大学でも恋人ヅラしてくるんですけど!?
翌朝。目覚ましが鳴る直前、俺は夢を見ていた。
隣人の自称元カノに、なぜか炊飯器で頭を殴られるという意味不明な夢だ。
これは……予知夢だったのだろうか。
「空くん、起きて〜♡ 朝ごはんできてるよ〜♡」
まさかの、本当にいた。
朝の五時半、俺のキッチンに、フルメイク済みのカレンがいる。
「は?何してんのお前……。鍵閉めたよな?」
「うん、ピッキングした♡」
「犯罪だわ!!!!!!!」
「嘘だよ〜。朝のゴミ出ししてたら、ちょうど管理人さんが通っててね、あとはお察し♪」
「管理人今度焼き土下座な!!!」
テーブルには、味噌汁・焼き魚・ほうれん草のおひたしという完璧な和朝食が並んでいた。
「え、すご……クオリティ高……」
「ね?ほら、“嫁力”感じた?」
「嫁力で家庭侵略すんな!」
その後、俺は半ば強引にカレンと共に登校することに。
当然、学内はざわつく。
「芦屋……女連れてんぞ」
「うわ、めっちゃ美人……え、あれ彼女?マジ?」
「いやいや、芦屋が女と!?そんなバカな!」
「おい、俺たちの空が……」
「天に召されたんだよ、あいつは……」
黙祷やめろ。
案の定、友人たちにも囲まれた。
「なあ空、説明して? どゆこと?」
「どゆことって言われてもな……」
カレンは満面の笑みで言った。
「元カノで〜す♡」
……爆弾投下かよ。
「まさかの元カノ!?過去にそんな子いたか!?」
「おい空、お前リアルギャルゲーしてんのかよ!」
「ふざけんな、こちとら人生ずっとノベルスキップモードだわ!」
そんな中、なぜか講義中にも俺のLINEにカレンからメッセージが。
『今日の下着、いちご柄だよ♡』
講義中に送る内容じゃねぇ!!!
しかも俺のスマホ、音出た。通知音が「ぽよん♪」って鳴った。地獄。
教授の視線が鋭い。
隣の席の山田は俺を見る目が完全に“そういう人”になっていた。
──このままだと、俺は大学生活を失う。
放課後、耐えきれず問い詰める俺。
「いい加減にしてくれ!! 俺は普通の、地味な恋愛童貞なんだよ!!!」
「え〜、知ってるけど?」
「知ってるんかい!!」
「でも、空くんは私のこと、嫌いじゃないでしょ?」
「いやそれは……嫌いじゃないけど、でも……」
「じゃあ、いいじゃん♡ それで。
私、“彼女ごっこ”じゃなくて、“本気”だからね?」
……え。
カレンは、冗談っぽく笑いながらも、その目だけは真剣だった。
その瞬間、俺の心臓がドクンと跳ねた。
まって、なにこの鼓動。
やばい、これ──恋じゃね?
俺はとっさに叫んだ。
「お前、ほんとマジでヤバい奴だな!!!!」
「うん、それは自覚ある♡」
「開き直んな!!!!」
こうして俺の“元カノヅラ隣人との学内戦争”は、ますます混迷を極めることになるのだった。
──次回、「童貞、風邪をひく。ヒロイン、嫁力MAXモードに突入」
熱に浮かされた俺に、カレンがまさかの看病&ときめきフルコンボ!?マジで死ぬ。