2 黒髪ロング姫カット和風爆乳美少女JK退魔巫女・双子姉妹の姉で血の繋がらない姉と梅雨の道場で……
男女比偏重仮想未来並行世界。
長すぎるので良い感じの略称を考えたいと思いつつも、これだ! と思えるアイデアが湧かずに時を過ごし続けてはや十七年。
前世の僕は二十五歳までしか生きられなかったので、この世界で加算十七年間を過ごしたと言っても、精神年齢的な変化はぶっちゃけそう大したものじゃない。
というか、人間の自我形成とか精神的成長とかって、二十代になる頃にはだいたい終わってるものだ。
この世界での僕は周囲から割と落ち着きのある子、大人っぽい子などと評価されて早熟と思われる傾向が高いけれど、それは相対的な話であって実際の僕個人の内面としては、ほとんど変わってないのが実情だと思っている。
この十七年間、僕はずっと二十五歳の僕のままだったし、前世から染みついた真面目な性分ってヤツはそうそう簡単には脱ぎ捨てられなかった。
それでも、環境が変われば生き方ってのは自ずと変わっていく。生き方。いや、この場合はライフスタイルって言い換えた方が適切かな。
前回も話した通り、この世界には男性保護法とかいう冷静になって客観視してみるとどうしてもちょっぴりキショイかなぁ……って名前の法律が存在しているからさ。
この法律は僕たち男に、いろいろな配慮と一緒に幾つかのルールを課しているんだ。
自由恋愛が許されず、結婚相手を国が決めるってのもその内のひとつ。
一夫多妻制を復活させておいて、今さら何を制限してるんだよと「はいぃ?」って疑問に思っている人も当然いるだろうけれど。
デザイナーベビーの一般化に伴って、男性人口の増加が徐々に目立つようになってきたのはもちろん都心が最初だった。
すると、如何に国の制度で一夫多妻制が合法になったと言っても、人間の感情ってのは完全には制御できない。
ある時、複数の女性と恋愛関係になった男性が、恋人のひとりに誘拐・拉致・監禁されるなんて事件が起こってしまった。
動機は嫉妬、独占欲。ひどい場合は、暴力事件にまで発展するっていうね。まぁ、無理からぬ話だと誰だって思うだろう。
そんなワケで、事件を由々しく捉えた国家当局は、少なくとも一定の男女比率に到達するまでは、国主体の管理で異性間自由恋愛市場を閉鎖するっていう決定を下したらしいね。
でだ。じゃあ結婚相手はどうやって決めるの? ってな疑問には、こういう回答が現在は公開されている。
〝貴重な男性と結婚するに当たって、女性側にはあらかじめ一夫多妻制への完全同意書提出が必要であり、事前に人格・素行・経歴等の第三者審査に合格する必要がある〟
要は嫉妬心とかで暴走してヤベェ事件を起こさない女性だけが、男と結婚できますよーというとんでもない話だ。
なお、このとんでもない話にはさらに「男性と結婚可能な女性は男性保護にあたり最低限の生活水準・安全な環境の提供のために一定の資産を有すること」なんて付帯条件まで存在していて、つまるところ、これが前回話した特権階級オバサンとの強制結婚に繋がる話なのである。
世論の反応を大まかに三パターンに分けると、
A:私たち女性を守るために死んでしまった男性を、当面のあいだ安全に保護し援助するためには、現状これは妥当な政策である。(約60%)
B:否、これは戦後富裕層による不当な男性独占であり、男性の自由意志を抑圧する自由恋愛禁止法は悪政に他ならない。男性を解放せよ。(約25%)
C:金銭さえあれば男性と結婚可能なように見えてしまう社会構造は不健全と言わざるを得ない。国は社会保障によって男性の安全を確保するべきであり、個人資産の多寡は審査から除外するべきである。税金を上げてもいいので、戦後富裕層の資産を公平に分配せよ。(約15%)
うん。
どれもこれも、一夫多妻制に対する拒否感などは少なくて、どちらかというと男性を守ろう、男性を助けよう、もっと男性と自由に恋愛したいよ! 的な感情が多いように見える感じなのだった。
僕は思いました。
もしかしてこのパラレルワールドで死んでいった男性たちって、さてはよほど英雄的で高潔な戦いをしたのかな……?
SNSなんかを見てると、日本に限らず世界的に同じような意見が多かったので困惑したよね。
だって同じ男として言わせてもらうけれど、男がみんなアメコミのスーパーヒーローみたいなワケじゃないんだし、悪人とかも普通にいるワケじゃん?
なのにこの世界の女性たちは、なんでこんなにも男性への敬意というか感謝の念が強いのかな? って戸惑ったんだよ。
で、調べてみたら案の定だった。
淫神と淫魔は、まず最初に自分の手駒として波長の合う悪性の人間を洗脳・奴隷化したらしい。
洗脳・奴隷化された人間たちは異界の力で眷属となって、ゴブリンとかトロールとかオークとか、ひどい場合はSAN値の削られそうなエログロ系のクリーチャーに変化してしまったようで。
残ったのは必然、善性の人間たちだけ。
とりわけ善性の男性は、女性を守ることに命を懸けた。
だもんで、残された女性たちも善性のパーソナリティをしているから……平和になった世界ではこんなふうに男性への感謝が根強い社会が一般的になってしまったみたいだ。
なるほど、と僕は反省した。
歴史の教科書を読んで、あれ? これって淫乱・ハード系のエロ同人だっけ? とか思ってしまってごめんなさい。世界観設定がしっかりしてるタイプのエロゲのあらすじかな? 丁寧な導入だぁ、とか頭によぎってしまってごめんなさい。
先人の功績に恥じないよう、これは僕も気を引き締めて生きていかないと……!
道徳と倫理の授業の後とかは、特にそう思います。
さて、それじゃあ長くなったけど、そろそろ僕のライフサイクルの話に戻ろう。
この世界の社会的背景を説明したことで、僕の人生に一定の国家権力が影響を及ぼしていることは理解してもらえたと思う。
けれどまぁ、何も大袈裟な話ばかりが転がっているワケじゃないんだ。
今回の話は、〝男性の身体と健康を守るための日常的運動の義務〟に紐づくちょっとしたエピソードで、要するに僕個人の筋肉トレーニングがメインになる。
この世界の男性には専属でパーソナルトレーナーとかが割り当てられるんだけど、梅雨の時期は雨が多いから、必然的にお家でトレーニングを、ってのも多くなるよね。
その場合、僕のトレーニングをサポートする役割は、乳神家の美人双子姉妹の姉、乳神美丘が請け負ってくれているんだ。
黒髪ロング姫カットの和風爆乳美少女JK退魔巫女、十八歳。
彼女の属性は、色白。清楚な美人顔。パッチリとして鈴を張ったように澄んだ黒瞳。スベスベプルプルとした艶めきスキン。義姉。先輩。歳上。女子高生。巫女さん。はわわ系。恥ずかしがり屋。押されたら断れない。元剣道部。機械音痴。クーデレ。真面目。風紀委員。などなど。
僕はミク姉と呼んでいる。最初は美丘さんと呼んでいたんだけど、彼女から一年くらい前に控え目に、
「柊木くん。その……私のことは、家にいる時と二人っきりの時は、ミクお姉ちゃん、か、ミク姉って呼んでほしいのだけど……」
「え?」
「ほ、ほらっ、柊木くんはうちにとって、もう家族みたいなものなのだし、私のことも本当のお姉ちゃんだと思って接してくれていいと思うの……い、嫌だったらぜんぜん、忘れてくれていいのだけど……」
そう言って上目遣いで僕の様子を見てきた彼女は、断ったら泣き出しそうな顔をしていた。目なんか若干涙目だった。長いまつ毛に雫が震え落ちるかと思うほどに。
なので、
「分かりました。だったら、僕も柊木くんじゃなくて柚子太郎でいいですよ」
「──え、ええ!? そ、それはぁ……う、嬉しいけどぉ……まだ、早いと思うわ……? それに、恥ずかしい……」
はぁ? オイオイ、僕だってだいぶ気恥ずかしいんだけど?
と思った僕だったものの、今世では人生の伴侶を他人に寝取られない完璧ガチ上位雄になろうと企んでいる僕である。
肉体的にはまだ理想の体型には程遠いが、精神的にはスパダリ的な在り方を模索している。
この時は女性に無理強いはせず、優しく包み込むような態度が正解かなと思って「分かりました。ミク姉のペースでいいですよ?」とその場は頷いたのだった。
ミク姉は「はわぁ……!」と変な声で頬を上気させていた。
乳神邸のやたらだだっ広い木造屋敷の廊下、死角になる曲がり角での一幕である。
……ところで、ミク姉はどうして家にいる時と二人っきりの時という条件を前提にしたんだろうね? 謎はいまだに解き明かされていないままだ。
ああ、ジメジメと蒸し暑い。肌にまとわりつく湿気の鬱陶しさのように、その謎はこの頃、さらに僕の心をざわつかせている。
一年が経って、ミク姉が僕を柚子太郎ではなく柚子くん、と愛称で呼ぶようになったのも少なくない理由のひとつだろう……
乳神家は九十九坂において、建立からおよそ八百年の歴史を持つ由緒正しき乳神神社の社家。
社家という制度はこの並行世界でも華族制と一緒に廃止されているが、九十九坂は田舎のためか、乳神家を指してお胸山の社家さん、などと今でも呼んでいたりする。
九十九坂にはその名の通り九十九の坂があると言われているんだけど、乳神邸は旧都の乙女坂を登った先、通称お胸山と呼ばれる乳神山の麓に位置していて、山の中腹にある神社と非常に行き来しやすい位置に敷地を持っている。
ちなみに、同じ名前の神社が北海道にもあるらしいんだけど、東京の赤塚にも名前は違うけど似たような信仰を受ける大神があるので、探せば他にも同じような神社はあるのかもしれない。
九十九坂の乳神神社は、授産福子、母乳授け、子孫繁栄、家内安全、縁結び、五穀豊穣の御利益を謳っていて、御神体は乳房の形をした鍾乳石で、鍾乳洞が神域とされているそうだ。神聖な場所ということで、僕も入ったことはない。
話がちょっと余談に逸れたかもだけど、まぁ何が言いたかったかと白状すれば乳神家はものすごいお金持ちだってことだ。
山の麓の日本邸宅は木造で平屋造りではあるけれど、占有している敷地面積は非常に広いし、高級旅館的な風情まで漂う。やはり退魔師一族の家だからか、私有地内に道場まであるんだ。
僕がミク姉と運動……筋肉トレーニングをする時は、決まってこの道場で体を動かすのが常だった。
雨に濡れた土の、濃厚な匂いが窓から入り込む。
ミク姉は元剣道部なので、紺の袴と真っ白な道着を綺麗に着て、素足。
髪はポニーテールに結っている。
普段は控え目で物怖じがちな態度が多く、なにかと困り眉になっていることが多いミク姉。
しかし、道場で道着に身を包んだ彼女は、凛とした気配を滲ませて清澄な面持ちだ。
キチッとした着こなしも合わさって、カッコいいとすら言える。
剣道の腕前もたしかなものらしく、部活を辞める前は全国大会出場も嘱望されたとか。
が、そんな彼女が剣道部を辞めた理由は、一目瞭然。
たとえどれだけ凛とした佇まいでキチッとした着こなしをして、清澄な雰囲気を漂わせていても……
(──デッッッッッッッッッッッッカッッ!)
純白の道着を内側から盛り上げる大きな膨らみ。
窮屈な胴には決して入りきらない二つの名峰。
清楚美人の肩書とはあまりに不釣り合いなおっぱい。
おっぱい。くそぅ、なんだあれ。一年経ってもぜんぜん見慣れないぞ。デカすぎる……
「──ミク姉」
と、ゲスな思考はおくびにも出さず。
いつもこうして澄ました顔で頬の内袋を噛んで、口内炎を作りながら素知らぬ顔を保っている僕の苦労を、ミク姉はまったく知らないだろう。
その証拠に、目と目が合うとミク姉はいつもと同じく少し目を逸らしかけてから、照れたようにはにかんで唇を開ける。
「柚子くん……じゃ、今日もしよっか……?」
「はい」
「ふ、ふぅ……なんだか今日はとても蒸し暑いわね……?」
「梅雨ですからね」
「も、もし暑かったら、少し道着を着崩してもいいのよ……?」
「ハハ。そうですね。まぁ、ミク姉と違ってインナーは着てないので、こうしてパタパタやってやれば、ほら」
「!」
「結構スースーするので、今のところは大丈夫ですよ」
「…………ふ、ふふ〜ん? じゃ、じゃあ、準備運動をしたら、腕立て伏せからやろうかしら……」
「了解です」
はだけた襟元に注ぎ込まれる瞬間的に充血した視線には、まったく気付かぬフリをしながら、僕はミク姉と一緒にストレッチとか関節の準備運動を行なった。
二人一組でやる柔軟運動の時、ミク姉は心なしかいつもより力が強くなる。
互いの足裏をくっつけて、開脚した状態で両手を繋ぎ、シーソーのように1、2、1、2、とやる段になると、体が温まってきたからかミク姉の頬は上気して、しとっとした肌の感触を与えながら僕を引っ張る力などとてもすごい。
退魔師にはエネルギーサーキットと言って、なんか霊力とかそういうファンタジーパワーが流れているものがあるそうなので、たぶんそういう力を使っているんだろう。
「ん、っ、ねぇ、柚子くん……?」
「……なんです?」
「私ね……柚子くんがトレーニングに真剣だって知って、本当にすごく嬉しい……」
「──まぁ、まだまだっ、理想のボディには……っ、程遠いですからっ、ね」
「でも、今のままでも結構いい身体だと……あっ! ご、ごめんね? セクハラじゃないからね……!」
「気にしませんよ」
ミク姉に逆セクハラされて喜ばない男はいないだろう。
少なくとも、僕は余裕でウェルカムだった。
特に、ミク姉の両腕を引っ張って木目調の床に上体を引き倒すとき、その身体の下敷きになって爆乳がぐにゅん♡ と潰れる様(それも僕の足の間、股間の前でだ!)を確認できる特権を味わっているときは、口内出血しながらも至福を覚える。なぁにあれすごぉおい!
「それに、いつもこうしてミク姉に付き合ってもらってるのに、たるんだ身体でなんかいられないですから」
「っ……は、はふぅ……」
「え?」
「ウッウン! 私も、男の子には筋肉があった方が……す、好きなの……!」
でしょうね。それは時折りギュンッ! と鋭くなる視線や、トレーニングサポートという大義名分を得た時のボディタッチの多さから完全に分かっていました。
僕が黙ってストレッチに集中しているフリを続けていると、ミク姉は少しテンパったのかやや早口になって続けた。
「私もね、トレーニング好きなの。だ、だって、ストイックなのって素敵でしょ……? 自分を追い込んで、追い込んだ分だけ結果が厳格に肉体に現れるの。そ、それってとってもやりがいがあるわよね……!」
「ですね」
「ハァ、ハァ……私ね? 自分のカラダでも他人のカラダでも、とことん虐め抜かれた証が分かると、すごくき、気持ち良さそう……って! 思っちゃうの……柚子くん、私って変な女の子……?」
「いいえ」
ミク姉の肉体は、まさに二次元ボディだ。
現実にこんなスタイルが実現しているなんて、僕は毎日感動で打ち震えそうになる。
きっとこれだけのプロポーションを磨き上げるには、さぞかし眠れない夜もあっただろう。
女性らしい丸みに非常に富みながらも、締まるところはしなやかに締まった美しさ。
たとえミク姉がストイックというよりかMの領域に踏み込んでいたとしても、その性癖のおかげでこんな美少女が毎日拝めるなら、感謝である。
「僕はミク姉のそういうところ、いいなって思いますよ」
「! は、はわわ……」
ミク姉は不意に力が抜けてしまったようで、僕の手を離して自身の顔を隠した。恥ずかしがり屋なのである。キザっぽいムーブも、こういう反応がいちいち可愛らしいので何とか頑張れるぜ。
シーソーストレッチを終えて、ミク姉と僕は互いに頭を突き合わせる位置に着いて、腕立て伏せを始めた。
顔を上げると、ミク姉もこちらを見ていて、僕たちは互いに見つめ合いながら、息を揃えて上下に体を動かす。インナーを着ているとはいえ、さすがにこの体勢になればミク姉の胸元にも隙が生まれる。
首元から浮かび上がり、顎へ伝ったり、鎖骨に流れて谷間に落ちていく汗。
大きすぎるおっぱいのせいで、腕を曲げると床におっぱいが当たってしまって、厚手の道着なのにハッキリと丸みを帯びた輪郭がむにゅ〜♡ と歪む暴力的視覚情報が伝わり、腕を伸ばしたら伸ばしたでゆさっゆさっ♡ ふるっふるっ♡ とこちらも破壊力がヤバい。
──さぁ、ここからが関門だ。
ミク姉はしきりに目を逸らしてはすぐに目線を戻しつつ、何かを期待した目つきで僕の名前を呼ぶ……
「ねぇ……柚子くん」
「……分かってます。いつもの、ですね?」
「うんっ。百回まで行ったら、お姉ちゃん今日も勝負した方がいいと思うの……」
「──もちろん、望むところです」
「や、やったっ。じゃあ、今日は千回まで……チャレンジ♡ イける?」
「っスゥ────押忍」
「ハァ、ハァ、む、無理はしないでいいからね……じゃあ、始めるわね……いーち、にーぃ、さーん……」
ここから百プラス千回。慣れているから決してハードすぎるトレーニングメニューってワケではないけれど、終わった頃にはさすがに疲労困憊だ。
ミク姉はたぶん、筋肉フェチなんだろう。僕がマッチョになりたがっていると知られてから、こうした筋トレ勝負は日常だった。
勝負とは言うが、僕の感覚的には僕が頑張るとミク姉が明らかに喜ぶので、そのためにやってる感も強い。勝ち負けによる罰ゲームなども、特には決めてないし。
「──はぁっ! はぁっ! キッッッッッッツッ!!」
「……ハァ、ハァ、柚子くんすごい……!」
襟元どころから胸元まではだけてしまっていても、この状態になるとどうでも良くなる。
見たければ見るがいいさ。僕の未成熟な胸筋や腹筋を……
なお、ミク姉は退魔師パワーのおかげか、僕と同じメニューをこなしていてもまだ少し余裕がありそうだ。
悔しさも混ざって、僕は仰向けになって大の字で息を荒立てる。
そんなこちらに、ミク姉は覗き込むように顔を近づけるんだ。
「柚子くん……今日もすごく頑張れたわね……♡」
「っ、ミク姉……」
「頑張った弟には、お姉ちゃんが膝枕するわね……? 腕のマッサージも、しっかりしてあげる……♡」
「オッ、オオッ……!」
「もみもみ♡ こうやってしっかり揉みほぐした方が、乳酸菌を排出しやすくなって、疲労回復と筋肉痛の軽減にいいから……♡」
ああ──スッゲェ……空が見えねえ……
後頭部に感じる袴越しの太腿肉の感触と、頭頂部に感じる女の子のお腹。
目と鼻の先に広がる汗と湿気でムレムレの道着……手を伸ばしたらすぐそこにユートピアがあるのに、両腕は拘束と疲労で動かせない。
鼓膜に届く甘やかな義姉の声と、こちらの腕のマッサージのために少しだけ前傾姿勢になったせいで、実は顔面に伸し掛ってしまっているおっぱいの重厚さ……これ何kg? 片乳だけで6以上あるんじゃないの?
うおおおおぉ、アッッッッッッッッッマッッ!!
僕は頬の内袋だけじゃなく、舌も噛んで疲れマラを抑え込んだ。痛覚信号で勃起を封印する技だ。これはポンポンペインにも通じる秘技。乱発は効かないし所詮は時間稼ぎにしかならないけどね。
ああ、梅雨だ。