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9 鬼退治

両親が相次いで亡くなり、天涯孤独になった前田玉藻。飼い犬のサクラが道に飛び出したので助けようとして、トラックにはねられた。そこで神様に会う。九尾の狐が帝をたぶらかして国に災いを起こすのを防げば、再び現世に戻れるという。目が覚めると、九尾の狐に転生していた。これって楽勝じゃない。

 玉藻「……泰親殿。鬼退治とか誘拐とか行方不明って、検非違使(けびいし)の仕事じゃないの? なんで陰陽師に回ってくるわけ?」


 泰親「わしもそう思う。あいつら暇そうに夜回りしてるのに、面倒なのは全部こっちに押し付けよる。おかげで寝不足だ」


 玉藻「ほんと役割分担できてないわね……」


 泰親「まあ、帝の命じゃ逆らえんがな。……ちょっと祖父に聞いてくるわ」


 玉藻「祖父? ……まさか」


 泰親「安倍晴明」


 玉藻「……え、生きてるの⁉」


 泰親「ああ。うちのじいさん、百歳超えてもピンピンしてるし、陰陽寮では未だに現役だ」


 玉藻「……妖怪より妖怪じみてる」


 玉藻と泰親が清明のもとを訪ねる。


 清明、姿を現すなり、細い目をスッと開いて――

「その女、九尾の狐が化けておるな」


 泰親「はい、存じております」


 清明「……なんと。さすがはわが孫。人ならざるものを見破っておったか」


 泰親「いえ、別に……。実は都中、たいていの人はもう知っております」


 玉藻「ちょっと! 何その言い方! 秘密にしてたつもりなんだけど!」


 清明「……(絶句)」


 泰親「居候先の、奥方様も旦那様も使用人もみんな知ってますし。なんなら恋文送ってくる貴族連中も、正体知った上で惚れてるんですよ」


 玉藻「うそでしょ……」


 清明「……御前、人の世でよくやってこれたな」


 清明は袖を払って座を正すと、机の上に式盤を置き、さらさらと符を書き始めた。

 空気が変わる。


 泰親「お祖父様、本気だ……」


 清明「北東の方角、鬼の巣食う気配がある。女をさらっては、生気を吸い上げておるな」


 玉藻「やっぱり!大江山の酒呑童子!」


 清明「いかにも!そやつら、ただの鬼ではないぞ。妖術を使いおる。玉藻殿、九尾の力、貸す気はあるか?」


 玉藻「えっ、いきなり指名!? いや、まあ……断らないけど……」


 泰親(やっぱり……玉藻殿と組むことになるのか)


 清明はゆっくりとサクラを見やる。

「ほほう、ただの犬ではないな。霊力を宿しておる……これは心強い」


「鬼退治なら源頼光殿に頼むのが筋じゃない? それに四天王――渡辺綱様、坂田金時様もいるでしょう」


 清明は扇で口元を隠し、クスリと笑った。

「ふむ、昔は確かに強かった。だが今は……皆、腰が曲がって畑の守り神のようになっておる」


 泰親「……お祖父様、言い方!」


 玉藻「いやでも、めっちゃ想像できる……」


 玉藻たちはダメもとで、源頼光とその四天王の屋敷を訪ねた。


 頼光はすでに白髪混じり、腰に手を当てて立つのも辛そうだが、目にはまだ武士の光が宿っていた。

「ほう、鬼退治か……」


 渡辺綱も坂田金時も同じく年季の入った武者姿。

「わしらの孫なら剣の腕もある。紹介してやりたいところじゃが……」

「駄目だ駄目だ! 可愛い孫にそんな危険なことはさせられん!」


 玉藻「えー……じゃあ……」


 頼光は杖をギュッと握りしめて言い放った。

「ならばこの老いぼれが行くまでよ!」


 四天王たちも「おお!」と声を合わせる。


 サクラ「いやいやいや! 腰曲がりじいちゃん軍団で鬼退治って、絶対危ないっすよ!」


 泰親はこめかみを押さえてため息。

「……だから言ったろ、こうなるって」


 玉藻は苦笑しながらも、胸がじんわり温かくなるのを感じた。

 ――孫が宝。命より大事に思うからこそ、自分の身を投げ出そうとする。

 その想いが、彼らを未だに“英雄”たらしめているのだ。

 頼光は腰をかがめながらも、目は鋭く光っていた。

「確かにわれらは老いて力は衰えた」


 渡辺綱も頷く。

「しかし、経験は積んだ。知恵もある」


 坂田金時がにやりと笑った。

「力だけで勝てると思うなよ、若者ども。戦いは頭で制するものじゃ」


 頼光「必要なのは、個々の力ではない。作戦だ」

「この戦力でも、勝利できる作戦を立てる」


 サクラ「……なるほど、じいちゃん達、ただの老兵じゃないっす」


 玉藻(うーん、策を立てる頼光様がこれだけ賢ければ、私たちも動きやすいかも……)


 泰親「さて、鬼退治の計画を練るか。」


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