1日目③
あの後、俺は1時間ほど歩き続けた。いや、それ以上かもしれない。真っ暗だし、頼りになるのは光球だけだからな。しばらくすると、トンネルに入った時と同じ空間の場所が見えてきた。さっきもあったのでこれで2つ目だ。
すると、パァン、と破裂音と思われる音が聞こえた。この音は鉄筒か?なんて考えてるとまた、破裂音が響く。
光球を消し、壁に隠れながら出口を見てみると、あの黒づくめの奴等がいた。数は二人。奴等は手のひらサイズの鉄筒を、目の前の男子に向けていた。その男子は酷く怯えており、ひざまずき、両手を頭の後ろで組んでいる。彼の両隣には、同じ服装をした男子二人が倒れているのが見えた。まさか鉄筒で殺したのか?
取り敢えず、黒づくめの奴等が二人だけだったから、俺は火の魔法で奴等の頭全体を燃やす。
一瞬、奴等は何が起こったか理解出来ていなかったが、やがて、
「「アアアアア゛ア゛ア゛ッ!!」熱い熱い熱い熱い!!」
なんて断末魔を叫んでいた。声も出せなくなり、倒れた所を見計らって、俺は聖カシミア樹の杖を逆さにする。
俺の使っている「聖カシミア樹の杖」、本来なら「聖カシミア樹の剣」という木剣なのだが、俺がそれをひっくり返して、無理矢理「杖」として使っている。理由は特にない。
杖を剣に持ち変え、魔力を注ぎ込む。すると氷の結晶があっと言う間に成長し、長剣のように形作られていく。そのまま剣を降り下ろし、二人の首をはねる。
一仕事終えた気分な俺は、助けた男子に向き合う。その男子は、あんぐり口を開けていた。
「おい、大丈夫か?」
かなり放心状態だったから、揺すってみる。
そして、何か気づいたのか、はっ、として、
「今の魔法ですか!?」
開口一番そんなこと聞いてきた。
男子の名前はショウゴと言った。年は17だという。ショウゴから様々な事を聞いた。
ここは「ニホン」という国の首都である「トウキョウ」だと言う事、この世界は魔法ではなく科学が発達した事、今はテロ組織「HEADER」が侵略している事、さっきの黒づくめの奴等もメンバーだという事。
俺も今までの経緯を話す。ショウゴは真剣に俺の話を聞いていた。
その後、互いに色んな質問をしては、答える。
あらかた話終えた頃、ショウゴが頼んできた。
「友達を供養したいです」
俺は黙って頷く。ショウゴは友人の服から何か取り出した。二人が生きた証だと言う。そのまま、お願いしますと言われ、俺はショウゴの友人二人に向き合い、呟く。
「汝らの生涯、まさに唯一無二の宝なり。全知全能の神よ、汝らと汝らの宝、天の国に誘う事を願わん」
そして、火をつける。ショウゴは火が消えるまでの間、ずっと手を合わせ、静かになみだを流していた。
「ゼッテー生き残ってやる」
そう、誓って。
火が完全に消えた後、俺は「HEADER」の二人の荷物を確認していく。んー、食糧はほとんど無いな。
ショウゴはショウゴで、銃とやらを集めていた。何をするのか聞いてみると、
「ちょっとした護身用」
だと言う。
そろそろ腹も減ってきたし、魔力も回復したい。と言う事で今日はこの辺で休もうと思う。
「そういや、魔力ってどうしてるんですか?」
食事中にショウゴがそんなことを聞いてきた。
「魔力ってのは水と同じようなもんだ。使えば減るし、貯めれば増える。だから含有魔力量の多い植物、又はそれで出来た食べ物を口にすれば魔力は回復する」
「??」
分かって無いな。
「つまり、パンで魔力を得るって話だ」
なるほど、と言って食事を続ける。
しかし実際のところ、別に食べたり飲んだりしなくても、空気に含まれる魔力で回復する事だって出来る。だが、それではかなり効率が悪い。半日の呼吸でパン一個と水200mlの魔力量が含まれる。そのため、食事も大事なのだ。
それにしても、硬いな…、これ。
食事も終わり、睡眠を取ろうとしたとき、
「見張りしなくていいんですか?」
「メンドくせぇ」
しょうがない、アレやるか。
作業開始から10分、防御魔法陣の完成だ。
ショウゴは不満そうな顔をしたが、俺はあえて無視する。
今日は色々ありすぎて疲れた。とっとと寝る。
おやすみ
皆さんどうも、紫です。
4月は出会いの季節。皆さんにも良い出会いがありますように。
ついでに自分にも。
意見・感想・評価待ってます!!
いやマジでください(迫真