童貞、告白する。そして彼女が恋人面から彼女になるんですけど!?
日曜の夜。
帰宅してシャワー浴びて、部屋着に着替えた俺は──
ベッドの上で転がりながら、スマホの通知を眺めていた。
LINEの通知:藤堂カレン(6)
内容:
・「今日はありがと♡」
・「空くんがちょっとだけデレてくれて、心臓死んだ」
・「今、鏡の前で“告白されたときの顔”の練習してる♡」
・「“そんな…うれしい…”の練習中」
・「あと5パターンぐらいあるけど披露しようか?」
・「やっぱ恥ずかしいから、直接告白してくれてからにしよっか♡」
──おい待て。
今の完全に、告白待ちの構えやんけ。
わかってる。
わかってるんだよ、俺だって。
俺は、カレンが好きだ。
たぶん、最初は強引すぎてただウザいだけだった。
でも、気づけば自然にそばにいて、笑わせてくれて、泣きそうな時に黙って隣にいてくれた。
……ああもう、めんどくせぇ。
言うか。
今言わなきゃ、たぶん一生、
この自称元カノに振り回され続ける。
なら、彼女にしてしまえばいいじゃないか。
──ピンポーン。
夜の10時。
インターホンの先には、当然のようにカレンがいた。
「来ちゃった♡」
「知ってた」
「だって空くん、“告白の顔してた”もん」
「は?顔に出てたの!?俺そんなバレバレだった!?」
「めっっっっちゃ出てた。
目が『今から俺、青春しちゃうぜ?』って言ってた」
「中二ポエムやめろや!!!!」
俺は深呼吸を一つして、言った。
「カレン。……好きだ」
その瞬間、カレンの表情がふわっとほどけた。
「……やっとか〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「えっ」
「もうっ!ずっと待ってたんだよ!?
どんだけ“好き”って言わせたら満足なの空くんは!?
こっちは毎晩、“藤堂カレン、彼女になる妄想”してたんだからね!?」
「うるせぇ!!!急にしゃべるな!!!」
「ちなみに今、鏡で練習した“喜び顔パターン1”だからね♡」
「それ言うな!!感動のムード返せ!!」
「じゃあ、パターン2も見せるね?“えっ、うそ……本当に……?”バージョン!」
「そのテンションで続けるとこっちが恥ずかしいんだけど!?」
カレンは、でも。
ちゃんと目を見て、まっすぐ言ってくれた。
「私も、大好き。空くんの全部が。
童貞なとこも、顔芸がうるさいとこも、照れてすぐ話逸らすとこも、ぜーんぶ含めてね♡」
「……はぁ、もう……ほんと、バカだなお前は」
「うん、空くんのバカ♡」
「……俺の人生、終わったな……」
「始まったんだよ、彼氏くん♡」
──その夜から、
“自称元カノの隣人”は、ガチの彼女になった。
翌日。
大学の昼休み、俺とカレンが手を繋いで歩いてると──
「芦屋ぁぁぁああ!?彼女できてるぅぅぅう!?!?」
「ていうかお前らずっとそういう関係だっただろぉぉおお!?」
「爆発しろぉぉおお!!」
──学内に、怒号と歓声が響き渡った。
「ふふ、これでみんなに“公認彼女”ってわけだ♡」
「お前、初手で“元カノ”って爆弾投下してたの忘れてねぇからな」
「うっかり♡」
──こうして、童貞大学生・芦屋空は、
無敵のヒロイン・藤堂カレンに押し切られ、
キスもしてないのに、リア充最終形態へと進化した。
でも、悪くない。
……いや、むしろ──
最高だろ、この人生。
【完】
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