれないけど。


「でも、ずっと仲良くいられたほうがいいな」

「それは勿論、仲良くいたいよね。

 だけど、本心でブツかって喧嘩ができるんだとしたら、喧嘩の相手はきっとその人にとっては大切な友達なんじゃないかな?」


(喧嘩の相手が大切な友達……)


 エリーは難しいことを言うんだな。

 まさかラーニアとリフレの事が切っ掛けで、友達について深く考えることになるなんて思っていなかったけど。

 しかし、まだまだ友達についての理解が足りていないのはわかった。

 今後、もっと勉強が必要だな。

 やはりその為に委員会コミュニティの設立は必要だ。


「あんた達! 仲がいいのは結構だけど、あたしの話を聞いてんでしょうね!」


 ラーニアの叱責が飛んできて、周囲の視線が俺とエリーに集まって。


「す、すみません」


 途端にエリーの頬に紅が差した。

 凛々しい容姿の銀髪の少女が照れた姿は、男子生徒たちの目を引いていた。


「ハーレムを作ってるってマジなのかな?」

「エリシャちゃんにラフィちゃん、ルーフィとルーシィまでハーレムの一員らしいぞ」

「種族関係なし!? う、うらや――ましく……なんて」


 なぜか一部の生徒から、敵意の籠もったような視線を向けられたのだけど、俺と目が合うとわざとらしく目を逸らしてしまった。

 一体なんだというのだろうか?


「とにかく! 今から玄関口に行くわ。

 学院の庭を使って、死旗デスフラッグの訓練をするわよ!」


 そんな指示が下されて。

 俺達は玄関口に向かうのだった。

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