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ニールの目ざめ (65) 真実 その2

ニールの得た魔法が何なのか、ついにそれが明かされます。

「そうよ。だってあなたは、砂場の近くで急に頭が痛くなって、その後すぐ、私とドッジに”子供たちを砂場の外へ”って、言ったのよ」


先ほどはドッジに注意をしたマリアも、思わず彼の後に続きました。


ですがメリドルは注意もせずに、ただ黙って聞いています。子供たちのイレギュラー発言ではあるものの、真相を理解する助けになると感じたからでした。


「説明するよ。ボクが何日か前から”変な感じ”に悩まされてたってのは、知ってるだろ? 酷い時には、本当に我慢のならない頭痛になったし……」


ニールがそう言うと、二人とも静かにうなずきます。


「それは、何ていうかな。今考えれば、ラジオのノイズみたいなものだったんだ」


彼は少しずつではあるものの、雄弁に語り出しました。


滑らかに話を進めるニールを見て、メリドルはこのまま続けさせようと判断します。


「ノイズ?」


ラジオを全く聞かないドッジが、首をひねりました。


「あぁ。ザァーっとか、キュイーンって感じのあれ?」


一方で、知識の宝庫であるラジオを、よく利用しているマリアが確認します。


「うん、そんな感じ。それが物凄く酷くなると、頭痛も酷くなる。で、今日砂場に差し掛かった時、それが最高に酷くなったんだ」


親友二人が、数十分前の出来事を頭に思い描きました。


「あぁ……。でもニール、お前はしばらくして”収まった”って、言ったよな」


ドッジがいつになく慎重に質問します。彼も、ここが話の肝だと分かっているようです。


「うん。収まったっていうか……、正確に言えば整理されてきたっていうか、意味をなしてきたっていうか……」


ニールは、自身なさげに言いました。自分の覚えた感覚を、上手く言葉に出来ないようです。


「あ、もしかして」


マリアが、何か思い当たったように言いました。


「ラジオで色んな放送局を選んでいると、最初はザーザー、キュイーン、キュイーンって音ばっかりだけど、調整を続けると、だんだん言葉や音楽が聞こえ始めて、最後には雑音はなくなっちゃう。


そんな感じ?」


マリアが、少し興奮気味にニールへ問い正します。


「うん、そうそう!そんな感じ!」


ニールは、我が意を得たりとばかりに応えました。


「ニール、という事は……」


三人の話を聞いていたメリドルが、ここぞとばかりに口を開きます。


「ラジオのノイズのように、君の頭の中で暴れていた雑音が消えた。そして”他の何か”が、聞こえてきたというわけかい?


そして、その”他の何か”が、君に情報を伝えたと……、つまり、木が倒れる事を”教えてもらった”と」


メリドル慎重をきしながらも、一気に核心へと踏み込みました。他の皆も、固唾を飲みます。


先生たち、友人たち、精霊たち、親しい者たちに見守られながら、


「そうです」


と、ニールが力強く返事をします。


その言葉を聞いたメリドルは、


「それは”誰”が、教えてくれたんだね?」


と、真実の最後の扉を開ける質問をしました。


ニールは、周りを少し見回してから、こう言います。


「公園の主です。あの大きな木の」


音楽室にいる面々に、衝撃が走りました。メリドルだけは、ニールの魔法が予知でないと分かった時から”まさか……”とは思っておりましたが、それでもショックは隠しきれません。


何故ならば、木の声が理解できる魔法なんてそんなもの、百年に一人発現するかどうかの大変希少な魔法だったからです。


「神々の恩賜」の話の中で、ヴォルノースを去る神々が、自分の魔法の一部を切り取って森に住む全ての民に分け与えた、という話を致しました。


魔法の内容は様々で、ちゃちな手品ほどの魔法もあれば、空を飛べるような強力な魔法もあります。ただそれとは別格の魔法も、稀には存在するのです。


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