表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

第2話 男友だちと女友だちが出会ったら


 放課後。俺の席までやってきた五人の女友だちから遊びの誘いを受けた。

 でも俺の返事は一貫して「ノー」。理由は――


「悪いけど、今日はパス。他の約束があるんだ……男友達とな」


 人生で初めて『男友だち』という単語を正しく使った気がする。

 今まで日常会話で、使うことなんて一度もなかったからな……。


「トモが男友だち? 冗談はやめて、ほら今日はゲーセンでこの前の続きを――」

「嘘じゃねぇよ‼ 俺にも遂にできたんだ‼」


 同じA組の心愛ここあは俺の発言を疑い。


「な、なら昨日の深夜アニメの感想回は――」

「それも後日ということで」

「……わ、わかった」


 B組の雪葉ゆきははわかりやすく落ち込む。


「部活はどうするんだ‼ 文芸部は今日も活動中――」

「定期的に作品さえ出せば自由参加なわけだし、今日は自主休部で」


 F組で同じ部活のみおは怒ってばかり。


「ケーキバイキングはどうするんですか‼ 今日までですよ‼」

「それよりも男の友情優先で」


 D組の凪咲なぎさは俺に冷ややかな視線を向け。


「ハハハ‼ つまり旦那にも心の友ができたわけか‼ ……旦那、殴っていいか?」

「さすが竜虎りゅうこ姉さん。話が分かって大変ありがたいよ。殴られるのは勘弁で」


 E組の竜虎は拳を構えて、恰幅のいい笑い声を漏らす。


 五者五葉。相変わらず反応がそれぞれ違っていて面白い。これだから、この五人といると毎日飽きないんだ。そもそも別に、五人が嫌いだからスバルを優先するわけじゃないし。


 まだ『親友』という関係には浅いから少しでも早く、スバルとの関係を深めたいというだけの話。別に誰が一番大切とか、順位付けしないといけないわけでもあるまいし。


「トモキ!」


 俺が女友だち五人と話していると、ちょうど教室の後ろ側のドアから顔を覗かせる人物がいた。

 廊下側の列最後列の俺は体を後ろにそり返し、その人物の姿を確認する。

 逆さまで見てもやっぱり「格好いい」の一言に尽きる。


「来たか、スバル。じゃあ、一緒に帰ろうぜ」

「あれ? 話し声が廊下まで聞こえてたけど、彼女たちとは――」

「今日はお前優先。帰りにどこ寄ってく?」


 ニヒヒヒッとイタズラな笑みを浮かべて、スバルに意見を求めてると。


「ちょ、ちょっとトモ‼ どういうことよ‼」

「な、なんでこんな有名人とその……本宮さんが知り合いに……」

「ある意味驚きだ。こんなダメ男を二階堂が友人に抜擢するとは」

「これが噂の転校生ですね……たしかに格好いいですね」

「なるほどな。こりゃあ、アタシたちが束になっても敵いそうにない」


 スバルを見るなり、それぞれがそれぞれ驚きの反応を見せた。

 澪に至っては相変わらず、俺に対してコメントが辛口すぎる。

 でも事実、ルックスの格差は明らかなんだよな。


「なあスバル。お前ってモテるだろ?」

「そ、そんなことないよ‼ ボクよりもトモキの方がモテモテ――」


「「「「「トモキ⁉」」」」」


 教室に重なった五つの声が響き渡る。

 それに驚いてクラスメイトが一斉にこっちの様子を伺うけど、発信源を知るとすぐに自分の行動を再開させた。どうやらまた、いつもの六人かと呆れられたらしい。


「な? 面白い五人だろ? 今日のところは二人で遊びに行くけど、今度こいつらも一緒に遊びに行こうぜ。なあ、みんな――」


「私でさえ、トモって呼ぶのに十年も……」

「と、とも……や、やっぱり本塚さんが限界……」

「本宮。本宮。ええい‼ 苗字はもういいんだ‼」

「いいんです。私はまだ、ただのスイーツ仲間でしかありませんから」

「大丈夫だ。旦那呼びのアタシの方が確実に上のはず……」


 声をかけたものの全員、完全に放心状態。小さな声でブツブツと何かを繰り返すばかりだ。今日のところはもう会話できそうに無さそうだな。しょうがない――


「じゃあ、とりあえず下駄箱まで行くか?」

「え、いいの⁉ 彼女たちを放っておいても⁉」

「気にするな。こういう時に声をかけても当分反応しねぇよ」

「う、うん。トモキがそういうなら……」


 鞄を持って席を立つなり、放心した五人を置き去りに俺は教室を飛び出した。


「よし‼ そんじゃ今日はどこに寄り道スっかな‼」

「キャッ⁉」

「うん? 変な声なんてあげてどうしたんだ?」

「い、いや。別になんでも……」


 肩を組んだ時、悲鳴みたいな声を聞いた気がしたけど、あれはスバルの声じゃなかったか?


 そんな疑問を一瞬抱いたもののすぐに振り払い、俺は男友達に対する接し方で――


「とりあえず下駄箱へゴーだ‼」


 肩を組んだまま、三階にある一年の教室から昇降口を目指した。


   ***


「マジかよ⁉ あの漫画、そんな終わり方なのか……」

「うん。でも意外かな、トモキが見てないなんて」

「妹に『過激なシーンが多い』って没収されたんだよ」


 下駄箱で靴を履き替えながら、早速漫画話をしていた。

 話題は少し前に最終回を迎え話題になった漫画だ。たしかに過激なお色気シーンもありはしたけど、バトルの描き方が格好良く、俺としてはそちらに熱く燃えていた。そしてそれはスバルも同じだったらしく、この数分でそれなりに打ち解けかけている。


「なぁ。スバルはあの漫画、全部持ってるんだよな?」

「うん。ボクっていうよりは姉さんの持ちものだけどね」

「頼む‼ 今度最終巻だけ持ってきてくれないか。俺、最終巻だけ読めてないんだ」


 両手を合わせて、スバルに頼み込む。

 まさかここまで少年漫画の趣味が合うとは。これはもうある意味、友だちになる運命だったのかもしれない。力あるものは、力あるものに惹かれるみたいな。


「べ、別にいいけど。なんなら今度、ウチに来る? ほかにも色々な漫画が――」

「本当か‼ なら今行こう‼ すぐ行こう‼ レッツゴー‼」


 スバルの意外と細い腕を強引に引っ張り、俺は校舎を後にする。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ