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両親が相次いで亡くなり、天涯孤独になった前田玉藻。飼い犬のサクラが道に飛び出したので助けようとして、トラックにはねられた。そこで神様に会う。九尾の狐が帝をたぶらかして国に災いを起こすのを防げば、再び現世に戻れるという。目が覚めると、九尾の狐に転生していた。これって楽勝じゃない。と思ってたけど、いろいろ歴史が変わってる。

 帝は夜の御所で泰親(やすちか)を呼びつけた。


「近頃、都の外れに鬼が出没し、多くの娘がさらわれておる。陰陽師として放置できぬであろう」


 泰親、深々と頭を下げる。

「仰せのままに。必ずや鬼を退治し、娘たちを救って参ります」


 帝はそこで、少し声を低める。

「それと、玉藻という女の噂を耳にした。奥方の病を癒し、都の男どもを魅了しておると。妖艶で博識――しかも、不思議な術を使うとか。泰親、そなたとて知っておろう?」


 泰親の頬がわずかに赤くなる。

「も、もちろん存じておりまする!」


「玉藻を味方につけよ。鬼退治には、あの女の力が必要となろう。都の娘たちを救うため、手を携えて事にあたるのだ」


 玉藻サイドに伝わると:


 サクラ「うわぁ……よりによって安倍泰親と共闘っすか。ご主人、あの変態に近づいたら絶対めんどくさいっすよ!」


 玉藻「えー……でも帝の命令なら無視できないじゃない」


 奥方「ふふ、これは面白くなってきましたわね」

 奥方様が、静かに扇を揺らしながら言う。


 玉藻が首をかしげる

「鬼退治で活躍するの、たしか……泰親のお祖父さんの安倍晴明だったはず」


 奥方「安倍晴明殿は確かに名のある陰陽師にございましたが……鬼退治などの噂は、私は聞いたことがございませんわ」


「えっ!? だって教科書に……じゃなくて、わたしの知ってる歴史だと、鬼退治といえば安倍晴明が活躍してるはずだけど!?」

 玉藻、思わず立ち上がる。


 サクラが首をかしげる。

「ご主人、それって歴史が変わってるってことっすかね? それとも、この世界は“ちょっとズレた別ルート”の日本なのかもしれないっす」


「別ルート?」


「たとえば――ゲームで“ifルート”に分岐するみたいにっすよ。ご主人が九尾の狐として転生した時点で、歴史が少しずつ変わってるんじゃないっすかね?」


 玉藻は頭を抱えた。

「や、やばい……わたし、歴史のネタバレ持ち込んでるつもりが、実は参考になってなかったパターン!?」


 奥方様が、話し始める。

「ですが、九尾の狐といえば……それは神の使い。瑞獣((ずいじゅう)と呼ばれるおめでたい存在。めでたきこと、吉祥をもたらす霊獣でございます。玉藻様のお姿は、都にとってまさに福そのもの」


「えっ、九尾って、めでたいモンスター扱いなの!? ラスボスじゃなくて、縁起物?!」


 サクラが尻尾をぶんぶん振る。

「ご主人、なんだか肩書きが“ラスボス候補”から“幸運のマスコット”にチェンジしてるっすね!」


 玉藻は畳にごろりと寝転び、尻尾をばさばさと揺らした。

「……はぁぁぁ。玉藻はずっと正体を隠していて、安倍泰親に正体ばれる流れだったのに、なんか旦那様に先にバレちゃったし」


 奥方様が涼やかに笑う。

「ふふ、旦那様だけでなく、わたくしも承知しておりますし、使用人たちも皆……」


「使用人にまでバレとるんかーい!!!」玉藻、盛大にひっくり返る。


 サクラが得意げに腕を組む。

「ご主人、いまさら身バレを気にしてもしょうがないっすよ。都の人々が困ってるなら、助けてやればいいんです。一宿一飯の恩義っす」


 玉藻は頭を抱える。

「わたし、もっとこう、謎めいた大妖怪的ポジションだと思っていたのに……。ただの“正体バレ済みの居候狐”じゃん……」


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