その2
「ただね~」
「な、何か悪かった所ありました⁉」
「あ、いや、良いとか悪いとかじゃなくってね。
うちらはさ、ほら一種の人気商売な所があるじゃない」
「はぁ…」
「子供にさ、夢と希望と憧れを抱かれ、応援してくれて、その応援が我々の
力となるわけよ」
若い男は、中年の男性の言葉に、何が言いたいのか分からず、怪訝な表情で耳を傾けている。
「ヒーローはさ、そう言った声の期待に答えなければいけないわけ」
「わ、わかります」
「いや、分かってない、分かってないから敢えて言っている訳わかる?。
怪人を倒すのもいい、派手な必殺技を使うのもいい、ピンチをチャンスに変えるのもいい。でも…でも、それだけじゃダメなんだよ」
「どう…言う事なんでしょう…」
「ちなみに新人くんはさ、どうやって変身する?」
「え?あ…変身!…ですけど…」
「それ、それよ、それ」
「何がです?」
「今の若いヒーローの変身はさ、掛け声だけであっさり変身するじゃない。
其処が、ベテランの私から見て首をかしげているわけ」
「ちょっと、お言葉ですけど、これ以外に何があると言うのです?」
納得にかない若い男は、中年の男に詰め寄ろうとするが、それをなだめる
ように両手でブロックし静止させる。
「僕の子供の頃はね、ヒーローは必ず変身ポーズを決めてから変身をしてか
ら、怪人と戦った者なんだよ」
「今と昔じゃ違いますよ」
「確かに今と昔は違う。
でもね、子供に取って変身ポーズは大切なんだよ。
あのかっこよく決める一つ一つの動作、これから悪に立ち向かうという
気合の入れ、そして、叫び声と共に変身しヒーローに変わる。
ううん、あこがれたね…」
「な、何が言いたいんです?」
「戦いもいい、必殺技もいい、でもね子供に取って一番記憶に残るのはさ、
変身ポーズなんだよ。
考えてもご覧、変身ポーズだけで、誰が何に変身するか分かるんだよ。
それに、子供が大人になっても忘れない、記憶に残る物なんだよ。
君にも、そういった時期があっただろう?」
「た、確かに…、子供の頃にヒーローが好きでした。
そして、よく変身ポーズの真似をしていました!」
「だろう!誰かの記憶に残り、憧れになるのは、戦いだけじゃダメなんよ
やっぱり」
「何だか、段々先輩の言っている事が分かるような気がしてきました!」
「僕なんか見てごらん。
君みたいに、顔はイケメンじゃないし、背も高くない。
オマケにこの腹…。
ザ、中年て感じだけど、でも変身ポーズだけは誰にも負けはしないよ!」
「そうですね。先輩の変身は長いくてうざいけですけど、切れがありますも
んね」
「長いはよけいよ。
後、うざいって何?うざいって。
そう思ってなの?」
「あ、いえ…」
「まぁ、いいや。
そう言った訳で、変身ポーズはヒーローにとって必要不可欠て事だよ」
「はい!大変参考になりました。
ありがとうございます!」
深々とお辞儀をする若い男は、やっと長話が終わった内心ホッとした様子だったが、話はまだ終わらなかった。




