はい予定通り婚約破棄。これで攻略対象の皇子は私ルートです
この作品は別途連載中の『婚約破棄って正気ですか? わたし悪役聖女なんですけど ——悪役令嬢に転生した元聖女は滅亡予定の隣国を立て直します——』のいち部分になりますが、単独で読むことができます。
もし上記作品を読まれている方は重複内容となります。いつもお読みくださりありがとうございます!
婚約破棄しておいてこんなことを言うのはずるいかもしれないが、リズ・ブラックヴィオラはとても可愛らしい少女だ。ブラックヴィオラは武器商会を抱える公爵家であり家柄としても申し分なく、だからこそノーザウン第一皇子である自分の許嫁だった。
彼女はいつもつんとした表情をしていた。成績優秀でなにをやらせても上手くこなしたが、それを褒めると「当然です。ブラックヴィオラの娘ですので」と誇るともなく言うのだった。逆に何かを失敗すると、すぐどこかに行ってしまうので彼女がなにを思っていたのかは知らない。
幼馴染であったとしても、リズは僕に対して心を開いていなかったと思う。たまに喋る機会があったとしても、リズは捲し立てるか黙り込むかのどちらかだった。
ただし、僕は彼女に過剰な期待をしていたことは否定しない。
僕はリズがいずれ、この国を救う人になるかもしれないという希望を抱いていた。
ノーザウンには、音術と呼ばれる力がある。
これは歌の力で他人を操る能力だ。この力をどれほど使いこなせる人物を排出できるかによって、近隣諸国との力関係が決まるとさえ言えた。
リズの声は美しかった。
彼女が喋れば自然と人が集まってきて、皆彼女の話を聞きたがった。
美しい声というのは、音術を使うものにとってとてつもないアドバンテージであり、この国一の音術師になるのは彼女だと誰もが信じていた。
しかしリズは堕落し、言動も支離滅裂となり、次第にその能力さえも衰えているように見えた。
「リズ・ブラックヴィオラ。僕は君との婚約を破棄する」
そう口にしたのは僕にとって、あるいはカノンにとってそれが必要だったからだ。
カノン。
ファミリーネームさえ持たない庶民の女の子。
ただしあまりにも美しい声を持ち、リズに負けないほど優秀で、彼女とは違う快活で朗らかな女の子。
僕はカノンを幸せにすると決めたのだ。
カノンは十四歳のときにノーザウン国立聖歌学園の音術部へ入学した。
僕は騎士部のためそれほど繋がりがあるわけではないが、しかし彼女はよく話題に上がった。
「庶民に入学を許可するだなんて、学園はどうかしてるな」
国立聖歌学園へ入学するには高い寄付金と口利きが必要だ。はっきり言えば貴族以外に入る余地はなく、それでもカノンが学園の門を潜れたのは学園長が彼女の才能を見出したかららしかった。
「もう学園長も朦朧してるんだ」
同級生がそんなことを口にするのも無理はない。国立聖歌学園に入学するということは、この国を背負って立つ覚悟を持つということで、それ相応の教育を受けてこなかった庶民には甚だ重すぎる責任だと、僕も思ってしまう。
「そう言うな。きっと学園長にもお考えがあるんだろう」
「はいはい。さすが皇子様は優等生でいらっしゃる」
本来は気のいい仲間までもがカノンに対して違和感を持っているようだった。直接的な関わりのない騎士部でさえもそうなのだ。
だとすれば、音術部であれば尚更。
「あの……次の授業はどこの教室で行われるのでしょうか」
「はぁ? 自分で確認しなさいよ」「てゆうか話しかけないで」「はは、学園の外にでもあるんじゃな〜い?」
困った表情を浮かべるカノンは、しかしクラスメイトから邪険に扱われている。
もし彼女が貴族であればそうはならないだろう。
僕は廊下でたまたま見つけた彼女たちの間に割って入った。
「カノンさんの次の授業の場所を、僕から尋ねてもいいかな?」
「しゃ、シャルル皇子!」
僕はとびきりの笑顔で音術部の少女たちに尋ねると、彼女たちの動揺が見て取れた。
「……おうじ?」
一方でカノンはぽかんとした表情を浮かべている。貴族といえど村社会だ。皇帝にでもならなければ、庶民に広く顔を知られることもない。
「し、失礼しました。こちらです」
決まりの悪い表情を浮かべながらも、一人の少女が案内を開始してくれた。
「ほら、あなたも行こう、カノンさん」
「は、はい」
カノンは小動物のような少女だ。
短い黒髪にクリクリとした目。庶民は貴族と比べ食料が豊富ではないので大抵は小柄になり、彼女も多分に漏れない。
ピョコピョコと跳ねるように、彼女は僕たちの後についてきた。
僕はカノンを退け者にしようとした一人に耳打ちした。
「平民は、守るものだよ。貴族であればね」
本来貴族と平民が交わることはない。
だから、異物がやってきてしまうと自分を見失ってしまうものだ。それでも、僕たちは誇りを忘れてはいけない。同じレベルで争うべきじゃない。
恥ずかしそうに少女は頷いた。
ついで、カノンの方を見て、微笑みかけた。もう大丈夫だという意味を込めて。
彼女は右目の下を人差し指でひっぱり、なおかつベロを出していた。
ん? どゆこと?
それはあれだろう。いわゆる、あっかんべーという表情だろう。
はぁ?
どゆこと?
僕、皇子だよ?
え? それっていま皇子である僕が、庶民の女の子に馬鹿にされたってこと?
意味わかんないんだけど。
僕は自分の顔がどんどん熱くなっていくのがわかった。
めっちゃムカつくんだけど。ムカつくムカつく。
本当にムカつく。
こんなにムカついたのは、生まれて初めてだ。
◆ ◆ ◆
ノーザウン帝国の第一皇子として生まれた僕は、常に「いずれこの国を統べるのだ」と言って育てられた。国に繁栄をもたらし、民を豊かにするのだと。
おまえは特別だ。
おまえは誰よりも勤勉であらねばならない。
おまえはいずれ、皇帝になるのだから。
だからこそは、庶民とは違うし、もっといえばそこらの貴族とも違う。
誰よりも責任を背負っており、努力だって怠らない。
僕は皆に祝福をもたらし、それにより尊敬を抱かれるのは当然で。
なのに、なぜ僕が馬鹿にされなければならないのか。
出会ってからというもの、僕は頻繁に彼女の元を訪ねた。
「カノンさん、何か不便はないか?」
「王都での暮らしは慣れたかい?」
「困ったことがあればなんでも頼ってくれていい」
とにかくカノンは、僕を尊敬するべきだ。
僕という存在によって、彼女が守られているということをわからせてやらなければならなかった。
しかし彼女は、僕が愛想を振りまいてやっているというのにまったくいい顔をしないのだ。
「快適に暮らしています」
「実家のように居心地がいいです」
「困ったことはあるにはありますが、皇子に話すことではないですね」
「……そんな、遠慮することはないさ。確かに僕は皇子だから、君からすれば同じ空気を吸うことも憚られる存在かもしれない。しかしだね、僕は君が庶民だからと言って決して差別はしないし、本当に力になりたいと思っているんだ」
萎縮しないように、とびっきりの笑顔を向ける。
そうすると、大抵の女子は顔を赤らめるものだ。
しかし、カノンは違った。
彼女は人生で出会ったこともないほどの真顔を浮かべ、僕に言った。
「では、一つ相談がございます」
「おお、なにかな?」
「皇子のせいで、私の立場が悪くなってるんです」
……皇子の……せい?
それって、誰のこと?
皇子といえば、ノーザウンでは僕ことシャルル・メルバーティと、弟のパル・メルバーティのことを指す。しかし、パルは現在病床についており他人の立場を悪くできるわけがない。
では、外国の皇子を指すのだろうか。そんな想像をしてみるが、この学園に他国の皇子は所属しておらず、可能性は薄いだろう。また、庶民である彼女が他国の貴人と関わりがあるとも考え辛い。
そうなると、考えられるのは一つ。父に、婚外子がいるということだ。
もしかすると現皇帝は、市井で女性を作り、その間に子を儲けたのかもしれない。その子は国に認知されずとも、自分自身が皇帝の子であることを知っており、皇子であると公言していた。
彼はなんらかの事情でカノンと知り合い、そして現在も彼女に迷惑をかけているということか。
「その皇子というのは誰だい? 僕の力で、なんとか解決に導こうじゃないか」
「はぁ? あなたのことですけど」
え?
あなたって、僕のこと?
「はは、ごめんね。聞き間違いをしたからもう一度訊ねたい。君の立場を悪くしてるのは、誰かな?」
「シャルル・メルバーティ皇子です」
「——いやいやいや、ちょっと意味わかんない。本当に。僕ってなんていうか、生まれてからこのかた他人に迷惑かけたことなんてないんだけど? そりゃ、まだ皇子として至らない部分はあるよ? でもそれだって、懸命に努力してるし着実に実を結んでいる最中で——」
「ええ、皇子は素晴らしいんだと思います。みんな皇子のことが大好きですもんね」
「だ、だったら」
「シャルル皇子と仲がいいと思われると、みんなが嫉妬するんです。女子も男子も。そのくらい察してください」
「……な、なんだ、そういうことか!」
ずっとジト目で見られ続けていることは気になるが、しかしそういうことであれば理解できる。
確かに僕はこの国で特別な存在。
その僕に特別に目をかけられていると勘違いされれば、妙な詮索をされることも致し方ないかもしれない。
「ならばその問題をぜひ解決して見せようじゃないか!」
そうすればきっと、カノンも僕のことを尊敬の念を向けるはずだ。
「いえ、だからシャルル皇子こそが問題の根源だと言っているのですが」
「わかるぞ、言いたいことは。はっはっは。大丈夫だ、僕に任せてくれれば、何も心配はいらないさ」
いまカノンは、何やら頭を抱えて下を向いている。
大丈夫。
庶民の辛さ、その心の痛み。
皇子である僕がすべて開放してやろうじゃないか。
◆ ◆ ◆
確かに僕は目立つ存在だ。
僕が直接カノンと接するのは、確かに特別扱いしているように見えるのかもしれない。
つまり彼女の後ろ盾が僕ではいけない。
「ということだ、リズ。どうか君にカノンがクラスに溶け込めるよう取り計らって欲しい」
テラスでお茶を飲みながら、僕はリズに依頼することにした。
僕は騎士部で、そもそもカノンとの接点が少ない。その結果として廊下などの目につきやすい場所で気がついたときのみ対処することになってしまう。
音術部で起こる問題は音術部で解決すべきで、リズであれば家柄も抜群で適任に違いない。
それなのに。
「それ、まったく同じだと思いますが」
「え? どゆこと?」
「それはカノンさんを特別扱いするのがシャルル様か私かの違いでしかありません。カノンさんはブラックヴィオラの人間に目を掛けられているという理由でまた誰かの不興を買うだけでしょう」
「……それは……確かに」
迂闊だった。
リズは家柄がいいから後ろ盾になれると思ったが、それが仇になるとは!
「まぁ、とにかく仲良くしてやってくれ。学園で不和があるのは気分のいいことではないだろう」
僕は貴族として当然のことを言ったつもりだが、彼女はムッとした表情を浮かべぷいとそっぽを向いてしまった。
「嫌です」
「え、嫌なの? なんで?」
「言いたくありません」
リズは時折、こうやって喋ってくれなくなるときがある。
リズは一気にお茶を飲み干して、「失礼しますね」と席を立ってしまった。
◆ ◆ ◆
リズに断られてしまったので、カノンの居場所を学園に作るために別の方策が必要だった。
ただ直接僕が接触することは止めるよう言われていたため、方法が思い付かないまま数日が過ぎていったころ、学園では祈音祭が始まろうとしていた。
祈音祭は音の神を祭るイベントで、神の遣いが一人選ばれ聖歌を唄う大役を任される。その人物は学園一の歌い手とされた。
「今年はカノンかもしれないんだって」
「え、平民なのに? リズ様じゃないの?」
「まぁ実際、カノンの歌声ってすごいのよね〜。ずっと聞いていたいわ」
どうやらカノンの実力は本物で、結果として彼女は自然とクラスに居場所を作りつつあるらしかった。噂話も少しずつ悪意が剥れているのがわかる。
カノン本人も凄いのだろうし、さすがは聖歌学園の生徒たちだ。貴族とはかくあるべしと皇子として誇りに思う。
ただ、それでは一点困ったことがあるのも確かだ。
「カノンが僕を尊敬しないじゃないか……」
これではまるで僕がカノンから距離を置いたことで居場所ができたかのようだ。カノン自身がそんな風に勘違いしてしまうかもしれない。
皇子である僕に対してあっかんべーなどという愚行を行ったカノン。
なんとしてもカノンが僕を尊敬せねばならないというのに!
「どうしたのシャルル。またカノンを見つめちゃってさ」
「か、カノンが気になる!? 何を言ってるんだフランソワ」
僕に話しかけてきたのはフランソワ・リーリッカルド。
緑がかった長髪で細身。制服には独自の意匠を施した変わった優男で、昔からの付き合いだ。
「まさかリズちゃんから乗り換えるわけ?」
「な、何を言ってるんだ! 別に見つめていたわけではない。ただ庶民がこの学園にうまく馴染めているか心配していただけだ」
「なるほどその結果として見つめていたわけか」
フランソワのからかうような視線が癪に触る。
「まぁ確かに見つめちゃうのはわかるよ。ああいう子は貴族社会にはいないもんな」
「ば、バカ! 本当にそんな意味はない。僕は本当に貴族として、庶民の暮らしを守る義務が——」
「——へー、そうなんだ!」
フランソワはニヤリと笑った。
「じゃあ僕がもらっちゃってもいいね」
「も、貰う? おまえが? それはどういう意味だ」
「はぁ? 文字通りさ」
「おい正気か? あれはただの庶民だぞ?」
「それのなにが問題なのさ。もっともただの庶民じゃないよ。彼女は神の遣い候補で、いずれ大音術師になって国の要職につく可能性がある。そしてなにより、可愛いじゃないか」
僕はフランソワの言葉が理解できない。
「おい……おまえは仮にもリーリッカルド家の長男だろう。許嫁だっているじゃないか」
「家督なんて弟にでもくれてやるさ。まぁシャルルがカノンちゃんに興味がないって話が聞けたのはよかったよ。じゃあね。あ、カノンちゃ〜ん」
フランソワはすぐさまカノンに小走りで駆け寄り、何やら楽しげに話し始めた。
離れているため何を言っているかはわからないが、フランソワの軽口にカノンが笑っているのが見て取れた。
その様子に、僕はどういうわけか心がざわついた。
不思議だ。
カノンがこの学園に居場所を見つけたのであれば、それは素晴らしいことに他ならないのに、僕はそれが悪いことに思えてならなかった。
なぜ僕はそんなことを思っているのだろうか。
「どうかしましたか、シャルル様?」
振り返ると、そこにはリズが心配そうな表情を浮かべていた。
僕は一体、どんな顔をしていたのだろう。
「いや、なんでもない」
「なにか心配事があるなら、お聞きしますが」
「一人になりたいんだ」
「ちょっと、シャルル様」
なんとなくリズから距離を置きたくて、僕は早足で歩いた。なぜか僕は、リズと二人でいるところをカノンから見られることにためらいを覚えた。
廊下を歩く僕の耳には、祈音祭のことを話す生徒たちの言葉が届く。
「カノンが神の遣いになったら、それは快挙なんじゃないの?」
「いや〜、実際は決まってるんじゃないか? 結局は家柄だろ」
「リズな〜。自分が神の遣いになれるように、根回ししているらしいよ。まぁ皇子の婚約者だから、なりたいって思えばなれるんだろうね」
リズが根回し?
そんな噂を聞くと、先ほど自分に珍しく接触してきたのもそのためだと思えてくる。
誰が神の遣いになるか。
それは現時点で学園一の音術師が誰かということで、とても重要な選出だ。
それを歪めるのは、ひいては国力の低下にさえ繋がると言える。
いくらなんでもリズがそんなことはしないだろうと思うが、しかしモヤモヤとした得体のしれない感情が僕の中で蠢きつつあった。
◆ ◆ ◆
「パル、そろそろ祈音祭でさ、みんなその噂で持ちきりなんだ。なんでも今年は、平民が神の遣いに選ばれるかもしれない。そんなことは前代未聞だからな。きっと楽しい祭になるぞ」
床に伏している弟に僕は話しかけた。
彼は決して反応しないし、ましてや喋ることはない。自発的に喋ることはないが、口から飲み物やおも湯を流し込むと反射みたいに飲み込んだ。
まるで食虫植物みたいにパルは生きていた。
その奇怪な食事と、規則的な胸の上下こそ彼が生きている証だった。
もう一年も前からこうなっており、誰が彼をこうしたのかはわからない。文字にすれば病床に伏しているとなるが、パルは病気ではなかった。何者かの音術の影響だと、医者も音術師も口を揃えた。
誰かがパルに呪いを掛け、それは第一席の宮廷音術師でも解くことができないでいた。
日に日にパルの手足がやせ細り、一方で表情ばかりが穏やかだった。
いつかお兄様に追いついてみせます。
そういって僕の後ろを追いかけ回してきた彼の姿はない。
「その庶民っていうのは、カノンっていうんだけどな、本当にすごいらしいんだ。みんな美しい歌声だって言っててさ。きっと僕も彼女が神の遣いに選ばれると思ってる。彼女はきっと、パルの呪いだって解くと思うぞ。だから、そうやって寝てられるのもきっと今だけさ」
ぽんぽんとパルの胸を叩いて、そのまま手のひらを当てる。
とくんとくんと、彼の心音が伝わってくる。
大丈夫、生きている。いずれ誰かが彼の呪いを解いてくれる。
数ヶ月前、僕はリズに彼の呪いを解くことを依頼した。
リズが聖歌学園で一番音術の能力が高かったからだ。もちろん、国家第一席でさえ解くことができなかったのだから、それが難しいことは当然わかっていた。
あたりまえではあるのだけれど、リズはパルの呪いを解くに至らなかった。
「複雑な術がかかっているのだと思いますが、今の私にはなんとも……」
リズは額に汗を浮かべながらそう言った。
その言葉は、僕の微かな希望の火を消し去った。
リズにパルを助けてもらおうなど、ないものねだりに他ならない。しかし、僕に頼り先が見つからないのもまた事実だった。
現状、国トップでさえもパルの呪いを解くことはできない。
であれば、さらに才能豊かな人物が現れるよりパルが助かる道はない。僕自身に音術の才能はなく、結果として他人に頼らざるを得ないのはもどかしい。
他人頼りで勝手に絶望することは、なんとも不誠実かもしれない。
しかし不誠実であったとしても、僕はパルに再び意識を取り戻して欲しかったのだ。
◆ ◆ ◆
「けっきょく神の遣いに選ばれたのはリズちゃんみたいだね。どう? 婚約者として鼻高々?」
フランソワが揶揄うように僕の肩をぽんぽんと叩いた。
彼のいう通り、リズが神の遣いとなったようだ。
それはこの学園でもっとも優れた音術師がリズだということ。少なくとも学園長はそう考えた。
「別に、僕には関係のない話だ」
「冷た〜。まぁもっとも、それでよかったかもしれないな〜」
「……よかった?」
フランソワは少し悩ましい笑みを浮かべた。
「カノンちゃんは結構みんなから人気だからさ。ワイズリーもドノバンも彼女を気にかけてるって噂だ。もし彼女が神の遣いになんてなっちゃったらますますモテちゃうからね」
「……庶民と我々が釣り合うとは思えないな」
「わかってないな〜、シャルル。ほら、行こう」
フランソワは騎士部の授業をすっぽかして僕の腕を引っ張って行った。ついた先は音術部の講堂で、そこにはリズやカノンが授業を受けていた。
「おい、フランソワ。こんなことは」
「しっ! 見つかっちゃうよ!」
僕たちは部屋の外からその様子を覗き見ていた。
教官の指示に従って、皆が一斉に発声練習をしていた。それはただの発声練習ではない。音術の発声練習だ。
どういう理屈かは僕にはわからないが、それを聴いているだけで脳がクラクラしてくるようだった。
「なんというかさ、いい気分になってくると思わない?」
となりでフランソワの表情がだらしなく弛緩しており、自分は一体ここで何をしているんだという気分になってくる。
発声練習がおわると、今度は一人ずつ歌い始めた。
歌は有名な詩の一節で、さすがに音術部の生徒というべきなのだろう。まるで歌われる場面に自分が存在するような気分になってくる。
僕はときに狩人となって猪を追い、ときには子供に戻って友人と走り回った。
「すごいよな。ノーザウンでこれほどの娯楽はないよ」
フランソワのいうことはおそらく間違いない。
しかし、音術を娯楽に使うなどもっての外だ。
「音術に対する冒涜だ」
「じゃあ僕は涜神者でも目指すさ」
そして、聞き覚えのある声が聞こえた。
それはリズのものだった。伸びやかで美しい幼馴染の歌声。彼女の声はまるで弦楽器のように響き渡り、しかしそれよりも複雑な音色でさまざまな景色を描写した。
「やっぱりリズちゃんは違うな。神の遣いになるのもよくわかるよ」
確かにその通り。
しかし、そのリズでさえパルをどうにもできないという絶望感。
リズの歌声は、クラスメイトの大きな拍手と共に幕を閉じた。
「おい、フランソワ。ただ遊びにきただけだというのなら戻るぞ」
「しっ! 次だ」
立ちあがろうとした僕の頭をフランソワが押さえた。
別にもう自分たちの授業には間に合わないのだし、無理に反発する必要もないのかもしれない。
そして、喋り始めたのはカノンだった。
歌声ではなかった。
少なくとも自分には歌声には聞こえなかった。
いや、よく聞くとそれはリズムを刻んでいるのだとは思う。ただ、先ほどのメロディアスなリズとは全く違う、とても静かで自然な声だった。
気がつくと、僕は知らない世界に存在していた。
そこは真っ暗で、何もない。
とても不安で、心細い。
しかし、すぐ近くに誰かが存在していることに気がついた。
カノンだ。
カノンは僕に手を伸ばした。
僕は不安のあまりその手をとった。カノンはそれを拒まなかった。その手を握ると温かくて、心の隙間がカノンの血液で満たされるかのよう。
何が起きているかわからない。
現実と虚構が曖昧になり、僕は自分が立っているかさえ認識できない。
ただ闇雲に心地よくて、自分と世界が一体化したような万能感。僕はそれに身を委ねたい衝動にかられ、そして実際にそうしたのだろう。
耳に届く彼女の声が言う。
私はここだよ。
私はここだよ。
私はここだよ。
そうか、君はそこにいるんだね。
じゃあ僕も、ただここにいればいいのかな。
「——シャルル、目を覚ましなよ」
肩をゆすられ、そちらを見るとフランソワが僕を覗き込んでいた。
「もう終わったから、行こうか」
「……あ、ああ」
頭がぼんやりとしたまま、僕はフランソワに手を引かれていた。
◆ ◆ ◆
フランソワはカノンの素晴らしさについて滔々と話し続けた。
たとえ平民であったとしても彼女は音術師として、貴族などよりもよほど特別なのだと。
そうかもしれない、と僕も思った。
音術の素養が不足している僕でさえ、彼女の技量の特異さに疑いようはない。
楽しそうに笑うフランソワの側で、僕の頭の中ではずっとカノンの声が反響していた。
僕たちはまるまると授業をサボり、そのまま昼を迎え食堂へ。
鹿肉のシチューとパンは貴族身分としてはやや寂しいが、学園生身分としては上等だ。最近は近隣諸国が食品の輸出を絞っていることもあり、珍しい食事にはありつきづらくなっている。
四人掛けのテーブルを二人で陣取り、シチューを口に運ぶ。
悪くないが、香辛料が単調で塩辛い。
間もなくして授業を終えた生徒たちがどんどん食堂にやってきてテーブル座席がどんどん埋まっていく。人が溢れると、わざわざ中庭などで食べることが必要になる。
いよいよ席が埋まり始め、うろうろする生徒が現れたところでフランソワが声をあげた。
「あ、カノンちゃん! ここ座りなよ!」
視線の先に、カノンがいる。
ぽんぽんと椅子を叩くフランソワに彼女は笑いかけたが、僕の存在に気がつくと嫌そうに眉根を寄せた。
「フランソワくん。皇子の近くなんて恐れ多いので、別の席を探しますよ」
「あれ? 二人は仲悪いんだっけ」
「そんなことはないですが」
「じゃあいいじゃん。はいここね」
フランソワは立ち上がり、手際よくカノンを自分の隣に座らせた。
庶民の少女を誘うことが実に自然で、そういうフランソワの対人能力には感嘆させられる。
世間話も実に自然と舌から溢れ落ち、二人の間の身分差を感じさせない。
それはとても素晴らしいと思う一方で、楽しそうに話す二人が面白くはなかった。
話は自然と祈歌祭に向いた。
「いやー残念だったねーカノンちゃん。僕は絶対に君が神の遣いになると思ってたよ」
「そんな。全然ですよ。私なんてただの最近入学した平民ですからね」
「平民なんて関係ないよ。……実はさ、僕たちさっき授業をサボって音術部の授業を聴いてたんだ」
「え! ノゾキですか! いやらしいです!」
「あ、変な意味はないよ! ただ僕のお嫁さん候補を探していただけさ」
「変な意味だ!」
二人は仲良さそうにハハハと笑い合っていた。
「僕はカノンちゃんの歌声がやっぱり一番好きだな」
「それは恐れ多いですが……。まぁ先生たちが決めたことなので仕方ないです」
カノンにも悔しさがあるのだろう。
寂しそうにパクりとパンを口に運ぶ彼女はまるで小動物のよう。
「でもさ、実際どうしてリズちゃんに決まったんだろ。選ばれなかった理由は、何か聞かされた?」
「それは教えてもらえないでしょう。だって、それはリズさん以外の一人一人に説明しなくちゃいけなくなってしまいますよ?」
「そうかな〜? 神の遣い候補なんて今年はカノンちゃんとリズちゃんだけだったと思うけどな〜僕のリサーチによると」
「リサーチってお嫁さん候補のですか?」
「その通り! 音術部は素敵な子ばっかりだからね! もちろんカノンちゃんが一番だけど」
「軽いな〜」
そして二人はまた笑い合った。
「まぁでも、私よりリズさんの方が凄かったんですよ。あらゆる意味で」
「あらゆる意味?」
「家柄ももちろんですし、彼女は先生受けもいいですから」
——自分が神の遣いになれるように、根回ししているらしいよ。
僕はいつか聞いたそんな女生徒の噂を思い出した。
リズはコネクションを使って神の遣いになったのだろうか。
さらにカノンは続ける。
「私は平民なので……いえ、これは言ってはいけないですね」
「なんだ? 言ってくれ」
寂しそうなその表情を見て、僕は思わず口を出してしまった。
「いえいえ、皇子に聞いていただくことなんて——」
「僕は、君の歌声が素晴らしいと思ったんだ」
素直な言葉が口から溢れた。
フランソワに連れられ、こっそりと彼女が歌う様を見た。
そして僕は、その素晴らしさを知った。知ってしまえば、もう僕はそれ以前の僕ではない。
「恥ずかしながら、僕は皇子だから君の役に立てるだろうと思った。平民の君は、僕を尊敬すべきだと、そんな風にね」
「尊敬してますよ?」
「いいんだ。そういうのは」
きっと彼女から見て、僕に尊敬すべきところなどなかっただろう。
「僕は君を尊敬したんだよ。本当に、貴族か平民か、なんていうのは本当に関係ないんだなと、教えてもらった」
「……そんな」
才能か、努力か。
カノンの歌声が何によってつくられたかは知らない。僕が知っていることはそれが素晴らしいということだけだ。
だからその事実をもって、カノンは神の遣いに選ばれるべきだと思った。
僕は核心を、カノンに尋ねた。
「リズは僕の婚約者だから、神の遣いに選ばれたのか?」
現状、リズは次期皇妃だ。
たとえ学園の教師であったとしても、皇妃に恩を売っておきたい、あるいは恨みを買いたくないと考えるのは自然なことかもしれない。
特別だから。
そう。特別であるということは、暴力的なことなのである。
しかし、リズは首を振った。
そして、辛そうに口を開いた。
「リズさんは、私には痴れ者の血が流れていると……いえ」
「痴れ者の……血?」
僕はリズのことがよくわからない。
しかし、カノンに対してそんなことを言うだなんて。
「痴れ者なのだから、神の遣いには相応しくないと、先生方におっしゃっていたのを、私は聞いてしまいました」
真っすぐに僕の目を見る彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
僕はカノンにそんな表情をさせたリズに無性に腹が立った。
「リズめ。どうしてそんなことを」
「あ、でもリズさんを悪く言わないでください! あの、もう気が済みました! 皇子にそう言ってもらえて、それだけで十分です」
すぐに朗らかな表情でカノンが笑い、そして僕の手に彼女の手を乗せた。
彼女の手の温かさが僕に伝わり、僕は思わず握り返した。
カノンがとても愛おしくなった。
「……あれ〜、仲悪いんじゃなかったっけ? お二人とも〜、僕もいますよ〜」
先生一同が、リズを未来の皇妃だと認識していたとすれば、リズのいうことを重んじるのは理解できた。しかし、そんなことで結果が歪められるのは気が済まない。
ただし、それに関する明確な解決策は、すでに僕の中に存在している。
◆ ◆ ◆
祈音祭ではリズが神の遣いを務め、祈歌を歌い上げた。
聖堂には彼女の透き通った歌声が響き渡り、それが素晴らしいものなのは間違いなかった。ただし、ここにいる多くが別に適任者がいることもわかっている。
両手を握って祈るかたわら、女生徒から噂声が聞こえてくる。
「リズってコネで神の遣いになったのに、偉そう」
「しっ。皇子に聞こえるよ」
この日は夜会も行われ、学園の舞踏の間に多くの生徒が集っていた。
たくさんの生徒が順々に僕に挨拶にくるのは僕が次期皇帝だからで、目論見が透けて見えるのは寂しくもある。
そして、僕の目の前にこの日の主役、リズがやってきた。
真っ赤なドレスが、彼女の肌の白さを際立たせている。長い黒髪も手入れされており、本当に美しい少女だ。
ただし、その表情は浮かない。
「シャルル様。……お気分が優れないのでしょうか」
釣られて僕まで沈んでいたようだ。すぐさまとびきりの笑顔をリズに向けた。
「ああ違うんだよリズ。人が集まるのは、実はあまり得意じゃないんだ。まぁ、僕の立場でそんなことを言ってはいけないけれど」
「そんなことは。素直にされた方がよろしいかと」
「そうもいかないよ」
「……」
少しもの欲しそうに、リズはこっちを見ている。
「ああ、飲み物が切れているのか」
僕は手近にいた使用人に何か持ってくるよう指示をだした。
「あ、いいえ、そういうわけでは……」
「ところでさ、リズ。一つ相談があるのだけれど」
「な、なんでしょう。私にできることであれば、なんなりと」
「君はこの学園一の音術師だ。今日の祈歌も素晴らしかった。以前よりも、さらに上達しているのがわかる」
言うと、リズはうつむいてしまった。
表情はよく見えないが、耳は真っ赤に染まっていた。やはり、彼女は何を考えているかはわからない。
それでも。
もし、彼女の力が本物なのであれば。
僕の願いの一つくらい、叶えてくれないだろうか。
「今度こそ、パルを治すことはできないものかな」
「パルくん……ですか?」
「ああ、以前の君には難しかったかもしれない。しかし、改めて学園一の音術師だと証明された今の君であれば……どうだろう」
しかし、リズはそれに答えることができないようだった。
ただ蒼白になって、喉を詰まらせるようにしていた。
けっきょく彼女は、神の遣いになることはできてもパルを治してくれはしない。
「ごめん、無理だよな。第一席の音術師でも無理なのに。……だから、聖歌学園で伝統的な授業を受けただけではできないのかもしれない。リズ、気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど。もしカノンに依頼したら——」
リズの目が、見開いた。
「——パルを助けられると思うか?」
「だ、ダメです!」
驚くほどはっきりと、リズは否定した。まるでカノンという人間自体がダメだとでも言うように。
「どうして?」
「い、いえ。その、確かに、カノンさんの音術は独特です。どこで習ったのか、学園の教本で書かれているだけのそれとは少し違う気がします」
「だったら」
「き、危険です!」
いっそう、リズの言葉が強くなった。
それが本当に、不思議だ。
しかし、リズも自分の言葉が強くなったことに気がついたのだろう。
口元を抑え、そして改めて抑えめに話し始めた。
「カノンさんは、その……す、素性がわからないですから。その、意識のない第二皇子に近づけるなど、本当に……何が起こるか——」
「それは、カノンに『痴れ者の血』が流れているからか?」
「……え?」
こうやって、他人にカノンへの不信感を植え付けようとしているのだろうか。リズとはそんな少女だったということか。
僕は、本当にリズのことを知らなかったのだ。
どうせ政治だと、知ろうとしなかったことへの後悔が今になって湧き上がる。
「もういいよ。ちょっと今、君と話したくはないかもしれない」
「いえ、ちょっと待ってください。シャルル様にお伝えしたいことが——」
「——リズ。外してくれ」
思わず大きくなった僕の声に、リズは泣きそうな表情を浮かべた。
「……はい」
歯を食いしばるようにして、彼女は僕から顔を背けた。
◆ ◆ ◆
僕とリズの関係の不和に呼応するかのように、国の情勢も動きつつあった。
ノーザウンの国家音術師たちの成果が、より顕著に積み上がりつつあったのだ。隣国との交易で有利な条件を引き出す。政略結婚も優位に進める。
しまいには国土の無償譲渡さえ引き出してしまった。
戦争不要の帝国、ノーザウン。
その色が一層強くなり、それによって武器商会を抱えるブラックヴィオラの国内でのプレゼンスが低下していた。
政治的にリズ・ブラックヴィオラとの婚姻の必要性が弱まっていた。
僕は以前にも増してカノンと時間を費やした。
フランソワと3人で食事をとって以来、カノンは僕に対してもよく笑うようになった。仲間を誘い休日に馬乗りに出かけることもあれば、時折授業の時間を抜け出して街へ出向くこともあった。
僕が渡す何気ない贈り物を、カノンはいたく喜んでくれた。
その頃には、僕は自分の役割がわかっていた。
僕はカノンが正しく評価されるための媒介なのだ。
カノンはいくら音術の技術があろうとも、平民なので偏見混じりの評価しか受けない。であれば、彼女は平民から抜け出す必要がある。
簡単なことだ。
カノンを妻として迎えればいい。
そうすれば彼女はメルバーティ家の皇妃である。
ある舞踏会の日。
プレゼントしたドレスに身を包むカノンが僕の側にいた。
僕はこの日、すべて終わらせるつもりでいた。
「これから起こることには、少し驚くかもしれないが、どうか落ち着いて見ていて欲しい」
カノンはなんだかわからないようだったが、こくりと頷いた。
僕たちは大階段から降りてゆき、すでにホールの真ん中にいる彼女の元へと向かった。
燃えるようなドレスを着た美しい少女、リズ。
彼女のすぐ近くまで向かうと、取り巻きの少女たちがすぐさま離れていった。
僕たちの間に、世間話は不要だ。
「リズ、残念だ……」
「……ざんねん?」
僕は長年、君と結ばれるものだと思っていた。
美しく優秀な、この少女と結婚できることは幸せだと思うことさえあった。
何よりも。
「ああ、君だけが希望だった。君こそがパルの呪いを解いてくれるものだと」
彼女はパルの除術を、諦めてしまった。
それなのに。
「ええ、確かに音術でパルくんを救うには至れませんでした。しかし、別の方法であれば——」
この後に及んで、この女は何を言っている?
自分でパルの呪いを解くことはできないと認めたくせに、抜け抜けと偽物の希望でも作り出そうというのだろうか。
その浅はかな性根に、僕は燃えるような怒りが沸いた。
「——もういい。君の法螺話にはうんざりなんだ。いい加減にしてくれ」
「……ほらばなし?」
なぜ君は、僕の言っていることがわからないという表情ができるんだ?
そもそも嘘つきは、君なのに。
「君はあることないこと学園で言いふらすことによって、カノンも傷つけているそうじゃないか」
「……そんなことはしていません。それに、仮に私がカノンさんを貶めるような噂を流たとしても、パルくんを救える可能性があることとは別の話で——」
「黙れ。おまえの話はもう聞きたくない」
いくらでも理由を語ることはできる。
しかし、本当の理由はそれしかなかったのかもしれない。
僕はもう、彼女の言葉を聞きたくはないのだ。
「リズ・ブラックヴィオラ。僕は君との婚約を破棄する」
これにてリズとの関係は終わるだろう。
しかし、それだけ。
僕は側のカノンに視線を移す。彼女は少し笑っているだろうか。
これから彼女と関係を作っていくことこそが、きっと僕の役割なのだ。
最後までお読みくださりありがとうございます。
この作品は別途連載中の『婚約破棄って正気ですか? わたし悪役聖女なんですけど ——悪役令嬢に転生した元聖女は滅亡予定の隣国を立て直します——』の一部分になります。
こちらでは婚約破棄されてしまうリズが主人公となり、婚約破棄から始まる冒険を繰り広げておりますので、ぜひ下のリンクよりお進みください!
※この短編はep.23 ~ ep.28にあたります