表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

第1話 真実に気づいた翌日、男友だちができた


 昔から男とか女とか関係なく、気の合う相手とばかり遊ぶことが多かった。だから特段意識していたわけでも、最初から狙ってそうしたわけでもない。気づいたら、そんな感じになっていたんだ。


「……男友だち、一人もいなくね?」


 夏休みを数日後に控えた夜。友だちから遊びの予定を伝えられ、自室のカレンダーに書き込んだ直後、そこに書かれたいくつかの名前を見て、ようやくその事実に気づいてしまった。


「いやいやいや。俺だって男友だちの一人ぐらいね……」


 軽く首を左右に振り、カレンダーに書かれた名前を一つずつ確認する。


 不知火しらぬい心愛ここあ――ゲーム友だち。

 夢見ゆめみ雪葉ゆきは――アニメ友だち。

 一条いちじょうみお――小説家志望友だち。

 真白ましろ凪咲なぎさ――スイーツ友だち。

 黒羽くろばね竜虎りゅうこ――スポーツ友だち。


 間違いない、五人とも女の子だ。

 一人でも女装男子がいれば話しは変わるけど……


「……それぞれ色々と見ちゃってるからな」


 いくらトラブルや偶然、うっかりだとしても恥ずかしすぎる数々の光景。友だちだからこそ、ギリギリ許されるレベルのあられもない姿。でもおかげで胸を張って言える、五人とも歴とした女の子だと。


 でもそれはつまり、俺に男友だちはいないということで。


「一見すると……ハレーム主人公にしか見えないんだけど」


 ただ大前提として、それはありえないと言っておく。

 だって友だち全員、俺の前で自分の好きなやつの話をしているから。まるで恋愛相談みたいに。そもそも俺、恋愛相談されるほど恋愛に明るいわけじゃないんだけど……。


 それにぶっちゃけ――


「男の友情とか地味に憧れるんだよな……」


 ぼっそと呟いて、親父や兄貴から受け継いだ少年漫画ばかりの本棚をみつめる。

 並んでいるのは恋愛漫画よりもバトル漫画が多く、俺が憧れているのもそういう物語。体を鍛えてるのだって、『いつか俺にも少年漫画的なことが……』と期待しているからだ。でも生まれてこの十五年、そんなこと一回も起きたことがありゃしない。


 仮に俺の人生におけるラブコメが始まっていたとしたら、親友枠一体どこ⁉


   ***


 なんてことを考えたのは昨日の話。

 そして夏休みを十日後に控えた今日、俺は校舎裏に呼び出されていた。


 下駄箱に入っていた手紙には差出人の名前はなく、ただ『友だちになってください』の一言。たぶん普通の人なら、こんな怪しい手紙なんて見なかったことにするんだろうけど、俺の場合は少し違う。


 本物だろうが、偽物だろうが、どっちに転んでも面白いに決まってる‼


 俺は昔から面白い方を優先する悪いクセがある。

 結果、気づけば周りは女友だちばかり。でも友だちになったことを後悔したことは一度もない。実際、毎日退屈なんて一切してないんだから。


 友だちになってください、なんて手紙を出すやつ。どう転んでも面白い展開にしかならないだろ‼


 心をザワザワさせながら待ち続けること数分。

 もうすぐ昼休みも終わるギリギリの時間帯、そいつは現れた。


 サラサラとしたボブショートの銀髪に、俺より少しだけ低い背の高さ。顔つきは俺なんか比べものにならないほどのイケメンで、特徴的な碧い瞳がキョロキョロと動き続けている。


 男子の制服を着た彼は、照れ臭そうに現れるなり、男子にしては可愛い声で申し出る。


「ずっとキミのことが気になってました‼ ボクと友だちになってください‼」


 念願だった同性からの友だちの申し込み。こんなの受けない理由なんてない。相手がイケメンとか関係なく、俺は今すごく男友だちがほしいんだ‼


「お、おう。よろしくな」


 差し出された手に自分の手を添えて、軽く握手をする。


「知ってると思うけど。俺は一年A組の本宮もとみや友樹ともきだ。趣味は……まあ色々だな」

「ボクの名前は二階堂にかいどうスバルだよ。クラスは一年C組。趣味は少年漫画一択‼」


 自己紹介が終わると、互いに互いの手を握り返し。


「よろしくな、スバル‼」

「こっちこそ、トモキ‼」


 握手をしているとちょうど、昼休み終了の予鈴が鳴り響いた。


「ヤバいな……急がないと次の授業に遅れるぞ」

「じゃあボクは移動教室だからここで……」


 手を離し、スバルと互いに軽く手を振って。


「また放課後、話そうな‼ それで帰りに寄り道とかしようぜ‼」

「う、うん‼ ボクもすっごく、キミと話がしたかったんだ‼」


 慌てて駆け出すスバルの背中を見ながら、ふと自分の手のひらへ視線を向けてみる。

 そこに残る感触は思った以上に――


「男の手って意外と……柔らかいもんなんだな」


 高校生になって初めての夏休み十日前。

 俺、本宮友樹に、初めての男友だちができた。

 名前は二階堂スバル。俺よりも確実にイケメンで、俺と同じように少年漫画好き。


 神様、ここに俺の親友枠はいたんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ