くろいおおきなかげ
竹林の中から、なぜか雑木林の中へ。
最近の流行だと『それ、なんてトリップ?』だろうか?
ただ迷子になっただけな気もするのだけれど、一生懸命思い出してみよう。
赤い鳥居、竹林、道祖神様、お供えのお花にお水をあげたら、周囲が雑木林。
何かの記憶違いとか、勘違いとか?
いやいや何度思い返しても、竹林の中で、お花にお水をあげて顔をあげたら、雑木林。
花生けと、水。
で、顔をあげたら、変わった・よね。
うん、ダメだ。何度考えてみても、道を間違えたとかじゃねーですわ。
記憶違いでも勘違いでもねーですわ。
あの道祖神様?
道祖神様って、旅人が道を行くのを守ってくれるものじゃなかったっけ?
カドワカシとか、何してくれちゃってんですか?!
いやいやまてまて?
一番最初は赤い鳥居をくぐっている。
もしかしたらお稲荷さん…オキツネ様かもしれないか。
つーか、なんでだ?!どっちだ?!どっちにしろ何でなんだあっ!!!
ちょうどよい切り株に腰をかけて座り込んで、冷静になろうとして失敗したというか、余計に混乱が深めた挙句に心の中で散々に罵詈雑言等を叫びまくった後、疲れすぎて冷静になれた。
時間にして30分か1時間くらい?
ほんとに疲れた。
迷子になってからはトータルで半日以上は経っていると思う。
足が棒のようだし、山みたいに起伏のある道を歩いたわけではないから微妙だけれど、肉体的な感覚から言えば大体そのくらいであっているだろう。
『この国にはまだ、妖怪とか物の怪とかが居たりするんだよ。
人が、気づかないだけで。
それどころか、神様だって存在するんだよ?』
遠い記憶の中の、幼い私に向かって、笑って言ったあの人の事を、ふと、思い出した。
他に何を言っていただろう?
『それが何かを共感などで理解し、形を与え、名を呼ぶんだよ。
精霊とか失われた神様とか。
力を借りることができるかもしれないね』
「ええと、道祖神様?お地蔵様?お狐様?お稲荷様?とにかくお助けください。
元の道を教えてください。元に戻してください。お願いします。ほんとマジで!」