日常生活4
あーもう事務所と現場を行ったり来たりだよ。あいつらは晩飯食ったのかな?こんなふうに壮ちゃんも仕事の合間に俺の心配をして何度も電話をかけてきてくれていたんだよね。俺は何もわかってなかったよ。あいつらだけを残して仕事してると本当に毎日心配だ。俺も手があくと何度もかけたくなるよ。それなのに俺はウザイと思いおやすみって電話が終わればもうかかってこないだろうと思って夜の街によく出歩いていた。でもいつもバレて泣かされるぐらい尻叩かれていたよね。壮ちゃん!どうしてわかったの?それだけが今だにわかりません。電話かけても出ないから?俺が普通に寝てるかも知れないわけじゃん。現にお仕置きされた後は出なかったし。最悪バレてさすがに続けてはお仕置きに耐えられる気がしなかったからなんだけど。絶対俺いつもバレてたでしょ。そんなに俺って挙動不審だったの?ちょーヤバイね。悪い事をしたら壮ちゃんの目なんて見れなかったもんな。泣くぐらいだったら悪い事だってわかっててするんじゃないって怒られて反省させられていたのにそれが出来ていないから俺はバカな事ばかりを繰り返したんだ。すいませんでした。
『もしもし?虎?』
『もしもし?慶太郎兄ちゃん!あのさー今日公園で亀拾ったの!飼っていい?』
『虎!飼っていい?って聞いてないのにそれにまだ俺が答えてもいないのに勝手に拾ってきちゃダメだよ!』
順序間違ってんだろ。
『だから聞いてるじゃん!』
『あのねー虎!俺の話しをちゃんと聞いて。飼っていいか?って虎が聞いてきたのは今だよね?でももう虎は聞く前に拾ってきちゃったんでしょ?だからそれがダメだって言ってるの。俺に聞いて俺がいいよって言ったら拾ってきてもいいんだけど虎は俺がいいよって言ってもいないのに拾ってきてるんでしょ?今日はもう拾ってきてるんだからしょうがないけど今度からは絶対に俺がいいよって言うまで家に持って帰ってきちゃダメだよ!わかったの?』
『うん!わかったよ!だから亀入れるのを買って!』
『虎!本当にわかってるの?もう次は勝手に拾ってこないでよ!』
『わかったよ!だから亀入れるのがいるの!』
『わかった!買うから。ちゃんと自分で世話しないといけないよ!出来ないんだったら明日元の場所に戻してきなさい。水替えとかしなきゃいけないんだよ。生きてるものを飼うって大変なんだ。めんどくさくなったから世話したくないって虎の勝手なわがままは許されないんだからね!ちゃんと出来るんだね?約束するの?約束破ったらお尻叩くからな!生き物を飼うって責任があるんだよ。わかった?』
なんでお前が逆ギレしてんだよ!
『僕水替えはできないよー!慶太郎兄ちゃんがやって!』
『そんな気持ちだったら飼っちゃダメだ!虎に飼われる亀がかわいそうだよ!世話をちゃんとしてくれない人に亀は飼われたくないの!明日絶対戻してきなさい!わかったのか?』
『いやだ!飼う!』
『はあー?どっちだよ!自分で世話が出来ないなら飼っちゃダメ!飼うなら自分で水替えもして餌もあげなきゃいけないだよ。忘れたなんて言ったら怒るぞ!どうすんの?虎のわがままなんて生き物には通用しないんだ!世話をさぼったらお尻叩かれるの覚悟しときなさい!俺は水替えはしないよ。虎が飼うって言うんだから虎が1人でやるんだよ!悠と龍もしないからね!自分でやるんだったら水槽を買ってやる。世話しないんだったら元の場所に戻して来い!わかったの?』
『わかったよ!戻してくればいいんでしょ!』
『はぁー。じゃあ明日戻して来てね。今はバケツに入れてるの?』
『ううん。袋に入れてるよ!』
『死んじゃうだろ!悠にバケツ出して貰って水入れときなさい!もうお前は何も拾ってきちゃダメだぞ!生き物は難しいんだよ!虎にはまだ無理だ!わかったの?』
『わかったよ!』
『虎!宿題はしたの?』
『したよー!』
『虎!ちゃんと悠の言う事を聞くんだよ!もうすぐ寝る時間だぞ!約束してるんだからね!ちゃんと守ってよ!悠にかわって』
『うん!わかったよー!』
『もしもし?慶兄?』
『もうマジ虎には参るな。亀拾ってきてるらしいからバケツ出してやって。明日戻してくるみたいだけど。袋に入れてるって言ってるから水も入ってないんじゃないか?飼い方もわからないのに拾ってくんなっつうの。もう虎は要注意だな。俺に似て危険だ。飯は食ったの?チビ達は21時までに寝かしてよ!』
『虎も慶兄の弟だからね。飯は食ったけど風呂いれて寝るように言うよ!』
『俺の悪いとこなんて似なくていいんだよ。悠!お前もだけどな。じゃあ風呂入れて寝かしてやって!鍵はちゃんとしめてる?まあセキュリティはかかってるから大丈夫だとは思うけど戸締りしてお前も早く寝ろよ!』
『うん!わかった!おやすみ!慶兄!』
『おやすみ。悠之心!じゃあ頼んだよ』
はぁー疲れるな。虎之助の奴は俺と同じ問題児だね。双子でもこうも違うかよ。まあでも比較しちゃダメだな。だけどあいつはまたなんか拾ってきそうで怖い。お前らの世話だけでも手回ってないのに生き物なんか飼えるかっつうの。なんで俺が亀の面倒まで見なきゃいけねーんだよ。しかも逆ギレしてやがったからな虎の奴。俺がキレたいんだけど。あー電話か。
『もしもし?大輔?お疲れ!どうしました?』
『もしもし?慶太郎?ユキヤが客とトラブったよ。お前金用意してトライアンフに来てくれ』
『マジっすか!いくらいるんすかね?100万あればいいっすか?まあとりあえず金は持っていきますけど困りましたね。俺がお詫びしますよ。急いで行くんでちょっと待っててもらってくださいね!とりあえずお疲れ!』
『おう!お疲れ!』
なんだよもうー。結局店行くのかよ。シャワー速攻で浴びてスーツに着替えなきゃいけないじゃん。俺は作業着なんですよ。現場は23時便問題ないといいんですけどね。あー疲れてんのに何やっちゃってくれてんだよ。めんどくさい客なんだろうな。あーいやだ。参った。
『もしもし!藤井くん?お疲れ!申し訳ないけど23時便の目処がつくまでは残業して貰っていいかな?俺店がトラブって今から向かわなきゃいけないんだよ。夜勤の河原くんで回せそうだったらあがってもらっていいからさ!』
『はい!わかりました。たぶん今日はもう河原でも充分回せそうですし俺も日報書いたり事務処理しますから23時ぐらいまでは残ってるんで社長もそのまま上がってもらって大丈夫ですよ!』
『あーそう。それなら助かるよ。じゃあ河原くんに23時便が出たら次は5時便まで充分時間があるけど出荷ミスのないようにして事務所の閉めまでしっかり頼むよって伝えてね!じゃあよろしく!お疲れ!』
『はい!わかりました!お疲れ様です!』
はぁーねむてーし限界だな。運転しながら寝そうだよ。そして俺は金を持ってトライアンフに到着した。
『慶太郎さん!おはようございます!』
『おはよう!力也!調子どう?』
『まあまだまだっすね。大輔さんにももっと頑張れって言われてます』
『お前は近いうちにトライアンフのナンバーワンホストになると俺は思うよ!頑張ってね!大輔は奥?』
お前は詩音を抜くだろうね。努力が違うんだよ。
『はい!頑張ります!大輔さんは奥の部屋です!』
『お疲れ!大輔!何番テーブルですかね?』
行きたくないんですけど。
『おう!お疲れ!慶太郎!2番だ。ご立腹だよ。衣装がユキヤの手元が滑って汚れた。もう売ってないらしい。俺ではお手上げなタイプだ。イラつく!』
何度謝罪しても無理だ。ユキヤのクビを切れとしか言わないから切りたがらないお前がどうにかするしかないよ。俺だったらそうしますって言ってしまいそうだからな。
『わかりました。しっかりお詫びしてきますよ』
大輔が対応不可ってよっぽどめんどくさい女か。俺だってイラつくんですけど。お客様ですからね。我慢。我慢ですよね。
『こんばんは。うちのキャストが大変な失態をおかしご迷惑をおかけしたようで申し訳ありませんでした。俺がここの責任者なので全ての責任は俺にあります。今後このような事がないよう徹底的に指導して参ります。すいませんでした。汚した衣装の弁償はできる限りさせて頂きたいと思っています。もうすでに商品は出回っていない大変貴重な物だともお聞きしました。本当に申し訳ありませんでした』
うわあー俺も苦手だよ。雰囲気的に。揚げ足取りのおば様タイプじゃん。
『弁償はしなくてもいいわ。このユキヤって子はクビにしなさいよ!何度も言ってるじゃないの!』
『すいません。それは出来ません。ユキヤには気に入って頂いているお客様もいらっしゃいますし俺は本人にやる気がある以上クビはきりたくないんです。お客様のご要望にお応え出来ず大変申し訳ありません。俺が出来る限り弁償させて頂きます。お許し願いないでしょうか?』
これはキツイな。でも俺はユキヤを切らねーよ。それだけは俺だって譲らねーぞ。
『あなたお名前は?まだ若いようだけど現役のホストなの?』
『申し遅れました。すいません。慶太郎と申します。俺は経営の方なので現役のホストとして店に毎日出る事はないですがまだ通ってくださるお客様がいらっしゃってくれているので誕生日やイベントぐらいにはお客様にお付き合いさせて頂いている程度です。お洋服の代金はおいくらご用意させて頂いたらよろしいですか?』
とりあえず200万で手を打てよ。もうめんどくせーな。ユキヤのクビ切ってあんたにメリットあんのかよ。従業員は駒じゃねーんだよ。ユキヤにも生活があるんだ。
『弁償はもう結構って言ったでしょ。ユキヤって子のクビも切らないなんて私の望む事をしないって事ね。慶太郎くんって言ったかしら?あなた変わってるわね。普通スタッフの1人や2人失態をおかしたんだからクビをきれば良いと客に言われたならば当然そうするはずよ。それで済むなら普通は切ると思うんだけど。店にとっても弁償なんてしていたら大きな損害じゃない?それ程優秀そうでもない子のように思うわよ』
『そうですね。店にとっては大きな損害です。ユキヤが弁償をカバー出来る程今は稼げる力もあいつにはまだないですがそれでも本人にやる気があるのに俺は切れません。ユキヤにはしっかり指導をし1から叩きこみます。本当に何一つお客様の望む事が出来ず勝手な事ばかり申しているのは承知ですがそこは俺も譲れません。申し訳ありません』
なんなの?ガキを路頭に迷わせて楽しいのか?あんたがしつこいように俺だって絶対折れねーぞ。
『もうわかったわよ!あなたがそこまでして頭を下げるならあなたに免じて許してあげるわ。その代わりその子のおかげで気分を害したんだからあなたが私の相手をしなさいよ』
『はい。すいません。ありがとうございます。俺で良ければ喜んでお付き合いさせて頂きます。ではお隣りよろしいでしょうか?』
勝った。でもそう来たか。それは俺が折れるしかねーよ。その為の店だ。今日は飲める気しないんですけどね。
『えぇ。どうぞ。1本入れるわよ。慶太郎くんあなたも飲みなさい』
『いえ。お詫びに俺がごちそうさせて頂きます。それぐらいしか出来ませんから』
何言っちゃってんの?それぐらい俺が奢りますよ。
『何を言っているのよ。ホストがごちそうしてどうするの!客にお金を使わせる世界じゃない?もう私は気持ちよく飲みたいのよ。私が1本入れるって言っているんだからそれぐらいは客の言う事聞くべきじゃないの?』
『はい!すいません。そうですね。お客様の仰る通りです。では遠慮なく頂きます!ユキヤ!こちらを1本お願いします』
それは間違ってないっすよ。おば様。あなたの言う事が正しいです。
『はい!すぐにお持ち致します。お客様!本当に申し訳ありませんでした!』
『もういいわよ。慶太郎くんに感謝するのね。いい上司を持っているじゃない。早く持ってきて頂戴!』
『はい!ありがとうございます。すぐお持ち致します!』
マダムは酒を飲み上機嫌となった。良かった。けどもう俺は限界ですよ。吐きそうだ。
『今日は本当にご迷惑をおかけしたのにいいお酒までごちそうして頂きありがとうございました。またのご来店お待ちしております』
『いいわよ。来たって慶太郎くんはいないんでしょう?あなた誕生日はいつなの?』
『俺は七夕の日が誕生日です。その日は必ず店に出ていますのでよろしかったら一緒にお祝いして頂けると嬉しいんですが』
壮ちゃんまた嘘をつきました。仕事だからね。それが俺の仕事なんだ。嬉しいって言わなきゃいけない。仕事だって言い聞かせてね。
『七夕なのね。来月じゃない。私もお祝いさせてもらうわ。あなた忙しいんでしょうね。お客さんいっぱいついていそうだもの。プレゼント用意してまた来るわ』
『はい。ありがとうございます。楽しみにしてお待ちしております!ありがとうございました!ではお気をつけて!』
んぁーーキツっ!まさか飲まされるとはな。俺酔い回ってるじゃん。ヤバっ!足に来てるぞ。
『大輔!水ちょうだい!』
『さすが元ナンバーワンホストだな!慶太郎!弁償代払わず逆に稼ぐとはな!ほら!水!』
やっぱお前はやるな!まだまだ現役ならもっと稼げるぞ!
『金払った方がマシだよ。もうキツイ。体限界だ。俺上がっていいかな?もう無理だよ。ユキヤの説教は大輔に任せるよ』
マジ無理だ。また倒れる。あいつらにまた心配させてしまう。
『おう!了解した。代行待たせてるから帰れよ!お疲れ!慶太郎!』
『ありがとう。じゃあ店よろしくね!お疲れ!大輔!あー気持ちわりーわ。吐きそう』
『おう!気をつけろよ!』
『運転手さん!自宅にナビセットして行ってくれる?』
『はい!わかりました』
0時30分。帰って1時。4、5時間寝れるか。いやマジもう寝ないとダメだ。現場は大丈夫だよな?
『もしもし?河原くん?お疲れ!現場は大丈夫だった?23時便は問題なく出発したのかな?』
『お疲れ様です!はい!問題なく定時に出ました!俺は今から飯入りますけど早朝便も3時ぐらいまでには必ず終わりそうですから大丈夫ですよ!』
『そう。じゃあ頼むね。早朝の井田くんへの引き継ぎをちゃんと日報書いて閉めまでしっかり頼むよ!よろしくね!お疲れ!』
『はい!わかりました!お疲れ様です!』
あー良かった。早朝便がやばいですって言われても俺はもう酔っ払っちゃって足にきてるんでさばける気がしませんけどね。
『お客さん!お客さん!着きましたよ!ガレージに入れときますね!』
『え?あーありがとう。寝てたよ。領収書切って店に出しておいてね!』
『はい!わかりました!いつもご利用ありがとうございます!』
はぁーやっと寝れる。シャワー浴びて寝よう。6時に起きないとね。朝飯は何作ればいいんだ?もうとりあえずシャワー浴びて寝よう。限界過ぎてるよ。考えられねー。