プロローグ
―――――どの世界にも英雄と言うものは存在する。
その世界では古来より魔法は存在していた。しかし、それは生活を便利にする事と、自分よりも強い敵に対抗する為の手段でしかなかった。故に、その世界の魔法はまだまだ未熟な物だった。ある男が登場するまでは。
その男は「現代に降臨した英雄」とも唄われていた。何故なら彼には未だかつて無い程の強大な魔力と魔法を持ち合わせ、またその力を人々の為に使う研究者として生きていたのだ。
彼の業績のうち、三大革命というものがある。
一つに、魔法という概念の創造。
二つに、魔法に属性を持たせ、派生、合技の複雑化の成功。
三つに、魔法陣精製技術の確立。
これらを行った男の名は、アルト=クリュース=スラウド。26歳にして、国王とほぼ同等の権力を持つ魔術師である。
アルトがその名を国中に轟かせたのは、彼が20歳の時。王都南部方向より総数約1万もの魔物が侵攻してきた「魔物侵略事件」である。国王はこれに対し、2万人の騎士を派遣、王都の防衛にあたらせる。しかし、防衛戦闘開始から3日目にして騎士のほとんどは戦死、魔物も1割程しか倒せなかった。そこに現れたのがアルトである。彼は様々な魔法を駆使してたった一人で全ての魔物を撃破したのだった。
それからアルトは貴族となり、研究に力を注ぐ様になった。それは嫁を貰った今でも変わらない。余談だが、アルトの嫁(ミューナ=フィーネス=スラウド)は意外と研究熱心だという。
所変わって現在、アルトは自身が住んでいる屋敷の地下にいる。そこには彼が実験の為だけに作った、巨大な空間がある。レンガのような石でできた空間の床には、直径5メートル程度の魔法陣が描かれていて、その周りには、直径1メートルで出来た魔法陣が6つ等間隔で魔法陣を囲う様に描かれている。彼は、羊皮紙に描いた設計図と見比べ、笑みをこぼす。
これで上手く行く、と。
彼は3枚の羊皮紙をポケットに突っ込み、そのまま小さな魔法陣の上に立つ。そして呼吸を整え、愛用の杖を立て、唱詠を始める。
やがて、7つの魔法陣が白く淡く輝き始めると、彼は魔力放出量を高め、唱詠に力を注ぐ。
魔法陣は、更に輝きを増し、地下空間を明るくしていく。そして遂に、一瞬だけ、爆発のような白い光が目の前を覆った時、彼は確信した。実験は成功したのだと。
2秒程で魔法陣の輝きは収まったが、そこに彼の姿はなく、ただただ静寂だけが、空間を支配していた。
皆さんどうも、紫です。
なろうで初投稿の作品でしたが、どうでしたでしょうか。
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