風邪ひいたら、隣人が布団に潜り込んできたんですけど!?
土曜の朝。目覚めた瞬間、全身が重い。
のど痛い、頭もズキズキする。
……ああ、完全に風邪だ。
原因はわかってる。
昨日、ゼミ中に冷房ガン冷えの教室で寝落ちしたせいだ。
誰か、俺の人生をセーブからやり直してくれ。
「うう……しんど……」
声がカッスカスになってて自分でも笑える。
水飲もうと立ち上がって、ふらっと倒れかけ──
「大丈夫!? 空くん!!」
──ドアがバンッ!って勢いで開いた。
そして、見慣れた美少女が飛び込んできた。
「……カレン……? え、おま、なんで……」
「LINEの返信ないから心配になって来たら、鍵あいてて……!
空くん、大丈夫!? 顔、めっちゃ熱いよ!!」
「え、いや、鍵……!? 勝手に入るなって……」
「え〜、でもさ。恋人(仮)なら当然でしょ?♡」
「仮でここまで来るな!! てか俺、今、風邪菌フルチャージしてるんだけど!!」
「うん、吸い込み済みだから大丈夫♪」
「バカか!?免疫舐めんな!!」
そんな会話をしながらも、カレンは慣れた手つきで氷枕セット、ポカリを差し出し、冷えピタ貼って、タオルまで取り替えてくれた。
「……いや、なんか……ごめん。めっちゃありがたい……」
「うふふ。いいのいいの♡
私はね、こういうときのために料理と看病スキル磨いてきたから♪」
「いや、何に備えてんの!? 俺の人生、ルート固定されてるの!?」
「※藤堂ルート確定済みです」
「怖ッ!!!なんでナチュラルに恋愛シナリオ通してくんの!?!?」
しばらくして、カレンが部屋の照明を少し暗くして、静かに座る。
「……ねえ、空くん」
「ん……?」
「本当はさ、空くんが“私のこと、必要としてくれる瞬間”を、ずっと待ってたんだよ?」
──その声だけは、冗談じゃなかった。
「空くん、誰にも頼らないし、いつも一人でがんばってるから。
だから風邪って聞いて……ちょっと嬉しかったの。
私が、必要って言ってもらえるかもって……」
……くっそ、なんだよそれ。
ずるいだろ。
その一言で、**体温2℃ぐらい上がったわ。**いや物理的にももう死にそうだけど。
「……ありがとう、カレン」
「うん♡」
「でも……布団に入ってくんな!!!!!!」
「えっ!? なんで!?!?」
「いや当たり前だろ!? 恥じらいって知ってる!?」
「大丈夫!上は着てるから!!」
「下は!!?」
「想像におまかせしま〜す♡」
「出てけええええええ!!!!!」
こうして、俺の人生初・“風邪イベント”は、
ヒロインの全力スキンシップアタックにより、精神ダメージ+10000を受けて終了した。
──次回、「童貞、デートする。水族館でクラゲとキス……は阻止したい」
ヒロイン、デート計画で暴走。童貞、手汗と鼻血が止まらない──!!