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ニールの目ざめ (57) 濡れ衣

中年女性の執拗な追及に、ニールたちは困惑します。

声の主は、先ほどの中年女性でした。


「どういう事って、なんですか、”オバサン”」


ニールと俺たちが子供らを救ったって、まだわかんねぇのかよ。


そう思いながら、ドッジが睨みつけるような目つきで、彼女を見上げました。


「なんですかとは、なんですか! 生意気な。あなた方ねぇ、砂場にいた小さな子供たちを連れ出したって事は、木が倒れるって知ってたってわけでしょう?


一体、どういう事なのよ!?」


中年女性は、相変わらず感情的に詰問します。


これには、ドッジとマリアも少し弱りました。


自分たちはニールを信じて行動したまでですが、落ち着いて考えてみれば、中年女性の疑問はもっともです。


マリアとドッジが口ごもるのを見て、中年女性は更に調子づきました。


「ほら、みなさい。正直に白状した方が、あなたたちの身のためよ!」


ニールを止めたものの、ドッジに体当りをされ恥をかいた上に、今まさにニールたちがヒーローになろうとしているのです。それでは、女性の面目は丸つぶれ。彼女は相手を屈服させようと、意地になっているようでした。


「それは……」


信じてもらえないとは思いつつも、場を収めようと、ニールが口を開きかけます。


ところがその時、何かを閃いたマリアが、


「おばさん、大切な事を忘れていませんか?」


と言いながら、彼女はニールを制しました。


「大切な事? なによ?」


中年女性が、少したじろぎます。


「おばさんは、さっき、ニールが最後の子供を救いに行こうとした時、彼の腕を掴んで止めましたよね。


ドッジが体当たりをしたからニールは解放されて、子供を助けに行けましたけど、もしそうでなかったら、あの子は木の下敷きでしたよ。


少しは自分のした事を、考えたらいかがですか?」


彼女の主張は、ニールが何故、木が倒れる事を事前に察知できたのかとは、直接関係がありません。しかし、女性の弱みを直撃したマリアの機転は、図星をつかれた女性を怯ませるのに十分な反撃となりました。


そうだよな。もしこの人があのまま止めていたら、最後の子供は助からなかったかも知れない。


そんな空気が、その場にいた大人たちの間に広がります。


それを察した女性は、


「何、言ってるの? 私が悪いって言うの!?」


と、大いに狼狽しました。


マリアの作戦、大成功です。


「わ、わかったわ。あなたでしょ!? 木を倒したのは!」


切羽詰まった女性は、ニールを指さし叫びました。


「そうよ、そうに決まってるわ。自分で倒したから、倒れる事が分かったのよ」


無茶な言い分とは分かっていますが、女性の方も、メンツを立てようと必死です。


「そ、それは、違います!」


思いもかけない言いがかりに、ニールが慌て声をあげました。


「ちょっと、あなた。それは、幾ら何でもないでしょう。こんな子供に、あんな大木を倒せるわけがない。仮に魔法を使ったって、そんな強力な魔法、聞いた事がないですよ」


その場にいた男性が、たまりかねて割って入ります。


「まぁ。あなたも、この子たちとグルなんですの!?」


中年女性は、新たな援軍に矛先を向けました。


「いや、だから……」


とばっちりを受けた男性が、言いよどみます。


大混乱の兆しが見え始めたその時でした。救いの声が、人々の耳に届きます。


「おーい、皆さん。大丈夫ですかぁ?」


その声は、なんと空から響いてきました。皆が一斉に、首を上げます。彼らの目に映ったのは、大きな翼を羽ばたかせた一人の男性でした。


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