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 隼人はスマホの予定表を眺めながら、小さく息を吐いた。

 本当は玉藻と二人きりで話してみたい。

 彼女が見せる柔らかな微笑みを、もっと近くで見たい。

 胸の中には、そんな思いが確かにあった。


 だが──。


 隼人(心の声)

「……まずは礼儀だろ。僕一人で助かったんじゃない。

 玉藻さんも、サクラも、志保も……みんなが動いてくれたんだ」


 思い返せば、岸本玲奈の呪いや嫌がらせの一件。

 普通なら関わりたくもない厄介事に、迷わず協力してくれた。

 その恩は、決して軽くない。


「二人きり……は、少し後でいい。

 まずはきちんと、みんなにお礼をしないと」


 隼人は決めた。

 週末、四人で食事をしよう。

 場所は少し背伸びをして、学生が気軽に入る店よりも大人っぽいレストラン。

 支払いなら問題はない。


 大学生にしては珍しく、隼人は自由に使えるお金を持っていた。

 ネット転売の仕事が順調で、安く仕入れた海外アイテムが思わぬ高値で売れることも多い。

 アルバイトとは比べものにならない収入があるのだ。


 隼人

「……よし。みんなが喜んでくれたらいいな」


 その横で、棚の上の人形が目を細めた。


 人形

「ふふ……まずはみんなにお礼、ね。

 そういうところ、玉藻さんはきっと好きになるわよ?」


 隼人は顔を赤くし、慌てて視線をそらした。


 隼人

「そ、そういうんじゃないよ……」


 人形

「はいはい。……でも、応援してあげる」


隼人は、第一印象からして目を引く青年だった。

すらりとした体つきに整った顔立ち。派手さはないが、どこか爽やかで品がある。

大学でも、女子から「隼人くんは優しい」「怒ったところを見たことがない」と評判になるほど、穏やかで人に対して壁を作らない。


そのうえ──。


ネットでの転売事業が順調に軌道に乗っていた。

輸入雑貨や限定スニーカー、電子機器まで扱いは幅広い。

値段が跳ね上がった商品が売れることも珍しくなく、大学生としては破格の収入を得ている。


生活にも余裕があり、誰かを食事に連れて行くくらい、負担にならない。

金銭的にも、性格的にも、隼人は「人気が出て当然」のタイプだった。


そして──。


岸本玲奈が執着した理由も、そこにあった。


玲奈は、自分の“教祖”という立場で多くを支配してきた。

人の心を揺らし、従わせることに慣れていた。

そんな彼女にとって、隼人は、


手に入れたい男


支配したい存在


自分の価値を証明するための飾り


でもあった。


だからこそ、告白を断られた瞬間、彼女の自尊心は傷ついたのだ。


そして、彼女はいつものように

「呪いという形の“報復”」を選んだ。



お読みいただきありがとうございました。

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